満腹。

「ホントに若返ってやがる! 仕方ない、小学生からやり直し……これ何てバーロー?」

 八分目。

「ていうかここ異世界なのか! の割に前と変わらないな! 日本とまるで同じだっぜ!」

 腹減った。

「良く考えたら、飯がないし宿もない……あれ? 俺かなりピンチじゃね?」

 空腹。

「…………」





 いかん。





 歩けど歩けど見知らぬ街が広がるばかり。
 平穏無事がやって来るはずなのにおかしい。このまま平穏に餓死しろというのか。
 当たり前だが金は無く、仮にレストランを見つけても泥棒扱いされること間違いなし。

「……お腹空いた……」

 考えてる場合じゃない! 早く何か食わないと!

「くさ うま」

 そんなわけで公園の草むらに倒れ伏しつつ、手近な野草をもしゃもしゃと食べていたのだ。

「うまうま。ん?」

 ふと見上げると、車椅子の少女がこちらを見つめていた。

「もしゃもしゃ」
「あ、あの……大丈夫……ですか?」
「心配はご無用。芋虫は草食なのです」
「い、いも……?」
「蛹になるために養分を蓄えている次第。そのうち糸とか吐かなきゃならないし」
「吐けるんですかっ!?」
「そんなわけないです。やーいやーい」

 少女はややあって、はっとした顔になる。からかわれたと分かったのか、ぷっくりと頬っぺたを
膨らませて悔しそうにした。

「フーセンガールガアラワレタ! 針とか刺したら破裂するかな? かな?」
「……ぅぅぅ」
「なきごえ! しかしうまくきまらなかった! ん? うまくきまらないってどんなだ?」

 さらに膨らむ。顔も赤いぞ。

「と、こうしてる間にも腹が腹が。もしゃもしゃ」

 再び草(タンポポ。本来天ぷらで食べたい)を食べ始めると、少女ははっとして、ポッケに手を
入れて出した。

「あの……要ります? チョコ、食べかけですけど……」
「ハッ! いかん! それは吉良に爆弾にされてるぞ! 爆発するッ!」
「ほな、さよなら」

 少女は背を向けた。いかん! 食事の機会が逃げていく!

「あむ」
「ひああぁぁっ!?」

 なので追いすがり、大口開けていただきます。だが間違えて、腕が口に入った。

「しまった。狙いが外れた」
「なっ、何するんですかっ、草食やなかったんかっ!」
「スピアーに進化して、何でも食べるようになった……ん? ハチってチョコ食べれんのかな」
「知りませんっ!」

 怒られつつ、チョコをいただく。ぺろりんちょ。

「ごちそうさまでした。ホント美味しかったです」
「ったくもー……お腹空いてたん? おうちは?」
「ダイワハウス製じゃなかったので、出てった」
「そんな家出の理由、聞いたことないわ……」
「Why Daiwa House?」
「や、ええから」

 止められた。

「いつもそんな調子なん?」
「大体は。ダイタイワハウス」
「はぁ……宿が無いなら、しばらくうち来る? 人居ないし」
「CMでやってたお菓子の家か! 是非行きます!」
「ちゃうわ!」

 車椅子を押して歩くのでした。





「てことは、最初からこうだった訳だな」
「初対面だろうが差別しない俺偉い。えっへん」
「えばるな!」

 シグナムの目の前で、はやてに頬っぺたを引っ張られた。



(続く)

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出会い編。そろそろ30近くなってきた。
もう少しで時期も夏へ。
DVDもまた借り直さねば。

ネタや漫才もマンネリ化せぬよう飽きられないよう、精進します。
感想くれる方々、いつもありがとうです。

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