あれからてんやわんやになってしばらく経ち、ようやく膝を突き合わせて守護騎士と話し合う。

「ココアで挨拶、名づけてココ挨拶でした。はじめましてごめんなさい。こめかみが痛い主人公です」
「ごめんな。この子いつもこうでなー、こうしとくから堪忍なぁ。うち、八神はやて。よろしゅうな」

 背後のはやてに現在進行形でぐりぐりされ続けて頭が割れそう。
 シグナムに抑えられているものの、ヴィータはまだ怒り心頭な目でじっと見てくる。

「……その顔止めろ。見苦しい」

 ヴィータが言うには、苦痛に歪む俺の顔は何かと見苦しいらしかった。

「火傷とかせーへんかった? ホンマに大丈夫?」
「大丈夫です。我らはそう軟弱ではありません」
「そう? ならよかった。痛かったら直ぐゆーてな? 火傷は痕が残るから」
「あ……あ、ありがと」

 まっすぐに言われると、ヴィータは何故か戸惑ったように言った。
 そういえば今まで大変だったんじゃなかったっけ。
 闇の書闇の書言われて管理局に追い回されたりしてたような。主にも恵まれなかったとか聞いた
ことあるぞ。あんま正確に覚えてないけど。

「はぁ……にしても、ホンマに来てくれるなんてなぁ……」
「ふふん。そろそろ俺の転生物語を信じる気になったか」
「ついさっきまで冗談か、面白い与太話やと思っとったのに。途端に現実味を帯びてきて困る」
「あの……話が見えてこないのですが……」
「つーかさっきからテメー誰だ」

 シャマルさんとヴィータさんが言うと同時に、四対の疑念の視線がこっちを向いてちょっと怖い。

「俺の名前は玉坂恵人。理不尽な死から奇跡の力で蘇り、時空を超えてやってきた――」
「やってきた?」

 やってきた……。

「――オリ主です」

 これ以外に単語が出てこなかった。
 きっと嘘は言っていないと思う。

「オリシュ? 何だそれは……?」

 犬形態ザッフィーが首を傾げた。

「電脳魔戦紀オリーシュ。消えゆく二次小説たちを救うため、各ジャンルのオリ主が電脳世界を走る!」
「何という混沌。二次創作界の明日はどっちだ」
「む。そういえばカタカナで『オリシュ』って入れると、ちゃんとグーグル先生が直してくれた気が」
「そうなん!? ……わ、ホンマや。人気なんやなぁ、オリ主」
「定番ですものね、オリ主」

 訳が分からなそうな守護騎士たちだった。





 唐突に始まった漫才はそこそこに、今度こそきちんと自己紹介をした。
 背と胸がおっきいのがシグナム、おっとりしてるのがシャマル、さっきから怒ってるのがヴィータで
青い狼がザフィーラ。やった覚えてた。うろ覚えだけどアニメの知識が役に立ったぞ!
 ていうかそういえばザッフィーって、大きくなれるんだよな。こう、「サクリファーイス!」って。
 今の身体って子供サイズだから、そしたら背中に乗れるかも!
 これはすごい、すごいぞザッフィー!

「ねぇねぇザッフィー、今度買い物のとき背中乗せてくれ!」
「却下だ」

 えー。

「主はやて。そろそろ真剣に、その者の素性をお聞かせ下さいませんか」
「え? うーん、何というか……色々知ってる人? って言ったらえーんやろか……」
「ふははは。お前たちの詳細は既に知れておる。何故なら私は全知全能のトリッパーだからだ」
「ですから、そのトリッパーって……」
「えと、えと、そうやなぁ、うぅー……」

 はやてもさすがに、
「実はここってアニメの世界で、現実世界から転生したんです」
とは言えないようで、説明に困っている。
 ならここは俺の出番!
 超絶明快かつ混沌に答えてやるっぜ!

『お風呂がわきました』

 と思ったら、空気を読めない機械音声が聞こえた。

「入ってきたら?」
「ん。そーする……ふわ……何か、眠くなってきたわぁ」
「俺も……くぁぁ」

 何かもう疲れて眠くなったので、もういいや。面倒なことは明日にしましょう。

「さっきまで遊んでたしね。じゃあ俺は後で」
「ならお先に。あ、みんなも入る? 話もできるかも知れへんし」
「あ……お、お供します」
「誕生日おめでと。追加のおっきなプレゼントよかったね。しかも四人」
「うん! 最高の誕生日やった! みんな、これからよろしゅうな!」
「え……あ、ああ……」
「は、はい……」

 戸惑いがちについていく守護騎士の背中を見ながら、ソファで横になるのだった。ぐぅ。



(続く)


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