「はやてがツンデレを練習するようです」
「何を藪から棒に」

 八神はやてアイドル化計画を発動したというのに、本人は至ってやる気がないからどうしようも
ない。

「や、身近に上質なツンデレがいるので。会話録音したけど聞く?」
「いらんけど。録音したのって、噂のアリサちゃん?」
「です。噂の天才さん」
「前人未踏の」
「空前絶後」
「天下無双の」
「針小棒どゎーい」

 とりあえずくるくると回って踊ってみたが、このネタはたぶんあまり分かって貰えないと思う。

「アホがタコ踊りしてやがる」

 でもって、後ろから言ってくるヴィータが失礼すぎて困る。

「あ。天才といえば、才能コンプレックスな子が将来、某白い悪魔に体で説教されてた気がする」
「怖っ! なのはちゃん怖っ! ぐ、具体的には、何されたん?」
「えっと、確か指を一本前に出して、ビームみたいなのを」
「……それって、もしかしてこれか?」

 ヴィータが持ってきた漫画には、なんと白い怪人のビームに胸を貫かれるM字禿王子の姿が!
 これだ! すごいぞ! ちょっと違うけどだいたい合ってる!

「それで怖い視線になって、『少し頭冷やそうか』って」
「戦闘力いくつだよ……ていうか大丈夫だったのかそいつ」

 あなたの部下です、とは言わないでおこう。

「これはマズいやろ……常識的に考えて……」
「そろそろ本格的に『高町なのは補完計画』を企画しようと思うんですが。今のうちに」
「それで人類はなのはちゃんを残して滅亡、世界は赤く染まって『気持ち悪い』。完璧や」
「何言ってるのかわかんねぇ……」
「惜しい。そこは『君が何を言ってるのかわからないよ、はやて!』と応えるべき」

 まだまだ修行が足りないヴィータだった。





「で、最近なんかおかしいと思うんですよ」

 夕食を済ませてテレビを見ている時、ふと思い立って切り出してみた。

「何がだ」
「いや、確か守護騎士って、俺の観たアニ」
「あに?」
「……アニ・ソンスキー式予言法によるとだな」
「……誤魔化すの、下手ですね」

 シャマル先生うるさいです。

「守護騎士って、はやての下でもちゃんと蒐集してた気がするんですよ」
「へ? でも、約束したから……それは無いと思うんやけど」
「だからおかしいのでござる。守護騎士さんたちが約束破るとは思えないし」
「予言自体が誤りではないのか?」
「だといいんだけど」
「というより、自分の存在がそれに反しとるってわかっとる?」
「……おお」

 確かに。

「よく言ってくれた。ご褒美に頭を撫で撫でされる権利をやろう」
「燃やされるからお断りな」
「そんな! 燃えたりしないって! 煙が出るだけで!」
「志村、それ焦げとる」

 バレたか。

「じゃあ、逆に考えるんだ」
「逆? ……そっか! 頭に氷嚢とかドライアイス当てて、燃やすんやなくて冷やしとけば!」
「そうじゃない」
「はやてちゃん、それ死んじゃう……」

 八神家にいると、もしかしたらいつか凍死させられるかもしれません。

「ではなく、逆ナデポ。撫で撫でするのではなく、される側に回るのだ」
「フラグの行方は?」
「ヒロインの逆ナデポにより、男たちの間で骨肉の死闘が演じられる。まさしく殺し愛!」
「……地味に怖いぞ」

 ザッフィーの言う通りだ。血みどろすぎる。

「逆ナデポは不成立、と」
「どうして頭を撫でる行為に拘るのか分からん」
「オリ主のロマンだから。あ、シャマル先生お茶入れるよ?」
「ありがとう」

 と言って、おかわりを入れてやる。
 でもって入れた後、何かを期待するキラキラした眼差しを向けてみた。

「わくわくわくわく」
「…………」

 無言で目を背けられた。

「いつの間にか嫌われていたらしい。ショックのあまり死にそうだ」
「き、嫌いとかそういうことじゃないですよ? でもほら、九歳児がストライクというのは……」

 確かに怖いな。この世が犯罪者でいっぱいだ。

「若いっていいことばかりじゃないね」
「それだけで犯罪のメインターゲットやからなー……世の中、変態さんは沢山やし」
「なら変態に負けぬよう、力つけよう。ということで、おにぎり作るけど食べる?」
「妙なことをしないなら、是非とも」
「じゃあシャマル先生、冷蔵庫から海苔を……やっぱヴィータ、お願い」
「おー。鮭も焼いとくぞー」
「なっ、どっ、どうして!」
「や。前回焼き海苔作ってって言ったとき、ごはんですよを火にかけたの思い出したから」

 しょんぼりしてしまったシャマル先生を、よしよしして慰めるはやてだった。



(続く)

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ケータイ小説(笑)が続きます。
まぁPCでやってるのと変わりませんがw

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