今、フェイトの目の前にはオリーシュがいて、その肩の上にははぐりんたちがいて、風が涼しく
て、草が揺れていて、空は燃えていた。

「俺、逃げた方がいいですか? バインドで捕縛しちゃいますか?」
「えっと、大丈夫……かと。って、どうしてここにっ! 地球に戻ったはずじゃ……」
「正直に話すと、ピクニックしに来た。さる事情により果たせず、今まで動けなかったのだけど」

 訳が分からないという顔をフェイトは作った。まぁ確かに意味不明だわな。

「そういうお主も、何故ここに。オリ主恋しさのあまりか! 確かここは初めて会った場所!」
「え? あ、その……こ、恋しくは……ないです。ここに来たのもその、偶然で」

 フラグって難しいなぁ。

「とりあえず、何か食べる? ぬこたちの昼食作ってたから、余ってるんだけど。おにぎりとか」
「あっ、う、その……す、すみません」

 断られるかもと思ったけど、差し出したおにぎりはわりと素直に受け取ってもらえた。後から聞
いた話だけど、この時は昼から何も食べてなかったのだとか。

「ふふふ、腹が減っているのか。なら食べるがいい。ただし、巻いてある海苔は残すこと」
「そっ……それ、すっごく難しいと思う……」
「昔はよくやったけどなぁ。やらない? きのこの山、チョコだけ取り外したりとか」
「え、と」

 やったことはないようだった。今度フェイトには、何かお菓子を買ってやらねばならんかも。
 ともあれ、おにぎりを食べさせる。朝作ってきたやつなので少し時間経ってるけど、塩加減とか
はぬこ姉妹のお墨付きである。実際ぱくぱく食べてくれて満足だ。はやてが作った方が美味いかは
わからんけど。

「で、ですね。そろそろ、お話しましょうか」
「え……?」

 食べ終わりを見届けて、切り出してみる。まかり間違っても魔王的な意味ではない。はぐりんた
ちが居る今なら肉体的お話も無理ではないのだが、今言っているのはまっとうな意味でのお話であ
る。魔法とか出ない。

「あの……どうして」
「何やら落ち込んでいる気配がしたので」

 と言うと、あからさまに慌てるフェイトである。

「え、えと、えと……なっ、何でもないですっ、うん」

 とか何とか言いながら、手をぶんぶん横に振っている。
 完璧にバレてるの分かってなさそうだ。仕方がないので、カードを切ろう。

「どうせ長身の謎の女性剣士に負けたのを気にしているのでござろう」

 見ていて面白いくらいフェイトが飛び上がった。隠し事は絶対無理そうだなと内心思う。

「どっ、ど、どうして……!」
「や、まぁ。はやてが起きた後も、あの夢の中ではいろいろ知ったので」
「は、はぁ……」

 やっぱり意味不明な顔をするフェイトだった。





「アルフ、君には先に説明しておく。捜索対象についてだ」
「前回逃げてった三人じゃないの?」
「それらに加えて、少年をひとり探すことになった……以前アースラに来た、彼のことだ」
「ん? ……そいつ今、フェイトと会ってるみたいなんだけど」
「……え?」





 さすがにあそこまで言ったので、フェイトもぽつぽつと話してくれた。
 それによれば、全然攻撃が当たらなかったとのこと。そりゃ、はぐメタたちのスピードに慣れて
ればそうなるわな。一緒にいてわかったけどこいつら、リアル瞬間移動のレベルだし。

「と思っていたら、いつの間にかまたペタペタ絡まれているフェイトであったとさ。めでたし」
「めでたくないです! ふぁ……そ、そんなとこ、ひゃぁんっ」

 前回はぐりんたちには女性のデリケートな部分(胸とか太ももとか)を教えておいたのだけど、
逆にまずかったかもわからんね。うなじの辺りとか背中とかを這われて真っ赤になってるし。この
まま開発され尽くしちゃうんじゃなかろうか。

「はっ……はふ……」

 面白いので少し見ていると、首筋から肩に至るまで上気して、トマトみたいな色になって座り込
んでしまった。目が虚ろで、口が半開きになってるし。ちょっとお子さまには見せられないね。

「まっ……毎、回……こんなっ……」
「なつかれてるね。魔物使いの才能があるのかも」

 しかし将来、ないすばでぃになった時どうなるんだろう。今からかなり心配である。男性局員は
かなり喜びそうだけど。

「で、何だっけ。スピード負け? 攻撃当たらないんか」
「……ふぁ……?」
「……もうちょい待とうか」

 今のうちにはぐりんたちを叱りつけておいた。えー、とか遊びたいー、とか目で言ってる気がす
る。それはそれでいいのだけれど。でも手加減してあげようね。
 でもってしばらくすると、ようやくフェイトが復活した。
 さすがに気恥ずかしそうにしている。はぐりんたちにごめんなさいをさせて、話を戻す。

「速さが足りない、とな」
「は、はい。その……全部、当たらなくて」

 しゅんとなってしまうフェイト。多分、当時の状況を思い出しているのだろう。もともと速さに
自信あったっぽいし、そりゃ落ち込みもするだろう。
 ……と、ここで閃いた。これって、チャンスじゃなかろうか。
 最近ヴォルケンたちに、「オリーシュの原作知識はあてにならん」と認識されているのを思い出
したのである。
 ここは汚名返上のまたとない機会!
 俺の手で、立派な脱ぎ魔に育ててやるぜ!

「防御を捨てればいいじゃない」
「防御を……?」
「そう。ジャケットね。つまり、ジャケットに使ってる魔力、全部ブースターに回したら」
「あの……それだと、範囲魔法で一巻の終わりになっちゃいますけど……」

 相手はちょっと手強かった。

「なら、必要な時だけパージすればいい。リミッターみたく……って、まだ使ってないっけ」

 こくこくと頷くフェイト。リミッター云々は第三期だったか。

「それに古来、アーマーパージして負けたヒーローはそんなに居ない。言わば勝ちフラグでもある」
「ほ、本当ですか!?」

 本当は居るかもしれないけど、面白いのでこのままいこう。

「例えば、ダイ大のヒュンケルとか。あれスゴかったなぁ。鎧脱いだまま無双乱舞してたし」

 とか言っていると、フェイトは顔を伏せた。何やら考えているらしい。
 あとちょっと、もう一押しだ!
 もう少しで理想の脱ぎ魔が完成するフラグが立つっぜ!

「フェイトっ、フェイト―っ!」

 と、そこに、空からさし込む黒い影。
 見上げた空には、一直線に飛んでくるわんこの姿が!

「おっ、お前! またうねうねやってたのか! 感覚共有したら大変なことになっただろ!」
「そいつは済まんかった。で、何? そんなに慌てて」
「あっ……そうだっ。フェイトっ、離れてっ! 闇の書の主かもしれないんだよっ、そいつ!」

 何だそりゃ。

「え? ほ、ホントに……って、居ない!?」
「にっ、逃げられた……くそっ! あいつらと同じことばっかしやがってっ!」

 面倒くさそうなので、さっさとキメラの翼で逃げる俺だった。



(続く)

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むしゃくしゃしてやった。反省しようと思う。

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