「今回の一件で、君のコアの使い方を思い付いたよ」

 コア窃盗事件の詳細を口頭と書面で教えてくれたクロノは、謝罪を述べた後でそう口にした。

「事件の容疑者に持たせておけば、簡単に白黒の判定がつく」
「ただの嘘発見器ですか」

 期待して耳を傾けていたのに、案外しょぼい使い方だったのでがっくりする。

「実際大変なんだ。今回の件で、加工を検証する研究者が相次いでリタイアしてしまって」
「なるほど……とにかくお疲れ。なんかその、悪い。知らんところで苦労かけて」
「あ、いや、そんなつもりじゃ。研究したいと言ったのはこちらなんだ」

 こんなときこそスーパードクターSの出番を期待したいのだが。などと密かに考えつつ、かりか
りかりとペンを動かす。

「明日か……」
「明日ですなぁ」
「あの、3枚目……採点、どうだった?」

 何に書き込んでいるかというと、フェイトの解いた問題の答え合わせである。試験を翌日に控え
て、苦手意識のある国語を最後に確認することになったのだ。ちょうどコア窃盗事件の顛末も伝え
たいとクロノが言うので、今回は単独でクロノたちを訪問した次第。

「……おー。いいんじゃなかろうか」
「ほっ、ほんとう?」
「イケるイケる。算数できるから、国語はここまで解ければ上々。漢字よく頑張ったね」
「日本語は複雑みたいだからな。仮名が二つに漢字もあるのか」
「ただ、言葉づかいに違和感がある。難しい言葉もいいけど、迷ったら簡単な方でいいかも」
「あ、うん。わかった、気をつけるっ」

 しかし大まかに見て、心配は要らなさそうである。算数がえらいできる子ということもあって、
多少のミスは全部カバーできると思うし。

「あの……今日まで、ありがとう」
「今日までお疲れ。本番はとにかくリラックスして……何ぞ?」

 アドバイスをしてあげていると、クロノが不審物を見る目で俺を見るのに気付いた。

「君にしては大人しいと思って」
「最初からクライマックスで行くと、赤いわんこに後でかじられる可能性があるので」
「あ、アルフはそんなことしないよっ」

 自分の使い魔を信用しきっているフェイトだった。

「かじらないよ。お前不味そうだし」
「たしかに煮ても焼いても不味そうだ」

 しかしアルフもクロノも失礼でならない。

「フェイトはこうなっちゃいかんでござるよ」
「フェイト、こいつには気を付けなよ。ザフィーラから、色々聞いてるんだから」
「美談?」
「悪名だっ!」

 俺の名は悪い意味で知れ渡っているようだった。

「俺の名を言ってみろ」
「オリーシュでしょ」
「もう一度だけチャンスをやろう!」
「えっ……オリーシュじゃないの?」
「俺は嘘が大っ嫌ぇなんだ!」
「自己矛盾してるぞ」

 クロノに看破され、アルフに紛らわしいこと言うんじゃないと怒られた。微妙に屈辱だったけど、
笑ってるフェイトがリラックスしてるみたいなので良しとしよう。




 そして翌日の夕方、クロノとアルフの失礼な言動の腹いせに、なのはの髪を両手でつかんで思う
存分ぐしぐしする。

「きっ、昨日のはなしなんでしょお!?」
「というのはもうほとんど口実に過ぎず、たまにはイメチェンさせてみたかったぐしぐしぐし」
「や、やーっ! フェイトちゃん、はやてちゃあん!」

 試験が終わって高町家に泊まりがけで遊びに来ていたフェイトと、隣で傍観を決め込むはやてに
助けを求めるなのはだった。しかしそのフェイトは、どうしていいものかと手をこまねくばかり。
はやては最初から手出しするつもりもないみたいだし。

「うぅー……ぐしゃぐしゃだよぉ……」
「後のメドーサボールである。似合ってるね」
「にょろにょろ蛇さんだよ……なおしてくる」
「あかん! 鏡見てしもーたら、なのはちゃんが石像に」
「ならないよう!」

 はやてに一喝してから、なのはは髪をとかしになのは部屋から出る。

「似合ってたのに」
「フェイトちゃんもする?」
「いっ、いいよっ、大丈夫っ」

 フェイトは遠慮がちな性格のようだ。

「フェイトちゃんをいじめちゃ駄目ーっ!」

 そしてすごい早さで戻ってきたなのはだが、状況を掴み損ねていると言わざるを得ない。

「俺にいじめられるのが楽しいドMのくせに」
「な、なのは……そうなの?」

 フェイトに事実を教えてあげただけなのに、なのはは何故か真っ赤っ赤になって、ぶったたく用
の枕持って追いかけ回してきた。理由がよくわからない。

「ご覧の通り、いじめて喜ぶドSでした」
「な、なのは……そうだったんだ……」

 フェイトはどこか納得したようになった。なのはははやてに泣きついた。

「というように、学校入ったらこんな、楽しい生活が待ってます。お楽しみにね」
「楽しくないよ! ぜんっぜん楽しくないよ!」

 なのはは机をばしばし叩いて訴えた。

「試験お疲れさま。出来もよかったようで安心です」
「フェイトちゃん、お疲れ! 今日は夜中まで遊ぼうな!」
「あ、遊ぶだけ遊んだくせに、用が済んだら無視するの禁止!」

 やたらうるさいなのはだった。

「……」
「フェイトちゃん、楽しいの?」
「はやて……うん、楽しい!」

 フェイトが楽しそうに微笑んでいるのに、隣のはやてだけが気付いていた。



(続く)

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昼間の更新はお昼のおやつ感覚でお楽しみください。
夜は夜食な感じで。

Q.ツインテのままぐしぐしできるの?
A.ちゃんとほどいてあります。

なんとまぁなのはの書きやすいこと。このキャラに頼りすぎちゃ駄目だな。
でもStS編ではスバルと二人並べて遊んでみたいです。二人ともなんかわんこっぽいので。



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