「その足治んないの?」

 居候が始まってからしばらく経つので、珍しく真面目に聞いてみた。

「白金の針探さないと元に戻らないんや」
「ブランクのことかー!」
「……わー、何や嬉しいわ。まさか通じるなんてなぁ」
「そりゃまぁ。そういえば、ゲームとかするの?」
「する。めっちゃする……あ、よく考えたら対戦できるやん! スマブラやろ! そこの棚ん中!」

 割とマジな話だったのに、どうして遊戯に移行しているのでしょうか。
 と思いつつも遊ぶ。遊んでみると、これがめっちゃ強かったり。

「ぅゎネスっょぃ」
「一人でずっと遊んどったからなー……あ、ハンマーもらい」
「引きが悪すぎて困る。つーかこっち来んな」
「ふっふーん、これで勝ち……あぁぁぁっ! 何でこんなとこに地雷が!?」
「ふふん」

 年長者の知恵を舐めてもらっては困るです。見た目は同年代だけど。

「あー! あー! 緑コウラ投げんなー!」
「ニヤニヤ」
「うぅぅぅううっ!」

 ステージから落下して敗北が決定すると、はやては心底悔しそうに呻きを上げた。

「悔しいね」
「うー! うーうー!」
「はやてがうー語を習得したようです。や、るー語かな?」
「るー☆」
「るー☆」

 最近よく思うんだけど、どうしてこうノリがいいのだろう。

「って! ちゃう! るー語ちゃう! もっかい、もう一回!」

 てな感じで延々と遊び続ける日曜日。



「で、ようやく訪れた本音トークの時間ですが」

 散々遊び遊ばれ、夕方になってようやく落ち着ける時間が取れた。スティックの使いすぎは指に
とって良くないようで、二人とも親指の腹を冷やしながらという情けない光景である。

「んー、足はなかなか治らんなー。原因不明みたい」
「病院とかは? 定期健診ないの?」
「あるよ、火曜日や。でも今は優秀なヘルパーさんが足になってくれるし、気にならんかもなー」
「人それをアッシーと呼ぶ」
「? ヨッシー?」

 意味もちょっと違うけど、それ以前にどうやら死語のようだった。

「そう。ヨッシー。でっていう。乗れるよね? だから」
「あー、なるほどー。足になるもんな」
「ということで車椅子には実は、『でっていす』という隠語があるのです」
「そうなん!? へぇ、初耳やわぁ」

 嘘って意外とばれないね。

「一家に一台でっていす」
「そのうちタマゴとか産みそうやな」
「いかん! その前にこのままだと、はやてがでっていすに喰われる予感! はやくこっち!」
「きゃー!」

 跪いて背中を差し出すと、嬉しそうな悲鳴を上げてはやてがのってきた。

「これで一回刺さっても大丈夫」
「乗り捨てヨッシーやな」
「ヨッシー不憫だよね。いろんなところで捨てられるし。マグマの中に落とされたりとか」
「よく考えたらなー。そしたらタマゴに逆戻りやろ?」
「ぬ、このままだとマリオに捨てられるやも。そうならないようにちゃんと走らないと!」
「わ、わ、こらぁ! もう!」

 と言いつつも、楽しそうなはやてだった。

「足治るといいねー」
「そうやねー」

 そんなことを言いながら、結局ずっと遊んでました。



(続く)


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