今日もぽけーっと過ごしていると、ある瞬間とんでもないこと思いついた。ミッドの最先端技術
を結集すれば、もしかしたらGPチップ搭載のミニ四駆作れんじゃなかろうか!

「空気の刃やら空気砲やらが質量兵器扱いになるだろ」

 喜び勇んで早速組み立てていたところに、後ろからひょっこりヴィータが現れて水を差す。

「……やはり合法ロリの心には、一片の夢さえ見当たらない」
「あたしはいつも夢一杯だぞ。それはともかく、ごうほうろりって何だ」
「外見と年齢とが一致しない、空想上の生物です」
「……まぁ、見た目よか長生きしてるのは自覚してっけど……」

 ヴィータは微妙そうな顔をしてから、そのままなにやら考え込んでしまった。意外だったけど、
もしかして気にしていたのだろうか?

「と、取り消すわ。いやいやいやその、なな長生きそのものはいいものであってですね」
「ん? いや、それはどーでも。じゃなくてお前も、外見と中身の年齢ズレてるなって思ってさ」
「……おぉ」

 俺も合法ロリの一員だったのか。
 いや男だから、むしろ合法ショタか。

「これは流行る」
「どうでもいい」

 同感です。

「それよりだ。……その調子だとお前、あたしと卓球しに行く約束、どうせ忘れてんだろ」

 ヴィータは作りかけのミニ四駆を指差して、なんだか呆れたような拗ねたような顔をする。

「あれは本気だったのですか」

 いや忘れた訳ではないのだが、この人は基本的に身体能力が人間のそれではないので、結論から
言うとドライブとかが頭おかしいレベルと言って差し支えない。

「大半カットしてたじゃんか。正直ショックだったんだぞ?」
「ひぃひぃ言ってたかんねあの時。しかも接戦とはいえ負けたでしょう俺」
「いいから付き合え」
「はい」

 約束は約束なので作りかけを置いて、とりあえず近くの体育館へ。

「へへっ。じゃあはじめるからな。準備はいいよな?」
「あと3日待ってくれたら、俺のシェイクハンドが必殺技『マックシェイクS』に進化するのに」
「……飲みたくなってきた。後で買いにいこーぜ」
「ヴィータはいつも唐突だ」
「悪かったなオラぁっ!」

 唐突にサーブを打つのは止めてください。あと、ガッツポーズすんな。「サー!」じゃねえ。

「あまり私を怒らせない方がいい」
「そういえば、お前が怒ってるのって見ねーな。記憶にもないし」
「そんな怒りっぼい生活してないだろ。俺もヴィータも」
「それもそうだオラぁ!」
「なんの」

 今度は対応した。ひいこら言いながら拾い続け、最終的にはヴィータのミスで1:1に。

「オフサイドだ」

 何言ってんのこの人。

「そういうヴィータこそ昔はどういう生活を……あ。そういや、以前は大変だったんだな。悪い」
「別に。大変じゃない人生なんてどこにもねーだろ」
「何いまのかっこいい」
「そうだろ。褒めちぎれ」
「何このイケメン」
「メンズかよ」

 ぱかんぱかん打ちあう。それだけのスポーツなのに、どうしてこんなに楽しいんだろう。

「でも疲れた」
「疲れるのも人生だ。でもってこの後、冷たいもん飲みに行くのも人生」
「いいな人生。人生いいな」
「ほら立て。言っとくけど、走ってくのも人生だかんな」
「くたばれ人生」

 ばたりと倒れた俺を起こし、背中をぐいぐい押してきた。

「人生とは……無情…………破顔拳」
「座んな。ほら、行くぞっ」

 ヴィータは楽しそうに俺の手を引いて、にかっと笑った。





「おなかいたい……」
「一気に飲むからだ馬鹿」
「う、うるっさい! 勝負なのにひとりだけゆっくり飲みやがって!」
「ばーかばーか」

 超追いかけられた。



(続かない)

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気づいたら書いてたけど作中と季節が合わないので番外。
暑中見舞申し上げます



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