ユーノが珍しく時間ができたというので、クロノも頑張って時間を作り、海鳴のハラオウン宅に
男連中が三人で集合することになった。
「……なのはでも呼んで、煮込んでシチューにしようか」
「駄目だよ……ここはあれだよ、フェイトとアルフを、帰ってきたら唐揚げにしよう」
「人の家族に何を……はやてを縛って丸焼きにするのが先だ」
想定外のことだったんだが、ハラオウン家はまだ生活の準備が整っておらず、冷蔵庫の中身は基
本的にすっからかん。
フェイトたちが昼ごはんを買いに行ったのだが、帰りが遅くて食べられない。空腹に苛まれるあ
まり、だんだん頭が回らなくなってきた。
「出前取ろうぜ」
とりあえずこたつに突っ伏しながら提案する。このままだと原作主人公たちのうち、誰かが食べ
られかねない気がするので。
「出前?」
「電話一本で住所を伝えると、美味しいものが届くサービス。ピザとかラーメンとか丼ものとか」
ユーノの目に生気が戻ってきた。
「すまない……君たちに、非常に残念なお知らせがある」
しかしクロノは、なにやら深刻そうに言う。とてつもなく嫌な予感がしながらも、俺とユーノは
続きを促して黙って聞く。
「…………じゅ、住所がわからないんだ」
「そこはわかれよ」
「それは知っててよ」
あんまりにもあんまりなオチに、口々に非難する俺たちだった。
「あーあ! どっかに仙豆落ちてねーかな!」
「大声を出すな……腹に響く……」
「…………叫んだら余計腹が減ってきた」
「自業自得だよ……」
そんなことを言うユーノを見て、はっと起死回生のアイデアが頭を過った。
「今、すごくいいこと思い付いた」
「奇遇だな。僕もだ」
「二人してこっち見ないでよ。どうせ変身させて食べるつもりでしょう」
最後の策が看破されてしまい、どうしたものかと途方に暮れる。もうこうなったら、炬燵の足で
も食べるしか。
「あぐあぐあぐ」
「わああああっ! ななな何するんだお前っ!!」
「そ、それアルフの足だよっ、食べちゃだめ!」
いつのまにか、アルフとフェイトが帰ってきていた。手近な炬燵の足をかじりついたつもりが、
アルフの足に標的が変わってしまった。アルフにたくさん蹴られながら、フェイトに一生懸命引き
剥がされる。
「……アルフの耳がとても美味しそうに見えてきた」
「うん……僕は、尻尾をあぶって食べたい……」
「ふ、二人ともどうしたんだい!?」
「たっ、食べちゃだめ、食べちゃダメーっ!」
クロノとユーノを必死に止めるフェイトたちだった。
その後、フェイトたちが仕入れたお昼ごはんを食べはじめ、三人はなんとか事なきを得ました。
「この馬鹿この馬鹿この馬鹿! 何てことするんだっ!」
「まぁまぁ。ちゃんと足も残ったことですし」
「当たり前のことをさも自分の手柄みたいに言うな!」
全員でこたつを囲んでいるのだが、ユーノとクロノはフェイトに感謝+恐縮+面目なさそうにす
るばかり。そして俺はこの通り、アルフに怒られまくっている次第。
「ったく、お前はいつもいつも……」
「銀だこカリカリでうめぇ」
「む、無視して食べるな! そんなのおあずけだ!」
「その銀だこを返さないなら、怒りのあまり全身の穴という穴から血を噴出して死ぬ用意がある」
「明らかに餓死の水準を超えているぞそれは」
とかやりながら、ぺろりんちょ。ごちそうさま。
「ごちそうさま。フェイト、助かったよ」
「ああ、おいしかった……そういえば、何をするか決めていなかった」
「あの……三人ともグロッキーになる前、何をしてたの?」
「ほら、あれだ。ポカリスエットとアクエリアス、どっちが美味いか議論してた」
「クロノ。あたし、すごくどうでもいい気がするんだけど」
「……すまん。その指摘については、弁解の余地が全くない」
要するにせっかく集まったはいいが、またぐだぐだしていただけなのである。特に議題も何もな
いので、あったかい部屋でゆっくり暖まっていただけなのである。
「あ。そういえば、なのはの誕生日が近いね」
と。何かすることを考えていたらしく、ユーノがそんなことを言い出した。
「誕生日と言えば、実は俺もその二日後です」
「あ、そうなんだ。今度何か持ってくるよ。欲しいものある?」
「世界」
「ついに君を次元犯罪者として逮捕する時が来たようだな」
「いや、そこは誠死ねと言って欲しかった」
「とりあえず意味が分かんないんだけど」
仕方がないのでお好きなものをお任せすることにして、それはそれでなのはの誕生日だ。
「ああ。それで、ユーノも時間を取ったのか」
「うん。長めに取ったから、君の誕生日まで大丈夫だね……で、それはともかく、なんだけど」
「ともかく何? 実はユーノも誕生日?」
「ううん、違くて。なのはが、ご両親とお友達……すずかとアリサに、魔法のことを話すんだって」
おやまぁ。
「誕生日に?」
「そうみたい、お誕生会のときに。僕もクロノも、参加することになってるんだ」
「……おお、そういえばさっきメールが来たのはそれかも」
「それは早く返事打とうよ」
「餓死直前で指も動かしたくなかったんです」
言いながらメールを確認するとなのはからで、結構長い文章で予想通りの内容が書かれていた。
「何だって?」
「当たりでした。お誕生会のお誘いと、あと俺のことを聞かれたらどうするかって」
「どうするつもりだ?」
「はやてと相談する。はぐりんたちとか書の絡みは話すかもしれんけど。いい?」
「君たちに任せるよ。信用が置けるなら話して構わない」
とりあえずクロノに相談してみるも、答えはそんな感じでした。信用してくれているんだなぁと
思いました。帰ってからゆっくり決めることにしよう。
「丸投げクロノ」
「うるさいな」
「丸禿げクロノ」
「誰が丸はげだ」
話しているうちに、だんだんのどが渇いてくる俺だった。
「フェイト! フェイト、お茶どこ!」
「あ……あう、ごめん。お茶はなくて……お水なら、買ってあるけど」
「ぬぅ。仕方ない……取りに行くか」
「ちょ……それ僕の足だよ、踏んでる!」
「く、クロノ、それ私の手だよっ!」
「ユーノっ! あたしの尻尾踏むなっ!」
「み、みんな、おちついて……」
ぎゃあぎゃあうるさいハラオウン家のこたつ周辺でした。
(続く)
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リンディさんは外出中。