翌日、朝。再びはぐりんたちのもとを訪れると、すんごい俊敏な動きで嬉しそうに寄ってきた。

「おー、おー。飛んできた。ちゃんと覚えてるし。ああ、可愛いなあ。これで重くさえなければ」
「ちゃんと頭と胴体と腕にひっついてるな」
「防御力がすごいことになってそうです」

 シャマル先生がそう言ったように、はぐりんたちはちゃあんと定位置についていた。頭の上がは
ぐりんで肩から腰がスタスタ、腕のがゆうぼう。結構な筋力が付きそうな素敵な重さです。

「重ひ」
「……ここで待ってた方がいいのではないか? 何かあれば連続べギラゴンで追い払えるだろう」

 子供の身には結構な重量なので悶絶していると、シグナムから魅力的な提案が。
 ちなみに、蒐集の面子は昨日と同じ。
 はやてクッキングの餌食になるザッフィー大丈夫かなと思ってたけど、良く考えると彼の場合は
ドッグフードという逃げ道がありました。それでどうにかなったので、今日も留守番で平気だとの
こと。ごめんね。

「闇の書、あとどんくらいだっけ」
「残り半分を切った。ともすれば、今日で終わるな」
「うーん……重いのでやっぱ待ってる。ごめん」
「わかりました。キングスライム出たら、写真取っておきますから。安心してください」
「ホイミンに会ったら蒐集よろしく。はやてがベホマズン使えるようになるかも知れないので」
「全員全回復とかチートだろ……」

 ということで、ただ今はぐりんたちと戯れながら待機中。ブルーシートとか敷いて、お弁当置い
て待ってます。
 スタスタあたりが興味津津といった様子で見るので、余分に作ってきたぶんをちょっとつまみ食
いさせてるけど。作りすぎたみたいで、シグナムたちが食べてもかなり余るなぁ。

「そういえば、高校時代はずっと早弁してたっけ」

 中身全部チャーハンだったけど。横から見られて引かれてたなぁ。とかそんなどーでもいいこと
を思い出しながら、ゆで卵を箸でつまんであげたり、やたらメタリックな枕と一緒にお昼寝したり。
非常にまったりしてて平和です。

「あの……」
「んー……。ん?」

 とろとろと気持ちよく眠っていて、どのくらい時間がたっただろう。
 頭上で声がした。眠い眼を開くと、黒い仮面越しに誰かが覗き込んでるのが見える。

「……おはようございました!」
「お、おはようございます」
「おやすみなさい!」
「おやす……えっ、ええっ!?」

 現地で見かけない金髪の子供だったけど、まあいいや眠いので寝るぐおー。

「寝ないでくださいっ! そ、その、えと、お聞きしたいことがあるんですっ」
「はあ……はぁぁ。おはようございました」
「あ……おはようございます」
「おやすみなさい!」
「おや……おっ、起きてくださいっ、起きて、お願いっ」

 半泣きになって訴えられたので、仕方ないから起きてあげよう。
 ……何だか、シャマル先生と似た匂いがするなぁ。気のせいかな。

「こんにちは、今日はいい天気ですね。お弁当食べますか? それともはぐりん触りますか?」
「あ、えと……その子、たしか……」
「ん?」
「あっ、いえ! その、可愛いですねっ」

 金髪の子は何かを隠すようにあたふたした。気になるところだけどまあいいか。
 とか思ってると、その子の後ろから黒い髪の男の子が。お連れさんかな。

「こんにちは。少し、お話を聞いてもよろしいでしょうか」
「お面付けたまま失礼。いいですけど、折角なのでお茶でもどうぞ。そっちの子も」
「あ、すみません。申し訳ないです」
「い……いただきます」

 そのままだったらカオスな空間になってたことだろうが、黒い子の登場で場がようやく終息した。
金の子のほうは何か警戒してるみたいだけど。
 とりあえず、水筒に入れてきたあったかいコーヒーと、余分に作ってきたお茶菓子(ヴィータが
せがんだプリン。もちろんホームメイドのンまァーいの)を皆で食す。仮面は下半分が外せる自作品
なので、とりあえず上半分はつけたままにしてもぐもぐと。
 はぐりんたちも最初は警戒してたけど、おいしいお菓子をあげるとすぐニコニコして食べ始めた。
かわいいなぁ。

「おいしいです、こっちのプリンも……差支えなければ、ひとつ頂いても……」
「あ、どうぞ。お土産ですか?」
「はい。母が……砂糖が主食で。たまに補給しないと、禁断症状が」
「うちにも、ソースが主食の子が一人います。冗談だったけど、最近は冗談じゃなく……あれ?」

 ん?

「……失礼ですが、どこかで……会ったことが?」
「そんな気もする。けど……そんなことない、気もする」

 黒い男の子と二人首をひねるけど、どうにも思い出せなくて諦める。

「まぁいいや。思い出せないものは仕方ない。気のせい程度の知人ということで」
「はは……その子たち、種族は?」
「はぐれメタル。物理防御、魔法防御、回避と魔力がパーフェクトなモンスター。魔法も使う」
「魔法……」
「火炎とか、爆発とか。地獄の雷もできるかも。まだちょっとレベル足りないけど」

 さすがにジゴスパークとかマダンテはなぁ。今の段階で使えたらそれはその、あれだ、怖い。

「お二人はどうしてこちらに? 旅行?」
「あ、それは……」
「……まぁ、似たようなものです。仲間が後から来るんですけど、それまで時間があって」
「ですか。俺も割と同じような、同じでないような……あ、いれます。そっちの子も」
「あ、と。すみません、お願いします」
「……お願いします」

 コーヒーを注ぎ直し、皆で飲む。女の子の方はちょっと苦い顔をしてたので、今度はお砂糖を入
れてあげた。

「……二人とも、どっかで見たような気が……うーん」
「え? わ、私も……ですか?」
「まぁいいや、気のせい気のせい。お仲間さんはいつここに? お弁当余ってるけど」
「あ、いえ、そこまでしてもらうわけには」
「まぁまぁ気にせず。余分に作りすぎたけど、こいつらだと食いきれないので」

 自家製プリンがおいしい、気持のよいお昼時。
 何かを忘れてる気がする、うららかなお昼時。



(続く)


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