キラキラのリースやら何やらで、すっかりパーティーモードになったリビングで。
「……こーへん」
フリフリの付いた三角帽子を被ったはやては目に半分涙を溜めて、こちらを見て訴えた。
「……こーへん」
「と言って恨みがましい視線を向けるはやてであった。へへん」
はやてはぐにぐにとほっぺたを引っ張ってきた。
「……守護騎士さんたち、もうすぐ来るんとちゃうの」
「近いうちに来るふぁずはんですが」
「飾り付けまでしてもう準備万端やのに」
「部屋がクリスマスみふぁい」
人の来ないパーティーほど寂しいものはないよね。
「一週間、こうしてずっと待っとるのに!」
「お陰で最近の夕食はとても豪華でしたね。うまうま」
「……今日は夕食抜き」
と宣告するはやてに、絶望せざるを得ない。
はやてに家族が出来るのは間違いないはずなのだが、如何せん知識不足のせいでそのタイミング
がまるで分かりゃしない。
ものすごく期待していたはやては、ここ一週間ほどずっとお預けを食らった状態だった。目前に
餌を置いての「待て」ほど質の悪いものはない。
「ほら。ほら。あーんして。チャーハンですよー。ソースとか入ってないですよー」
という訳で、昼食の時間ははやてのご機嫌を取る。
超久しぶりの手作りチャーハン。こぼさず作った自信作だ。
「むー……むー」
「や。ホント、済まない。中途半端な知識なもので。ほら、口開けて。あーん。あーん」
「……むぁー」
不機嫌そうにむーむー言いながら口を開けるものだから、何やら人間らしからぬ声が出ている。
本来なら笑ってからかう所であるが、夕食が懸かっているので今回は自重する次第。
「ごめんね。詳しい日付とか覚えとけばよかった」
「むぐむぐ……ホンマや。毎日毎日、楽しみにしとんのに」
「夕食、ものごっつ張り切ってたよね。ドッグフードも買いに行ったし」
マグロとか使った美味しいやつ。犬まっしぐら的なの。
「……一応、誕生日まで待っとく」
「誕生日? いつ?」
「来週や。言ってへんかった?」
初耳です。
「漫画とかだったらその日っぽいけどね。『十四歳の誕生日、僕の中でもう一人の僕が』とか」
「し、鎮まれっ、静まるんや……私の右腕」
「くっ! 我ら邪気眼持ちは、人とはやはり相容れぬのか……!」
「共鳴が……アカン、暴走する! 離れろ! 離れるんや!」
「……はぁ」
「……はぁ」
やっているうちにアホくさくなってきて、二人してため息を吐く。
「チャーハン美味い?」
「ん。美味しいよ」
「そいつは良かった。名残惜しいけどお焦げあげる」
「ありがと。ん、ぱりぱりやな」
「はやてもついに俺の料理の虜になったか」
「虜になっちゃうぅぅぅぅ!」
「こいつきめぇwwwwww」
しこたま殴られた。
しかし機嫌は少し直ったようで、ほっぺをうにうに引っ張ることも恨めしそうな目を向けること
もなくなってきたので一安心である。
と思ってずきずきと痛む頭を押さえていたのだが、当のはやては何やら思案顔。
どうしたんだろうと考えていると、ふとこんなことを言い出した。
「そういえば。その、例の、なのはちゃん」
「ん?」
意外にも守護騎士の件ではなかった。なんだろう。
「今何とかしたら、悪魔チックな将来送らんでええんとちゃう?」
「……おぉ」
確かに。
「店員さんの中に高町なのはさんはいらっしゃいますかー!!」
「ひぇ!? な、なのはは私ですけど……」
「アカンよ! 喧嘩の時は絶対に手加減せなアカン! 相手は優しく、優しく説得するんや!」
「えっ、ちょ、え、え!?」
唐突にやってきた客に困惑するなのはだった。