【視点チェンジ実験】



 学校から部屋に帰って来てみると、なんだか窓の辺りに不自然な影が差しているのに気付いた。
 なんだろう、と思って見に行ってみる。カーテンをめくってよく見てみると、巨大なてるてる坊主だった。頭がバレーボールなんていうレベルじゃなく、身体も自分たちと同じ背丈くらいある。

「……って、これの中身わたしのぬいぐるみだ! だっ、誰なの、こんなことするのはっ」
「そのてるてる坊主はわしが育てた」

 ベッドの下から人がでてきた!
 ……と思ったら、予想通りけーとくんだった。毎回毎回思うんだけど、どうしてこの人は普通に登場しようとしないんだろう。

「けーとくんが作ったぬいぐるみじゃないでしょう?」
「確かに俺の作ではないが、そこにおわしたルイスくんから、たまには窓際で吊られてみたいという声が聞こえたのです。よってわしがプロデュース」
「いまの一言、いったいいくつ突っ込みどころがあるんだろう?」
「追いつかないから突っ込むな。以前から思ってはいたが、なのははまだまだ速さが足りん」
「ど、どーでもいいからっ!、これ、下ろすの手伝ってっ。けっこう重い……え? ぬいぐるみだけなの、これ?」
「中に枕とかいろいろ詰めたなそういえば」

 悪質ないたずらにもほどがあるので、とりあえずけーとくんのほっぺをぐにーと引っ張る。

「なぜ引っ張るのですか。なぜ引っ張られているのですか」
「自分の胸に手を当てて聞いてみるべきだと思うよ」
「手で声が聞けるわけないじゃんばーかばーか」

 ほっぺは堪えないみたいだ。引っ張る対象を耳に切りかえちゃえ。

「冗談はさておき。遊びに来たので、手を離してほしいのです。ルイスくんを下させてほしいのです。ルイスたんの桃髪ブロンドをくんかくんかしたいのです」
「そんな名前じゃないよ……っていうか、けーとくんがコピペに染まってる!」
「今のでなのはがルイズコピペを見たことあるのが確定したのですね。わかります」

 さ、最初はけーとくんが見せに来たはずなんだけど……このひと、絶対違うって言うのが目に見えてる……!

「け、けーとくんは都合の悪いことをすぐ忘れるくせをどうにかした方がいいと思います! どうにかするまで離しません!」
「ああなのはが俺の耳を引きちぎろうとする! これはもうマジシャンではなく、グラップラーなのは幼年期がはじまっていたのか!」
「こ、こういうときだけ撤回しないでよ! いつもへなちょこって言うくせにぃ!」
「それはすまなかった。そういえばなんだが、この部屋ってバキないよね」
「ここが女の子の部屋だってそろそろ認識しようよ……あ、でもはやてちゃんの部屋にはあるよね」
「俺にもそろそろわかり始めたが、あれは異常だ」
「けーとくん、鏡あっちだよ?」

 割と会心の切り返し。と思ったら、逆にほっぺたをつかまれる。部屋の真ん中でけーとくんと私が、お互いほっぺと耳たぶを掴みあっているという、よくわからない構図になった。

「ひゃ、ひゃうぅ……ひゃふー……?」

 ぜんぜん痛くないのはいいけれど、変な声が出てしまって思わず赤面する。

「ひゃふー星人が赤くなった。こりん星が千葉県だから…新潟辺りか?」
「……ひゃふー星は、そんなところにありません」
「地球上どころか、どの銀河を探しても存在しないと思われます」
「あ、遊ぶなら最後まで付き合ってよばかー!」

 そんな感じに、今日もまた楽しく振り回されました。海鳴は今日も平和でした。



(続かない)

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寝る前に書き始めたら一本書けてしまった…!
実験完了。案外いけるもんですね。



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