聖王教会に行って融合騎を見せるとかなんとかということになったのですが、もしかして合体を
見せるんだったらリハーサルした方がいいんじゃね? という感じになる。
「ということで、オリーシュもリイン2との合体を試してみようと思います」
「つ、ついにけーとさんが、目と髪の色を変えるときが来てしまいました!」
「金髪碧眼ならちょっと面白いな。超サイヤ人っぽくて」
「そこはやっぱりカヲル君やろ……常識的に考えて……」
ということで一応リイン2と融合できるらしい俺も試してみることになったのだ。やる前はそん
な感じに割と盛り上がる。
「やってみた結果がこれだよ!」
「まさか白目になるとは思わなかったわ」
「頭も、ぜんぶ白髪になってますね……」
実際にやってみたところ、色素が完璧に抜け落ちて目も当てられない事態に陥った。驚きの白さ!
当然だがこれだと外を出歩くこともできない。あんまりにもあんまりな結果に、そのままこたつ
で不貞寝することにした。
「タイトルは『同居人が厨二病こじらせて寝込んだ』で決まりやな」
「何をしておられますか」
「いやな、久し振りにスレでも立てようかと」
はやてが某巨大掲示板にネタを投下しようとするので、復活してなんとか阻止に走る。
「今ので思い出したが、『【中国料理】シャマルの飯がマズい【中毒料理】』立てようぜ」
「あ、ええなそのスレタイ。この前のヴィータ、顔色まで変えて苦しんどったからなぁ」
「久し振りにつまみ食いしたらアレだ。最近美味くなったからって油断してた」
「ど、どうしてミスがなくならないんでしょうか……そういう時に限って味見を忘れますし……」
普段のシャマル先生のご飯はすごい美味しくなってきたんだけど、警戒しておかないと交通事故
に遭うという恐ろしい仕様になっているのだ。その都度スレを立てて報告したりしているのだが、
シャマル先生の懇願があるのでこの場は引き下がる。夜にでも立てるとしよう。
「リイン2号とユニゾンしたら、チャーハン限定で料理スキル上がったりするかな」
「針の穴に糸を通す速度でしたら、通常のおよそ3倍になると思われます!」
「だったらユニゾンしたとき赤くなればいいのに」
「あっ……な、なるほど! それでしたら、真っ白な状態にしてから染めちゃったりすれば!」
自分の頭がキャンパスになるとは新しいが、出来ることなら回避したいことこの上ない。
「ヴィータちゃん、けーとさんっ。わたし、虹を書いてみたいです!」
この子の発想もなかなかぶっとんでいる気がしなくもない。頼み込んで諦めてもらった。
「つか、そういえばヴォルケンズやはやての融合状態を見たことがない気が」
「あ、それもそうやな。ならちょうどええし、ユニゾン大会とかやってみる?」
「『融合解除』の伏せカードをオープンするがよろしいか」
「見たいのか見たくないのかはっきりしろよ」
ということでユニゾンお披露目になった。みんなカラーリング変わってかっこよかったが、真っ
白な人は出ませんでした。
「それより、リイン2とはぐりんでメタルライダーしよう」
「それだと、戦闘力的にはわたしが足を引っ張る予感が……でも、すごく楽しそうです!」
「名前呼ぶと来るけど、区別つく?」
「つきます! えーと……クリリン、ズタズタ、とうぼうですねっ?」
「惜しい」
ちっこいの一人と三匹で遊んでました。
その日、風呂の順番を待ちつつソファでうとうとしていると、パソコン使用中のシャマル先生が
すっとんきょうな悲鳴を上げた。
「こっ、こ、こっ、こここ、こっ、こっ……!」
「あっ、鶏だ。唐揚げにしよう」
「にっ、に、にわとりじゃないです! そんなことよりこれ、これっ!」
卵とか生ませたかったが諦めて、画面を指差す先を見る。
「…………」
「AltとF4キーに手を伸ばさない! どういうことですか、こんな……ひ、ひどい!」
「同姓同名の人違いじゃね」
「特徴が合致しすぎです!」
履歴出しっぱなしという初歩的なミスにより、一週間前に立ててまだ残っていた「シャマルの飯
がマズい」スレがシャマル先生に見つかってしまった。不覚。
「しかもに、に、26番って……!」
「次で27番目だった。いやはや、よく続いたものだシャマルスレ。シャマル先生すごいね」
褒めることで許してもらおうとするも、逆に涙目でなじられた。
「なるほろ。それでいきなりプリン作りはじめとった訳か」
という訳で謝罪と賠償の意味を込めて、ただいまシャマル先生にプリンを振る舞っているニダ。
「だいたいっ、あむ……最近、羽目を外しすぎですっ……はむ」
珍しくぷんぷん怒った様子のまま、すごい勢いでぱくぱくと食べてます。もうこれで三つめが空
いてしまった。横でヴィータとリインがとても食べたそうにしていたが、手を出すとマズいとわか
っているのでひたすら我慢してる。
「済まんです。しかし、一月前にポテトサラダ食べて身動きできなくなったはやての無念が」
「目隠しして作ってみてって提案したじゃないですかっ」
「何故オレはそんなことをしたのだろう。奇っ怪な」
「都合の悪いことは忘れる程度の能力」を発動してみたものの、すべてを見透かすシャマル先生
の視線を前に即時解除を余儀なくさせられた。素直に謝り続け、スレ立てしないという約束により
なんとか許してもらうことに成功。
「はぁ……お料理、こんなに練習してるのに……うぅ」
しかしシャマル先生も、ごく稀にすさまじい何かを制作してしまう自覚はあるみたい。お説教が
ひと段落してから、ため息まじりにひとりごちている。
「シャマル先生は上達してるよ。味見して気絶することも、最近は少なくなってきたし」
「慰めになってないです……あんな書き込みしておいてぇっ……!」
「……シャマル、頑張って」
まだ根に持っているらしく、恨めしそうに俺を見るシャマル先生だった。見かねた様子のリイン
がよしよしすると、嬉しかったのかぎゅっと抱きしめた。
「あ、明日の朝ごはんは私が作りますからっ。『参った』って言わせるくらいの……!」
「参ったって言ってばたりと倒れるのか」
「違います! も、もう、もう! 反省してるんですかっ、怒りますよ!?」
涙目で怒られてもあんまり怖くないのだが、さすがに気の毒に思ってからかうのはやめました。
翌朝の朝食は美味しゅうございました。
(続く)