とうとうやってきたパーティー当日。学校の帰りに最後の買い物を済ませてから、翠屋に向かう。
 パーティーがはじまる前に、なのはと仲直りしておきたいと思ったのだ。今日この時間は店の手伝
いをしてると聞いた。もちろんもう怒ってない可能性もあるけれど、昨日はさすがにやりすぎた気が
しなくもない。
 ちなみに会の予定は八神家→翠屋→八神家ということになっているから、まだ謝る機会はあるんだ
けど。

「あ、けーとくんっ」

 店に入るとなのはは、嬉しそうにとてとて駆け寄ってきた。ちょっと希望が見えてくる。

「あっ……」

 しかし次の瞬間、なのはの表情ははっとしたようなものになる。
 そしてふいっと顔を背けると、つんとした横顔を見せて奥に引っ込んでしまった。やっぱりまだ怒
ってるみたいだ。ついさっきの反応だと大丈夫そうだったんだけどなぁ。

「これはもう、ハラキリして許しを乞うしか! こいつで一気にズブリズブリと!」
「お前それ手品のナイフだろ。刃が柄の中に引っ込むやつ」

 切腹を高らかに叫んで誘いだそうとしたのだが、先に店に来ていたヴィータにあっさりネタばらし
されて不発に終わった。空気読んでくれよ。

「なのは、なのは。昨日は悪かった」

 桃子さんに挨拶してから、店の奥へ足を踏み入れる。謝りながら室内に入ると、なのはがひょこっ
と顔だけ出てきた。

「……反省してる?」
「してる。超してる。罰としてあの後あのDVD観て、死ぬレベルの恐怖におののいた」

 だからすまん許してと言うと、なのはの表情がわずかに緩んだ。

「ん? お前ホームアローン観て爆笑してたよな。クリスマスつながりで」

 と思ったらヴィータがいらんことをいうものだから、けーとくんのばかばかばか等と言い残して奥
の方に行ってしまった。

「余計なことを言うのはこの口か」
「ふるへー。事実ふぁほ」

 ヴィータとしばらく互いの口を引っ張り合っていたのだが、空しくなったのでもう外に出る。

「今までなのはからはあんま怒られてないからなぁ。勝手がわからん……」
「パーティー来たとき謝ればいいだろ。ってか、もうクロノとか来てるみたいだぞ」
「グレアムのおっちゃんは飛行機でちょい遅刻らしいね。ぬこたちも久しぶりなのだが」

 しかしせっかくのパーティーも、しこりが残ったままだと何だかなぁ。

「怒らせた経験者として何か一言」
「んなこともあったな。素直に謝ったら許してくれたけど」
「よっしゃ楽勝。素直とか正直とか俺の十八番」
「ちょっと三分前の自分殴ってこい」

 ぺしぺし叩かれた。

「ふと気が付けば口から出任せ言ってるときってあるじゃん」
「ねーよ」

 ばしんばしん蹴られた。




 家に戻ると、お茶とお茶菓子でくつろいでいるハラオウン一家の姿が。

「本当に家族でいらっしゃいましたか。お仕事どうしたんですか」
「昨日と一昨日で捌ききったよ……まだ目がチカチカしてるんだ」
「おかえりなさい。お邪魔してますね」
「いえいえどうも」

 それでいてなお元気そうなリンディさんの様子に戦慄していると、苦そうな顔をして頑張ってお茶
を飲んでるフェイトを見つける。

「紅茶かコーヒーに替えようか?」
「あ……その、えと」
「日本の飲み物だから、慣れたいんですって。ちょっと薄めに淹れたんですけど」

 シャマル先生の言葉にフェイトが頷く。なるほどーと思いつつ、俺もシャマル先生が持ってきてく
れたお茶をすする。

「パーティーまではまだちょっと早いかな」
「なのはは?」
「後から。ケーキはその時……ちゃんと甘いの頼みましたから。そんな目で見ないでください」

 甘いのにしたよね? したよね? という目でリンディさんが見つめてきていた。ちゃんとやりま
したよと言うと、安心と期待が混ざったような表情になる。

「でもこいつ、なのはに怒られてさ。まだ許してもらえねーんだって」
「え……あ。昨日の、映画の……?」
「そうそう。謝りに行ったはずなんだけど、どこで何を間違えたのか」
「どうせまた余計なことでもゆーたんやろ」
「うるせぇはやて。スポンジでも食ってろ」

 はやてが湯気の上がったお玉をニコニコしながら持ってきた。火傷の未来が迫っている気がする
ので、ジャンピング土下座で謝罪。

「だっ、駄目だよ、仲直りしなくちゃ……」
「いやそうなんだけど、どうも上手くいかなくてなぁ。プレゼント増やそうか」
「今からか? 無理な気がするのだが」
「通信でミュウあげたら手っ取り早くね? あと確実に喜ぶ気がするんだけど」
「くっ、くれ! こっちにくれ!」
「わっ、わたし! わたしも欲しいですっ!」

 約二名が面倒なことになりそうなので、ポケモン関連はやめておこう。

「じゃあちょっと早いけど、お菓子でも食べますか。クッキーとかありますんで」
「いや。その前に、君には……」
「クロノ、それは後にしましょう。せっかくのパーティーですもの」

 何か言いたそうなクロノだったが、リンディさんがそれを止める。

「はっ。まさか! コア無しでも使えるデバイスをプレゼントしてもらえるのかも!」
「安心しろ。それはあり得ないから」
「むしろそんなのもらったら即刻叩き壊すし」

 からから笑うヴィータのクッキーだけ、裏にタバスコかけてやろうと誓う。

「〜〜〜〜〜〜っ!」

 実際やってみるとこれがよく効いたみたいだ。涙目のヴィータが襲いかかってきて、再びほっぺ
たをぐいぐい引っ張る俺たちだった。



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