今日も今日とてリインがガジェットのトゲをぽきぽき折っていると、その事件は起こった。
 見慣れた旧式の機体に混じって、今までにないカラーリングの針山ガジェットが現れたのである。
 しかしながらフォルムは今まで通りだったため、警戒しながらも同様に折りにかかると――

「……上から、トゲが降ってきた」
「あれ……これもしかして、シグナムの真似してるつもりなんじゃね……?」

 突然トゲがスライドして、リインの脳天を狙いに来たのである。
 ちなみに一瞬ヒヤリとしたらしいけど、「見てから昇竜余裕だった」そうです。

「ガジェット×シグナムという異色のカップルが成立したのか……胸が熱くなるな……」
「何やそれ。異色すぎやろ」
「恋心を抱いてしまった機械が使命と感情の間で揺れ動く、感動のラブストーリー。……あれ? 普通に面白そうじゃね?」
「ものは言い様やな」
「最終的には濃厚なベッドシーンがお待ちしております。種族を超えた愛に感動の嵐が!」

 俺の新作が気に入らないらしいシグナムに超威力のデコピンをくらい、あまりの激痛にもんどり
うって転げ回ることしばし。

「取れた。首。首、取れた」
「ついとるついとる」

 死んだかと思ったが大丈夫だった。さすがの俺も首がとれたらたぶん生きてはいられない。

「それにしても、どないしよ。いつかの試合の情報が漏れとるのは」
「データには閲覧制限がかかっているはずですが……いずれにせよ、こちらも何か手を打たねば」
「クロノくんによると、アクセス履歴も見事に消されとったらしいし。内部犯なんやろか?」
「そういや、透明になったり変装したりする……えっと、サマージャンボもいたような気が」
「……ナンバーズ」
「そうそうそれだ」

 という感じに話し合い、とりあえずはリインのデータのセキュリティチェックや、そもそもリイ
ンのデータ提出を控えてみるかという結論に達した。
 「借り暮らされのスカリエッティ作戦」と称し、俺が潜入して情報操作する案も出してみたが、
見つかって改造されたらめんどいのでやめた。俺がドリルで天を突く展開になってもきっと誰も喜
ばない。
 シグナムが捕まったらおっぱいドリルボンバーとかやらされそうだけど。

「久しぶり俺の原作知識が役に立つ時が来たようだな……!」

 とりあえず並行して、そろそろ敵戦力の情報をできるだけ整理してみようという流れになった。
 まず手始めに、はやてによる事情聴取が。これは……俺の情報で六課大幅強化フラグ!

「ほな、まずは敵さんの名前からいってみよか。覚えとる範囲でええよ」
「えっと。一番二番三番が……ウーノ、トランプ、遊☆戯☆王だった」
「さよか。帰ってええよ」

 仕方ないからちゃんと話す。

「クワトロバジーナさん以外うろ覚えだわ……ああそういや、その人透明になれるな」
「最初からそれを言えと。他には?」
「全部で12人くらいいる」
「なるほろ。で?」
「……最終的には全員がスカさんの手で融合し、超数字ロボ・ナンバトラーVになります」
「嘘やろ」
「嘘です」

 とりあえず話せるだけ話しました。
 しかし残念なことに、大した情報はありませんでした。

「馬鹿な。こんなはずは」
「相変わらず役に立たん知識やな……」
「役に立つ立たないですべて判断してはいけないと思います!」
「ま、えーけどな。まったり考えよ。敵が少数って分かっとるだけでも大きいしな」
「ナンバーズは小数でなく、整数です」
「だれうま」

 うだうだ話すのに終始してました。





「どうですか。何か有益な情報を……その様子だと、駄目か」
「雑談してる……」

 聞き取りが終わってはやてとしばらく雑談していると、シグナムとリインが様子を見に来た。
 でもって一瞬で状況を把握したらしく、「やっぱり」と言わんばかりに、ふたり揃ってふぅと息
を吐き出す。

「まぁ予想しとったけどな」
「自分で思っていた以上に記憶が曖昧でした」
「忘れっぽい」
「うっさい。しかしまぁ、いいや。なるようになるさね」
「お前が言うと妙に説得力があるな……」
「なるように生きてきた人ですから」

 とりあえず解散となり、はやてとリインはクロノに相談するとかで出ていった。一息ついていた
ところでシグナムが茶なんかを淹れてくれたので、ずるずるすすって一服する。

「妙なことになったものだ……」

 先のことを考えてか、茶を飲むシグナムは少し眉間にシワを寄せた。

「大丈夫だ。俺が一番妙だぜ」
「確かにそうだな」

 事実は事実なのだが、あっさり肯定されるとなんだか複雑な気持ちになる。

「シグナムなんかスカさんに捕まって、おっぱいからハイパーデスラー砲出せるようにされればいいんだ」
「……ま、待て。何だそれは」

 シグナムは少しどきりとした表情になり、胸をかばうそぶりを見せた。おっぱい大きいのを気に
してる、とかはやてが言ってたけどそのせいかしら。

「そ……そんなことをする男なのか」
「んー、んーん。さすがにそんな図はアニメ本編で見たことない」
「そ、そうか。……もしそこまでの男なら、情状酌量の余地なく斬り捨てていたところだ」
「でも12人全員ぴっちりしたスーツ着せた挙げ句、そういえば子供産ませようとしてたような……すごいね?」
「この世から抹消せねばならんな」

 スカさんに死亡フラグが立ったようだ。
 そういえば忘れてたけど、ヴォルケンは基本的にあの人嫌いらしいからなぁ。なんでか知らんが。

「まぁいいや。冥福を祈るか……あれ、お茶ないよ」
「自分で行け」
「シグナムがお茶を淹れてくれたら、ひとつぬいぐるみを縫ってあげよう」
「明らかにそちらの方が大変だな……ところで、何のだ?」

 呆れたような表情を見せながらも何だかちょっとだけ期待した雰囲気をしている辺り、食い付い
たと判断していいのだろう。

「座布団」

 一気に白けられた。

「冗談、冗談です。本当はトイレの便座カバーくらい縫います!」

 席を立たれた。超引き留める。

「あれ……俺、どうしてお茶淹れた挙げ句肩揉んでるんだろう?」
「相変わらず面白いな、お前は」

 ふふっ、と肩で笑うシグナムだった。

「ええい腹が立つ。仕返しに右のおっぱいを付け根から右回転、左のおっぱいを左回転してやれ」

 真空状態の圧倒的破壊空間を作る前に、三度デコピンされた。額割れるかと思った。



(続く)

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StSでナンバトラーVやろうかと妄想したけどただの組体操にしかならなかった。



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