「リインはどうして氷魔法の使い手なのでしょうか……」

 クロノに頼まれて、リイン姉妹とどことも知らない砂漠を歩いていると、姉の傍らでふよふよ飛
んでいるリイン妹がしょんぼりした顔でそんなことを言う。

「お菓子作りや水分補給に重宝するが、不満なのかね」
「不満ではないです! でもでも、燃えたぎる情熱の炎を使ってみたいと思うことがしばしば!」
「そのたぎるような熱情とやらが伝わらないので、分かりやすく表現してください」
「ラロラロラロリィラロローラロラロラロリィラロヒィーイジヤロラルリロロロー!」
「なにこの人すごい」
「褒められました!」
「その歌教えたの俺だった」
「忘れていたんですか……!」

 今日も物忘れが激しい。

「それにですねー。例えばの話、世界が核の炎に包まれるとするじゃないですか」
「とんでもないスケールの例えですね」
「火が使えると、汚物を消毒できます! 荒廃した世紀末を颯爽と駆け抜けるのです!」
「目を覚ませ。今は21世紀初頭だ」
「しかし、困りました。汚物を消毒するには、リインの髪をモヒカンにしなければならないというジレンマが……!」
「ベギラゴン使いのリイン姉がジャギ、妹がモヒカンとな」

 すばらしい姉妹だ。すばらしすぎて家族関係を改めたい。

「お、お姉ちゃん、お姉ちゃん!」
「なに?」
「お姉ちゃんを倒して、私がジャギ様になります!」

 妹はジャギに憧れているようだった。

「『よくできた妹〜!』とか言いなよ」
「……よくできた妹ー」

 そして砂漠の暑さのためか、姉は全面的にやる気がない。

「むむむ。しかし火魔法を使うようになると、新キャラのアギトちゃんの立場が……」
「さっさと遺跡見つけて帰ろう。そろそろ大河ドラマ『爆走姉妹 ハッツ&ゴー』が始まってしまう」
「あからさまに無視されました! しかも何でしょう、その心惹かれるタイトルは!」
「そういやリイン妹とアギトが並んで立つと、なんだか何かのユニットに見えなくもないね」
「ならばユニット名を考えないと……ふ、2人合わせて、2人合わせて……」
「ヤンマーだ」
「あまりの懐かしさに涙が出そうです……!」

 昔を懐かしむリイン妹だった。そういえばCMを見なくなって久しい。

「……?」

 しかし姉の方はよく分からない顔をするばかりだ。ヤンマーディーゼル知らんのか。

「ん? ……んん?」
「どうかしましたか、けーとさんっ」
「腕が破裂しそうなんだ」
「一体どんなスタンド攻撃を!?」
「それはともかく……まぁいいや、よくわからん」

 なんだか気がかりなことがあったような気がするが、どうせ考えてもわからないのでスルーすることにした。
 そのうち解決するでしょう。

「それはいけません! ここはひとつこの氷で、頭を冷やして考えましょう!」
「涼しいね」
「氷ですから!」
「頭も良くなるね」
「なりません、ただの氷ですから!」

 魔法とは不便である。



(続く)

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秀吉「これぞ我が回転大蛇号の得意技、稲妻漂流走法じゃ!」
三成「馬が壁にぶつかっているだけにしか見えませんが」
秀吉「……でゲス!」
三成「言い直さなくていいですから」



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