休日は休日でいいのだが、今日も今日とてやることがない。やることがない八神家の面子には、
朝から昼はしばしば四方山話に花が咲く。
 具体的に言うと、皿洗い中のシャマル先生以外。食器洗浄機を使えばいいのにといつも言うのだ
が、常に直洗いだ。本人いわく、「何だか楽しい」とのこと。

「もし、この世に俺が二人いたとしたら。どうする?」
「ヴォルケン終了のお知らせ」
「お前が二人もいる光景など、悪夢以外の何ものでもないぞ」
「失礼な。こんなに日々円満な時間を提供しているというのに!」
「お前の功績じゃねーだろ」

 しょぼーん。

「だったら、例のフェイトが二人いたらどう?」
「いずれにせよ脱ぐのだろう」
「勝手にお互いで脱衣合戦とかはじめるんじゃないか?」
「裸身が二つに増えるだけの気がする」
「男性局員が狂喜乱舞やな」

 いつの間にか、彼女についてマイナスのイメージを植え付けていたのかも。
 でもまぁ、いいやね。嘘吐いてないし。

「なら、もし、なのはさんがこの世に二人いたら」
「次元犯罪者終了のお知らせ」
「というよりティアナ終了のお知らせやな」
「ティアナ……? 主、誰のことですか?」
「将来、なのはちゃんの部下になる子や。肉体的な意味で『おはなし』することになるんやて」
「……不憫な」

 同感です。
 とか言ってる間にシャマル先生の皿洗いも終わり、そのまま皆そろって雑談タイム。
 今日の夕食から未来の魔王まで、幅広い話題をカバーする八神家である。

「お昼どうしましょっか」
「スパゲッティ作ろう。歯が飛び出るの……あれ? 魔法だったらトニオ料理できんじゃね?」
「腹から内臓が飛び出ても無事回復するような魔法は、流石にないと思うが」
「開腹するだけに。今俺うまいこと言った」
「誰がうまいこと言えと言った」
「誰がうまいこと」
「だれ うま」

 おれ うま





 で、お昼の後。

「昼ご飯食べた後って基本的に眠いよね」
「ああ。気温もちょうどいいしな」
「目の覚める魔法ってないんやろか」
「寝首を掻く」
「掻いてどないすんの」

 そんな感じに、ソファでだらり。守護騎士の皆も何だかいい気持ちらしく、テレビの前やソファ
の上で各々休んでいる。

「寝首を掻く。と言っても首を切ろうとするのでなく、爪で掻いてやる。すると――」
「すると?」
「――気持よさそうに、ゴロゴロ喉を鳴らすこと請け合いである」
「寝たまんまじゃないですか」
「猫やないの」

 残念ながら、人間は寝首を掻かれても起きない。らしい。

「眠いわぁ。夕飯の買い物せなあかんのにぃ」
「出前でよくね。ピザでも食ってろはやて」
「草でも食ってろ居候」
「や、実際食べてたよ? 家族おらんゆーて、公園で手近な草食べとった」
「……」
「……お前、苦労してんだな」
「というよりも、よく生きてたな……その子供の身で」

 ヴォルケンの皆は複雑そうな視線を向けた。何か居心地が悪くて嫌。

「タンポポおいしかったです」
「苦そうな顔しとったくせに」
「お腹が減ると何でもおいしいんです。世の富豪どもにはそれがわからんのです」

 守護騎士たちは苦笑した。

「ということで、とりあえずはやての寝首を掻いてみる」
「ごろごろ。ごろごろ」
「するとこのとおり、はやてが猫になった。よって猫は猫らしく、今夜の夕飯は猫まんまに決定」
「夕飯が猫まんまになってしもた」
「何故わざわざ猫まんまにするんだ」
「サンマもつくよ?」
「だが断る」

 断られてしまった。今日は出前確定か。

「ねむい」
「ねむいわぁ」
「ねむいです」

 皆して、猫みたく丸まって昼寝した。したはいいのだが、猫なのに雑魚寝とはこれいかに。



(続く)


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