「布団と結婚しますた。今日は嫁と夜までハイパーイチャイチャタイム」
「残念やったな。布団は私の夫や」

 朝はささやかに抵抗するも、はやてが寝取りを画策してきて困る。

「寝取られ属性はない。何言ってんだ布団は俺の嫁」
「バカヤロウ布団は今私の隣で寝てるんよ」
「こうなったら二人とも布団様の奴隷で、ここに布団ハーレムが完成する」
「布団と合体したい……!」
「ンギモヂイィィィィィィィッ!!」

 アホ言っとらんと朝ごはんや。すみません直ぐ参ります。
 ということで朝食を済ませ、諸々の家事を終わらせて一服。
 翠屋のシュークリームが一個ずつ残っていたので、コーヒーと一緒にいただきます。

「うまうま。今日は服を買いに行くで。帰りにまた翠屋行きたいし」
「はやてがとうとう赤フンに手を染めるようです」
「お宅の話やお宅の」
「残念だけど褌はちょっと……」
「褌から離れなさい」

 呆れられた。



「という訳でデパートやな」
「車椅子って意外と便利だよね。荷物抱えてるだけでいいし」
「押す人が居れば、やけどな。あ、すみません。男の子用の子供服ってどこですか?」

 はやてが捕まえてきた店員さんに連れられて、子供服売り場までたどり着く。

「小さいね」
「小さいな」
「子供服だね」
「子供服やな」

 分かってはいたが、ショックなものはショックだ。

「そう落ち込んどるのを見ると、ホンマに十九かも知れへんと思えてくるわぁ」
「何なんだこの現実。飲酒喫煙解禁を今か今かと心待ちにしていたのに」
「あー。そら……本当やったら、不憫やなぁ」

 心底可哀想に思っているらしく、はやての視線は同情で満ちていた。

「何かメリット無いかね。体が子供に戻っちまった場合って」
「んー。銭湯の女湯とかは……保護者がおらへんし。無理やな」

 寿命は延びるけど、所詮は焼け石に水である。

「時間ができるのが唯一大きいかな。馬鹿でも百年あれば傑作小説が書けるかも!」
「勉強もラクやな。十浪くらいしてるようなもんやし」
「ていうか高校大学受け直しだよこんちくしょう。まだ大学二年だったのに」

 考えてみれば然程メリットがない事実。何てこった。こんなことがあっていいのか。
 とまぁ軽く打ちのめされながら、二人でセール品のカゴを漁っていった。

「下着とズボンと、あと靴下も足らんなー……」
「ブリーフテラナツカシス」
「あ、そういえば、男物の下着は二種類……何やっとんの」
「パンツは被るもの。でも袋に入ってて開かない」

 思い切り叩かれた。

「最近のはやては遠慮がない気がする」
「誰かさんが最初からクライマックスなせいやと思う」
「俺のクライマックスはまだまだこんなもんじゃないぜ!」
「短パンから手を離してとっととシャツ買ってこい」

 はやてのクライマックスはとても怖かった。



 何だかんだで時間がかかって、結局店を出たのは夕方になりました。

「最近思うんだが、こうまで世話になるのはやはり良くない」
「ふむふむ。で?」
「……良くない」

 だからといって対策があるわけでもなく、がっくりと項垂れる。

「元気出し。出世払いで待っとったるから」
「アルバイト解禁まであと五年以上……死ねる。精神的に」
「はっはっは。ほな、翠屋でケーキ食べて帰ろっか。私の奢りで」
「…………」
「ぐうの音も出てこーへん?」
「ぐう」

 そんなことを言いながら、いつものように翠屋のドアを開けるのだった。



「あっ。なのは、ちょっとお願い」

 ん?

「はいっ……いらっしゃいませ、二名さまで宜しいですか?」

 あれ。この子確かアニメの……。





 あるェー……?



(続く)


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