クリスマスのプレゼントを準備していたところ、すずかから連絡(電話)がきた。
 よれば、なのはとアリサに素性を話したとのこと。フェイトは次に任務が空いた時に、はやてに
は次の土日で、できるなら同時に話すのだそうだ。

「アリサちゃんが鋭くて。モンスター図鑑に登録してる物体がいるんじゃないか、って言うの」
「いま俺が無生物扱いされた件について一言」
「あっ……ち、違うんだよ、その、あ、アリサちゃんが言ったのをそのまま伝えただけでっ」

 あわてて取り繕うすずかだった。しかしまあ、声色から察するに、なのはたちとの関係は望まし
い状態らしいので安心である。

「アリサへの説明も考えるか……まあいいや。良かったね」
「あっ……うん。ありがとう。それで、お話の件ね。今度はやてちゃんと一緒に、またうちに」
「ああ今度こそ胃に穴が! 助けてくれえ!」

 電話の向こうが弁解なのか抗議なのかよくわからん感じになってめんどいので、とりあえずフェ
イトやはやてと話を聞く約束だけ取り付ける。
 でもって当日。とりあえずクリスマスの準備も兼ねるからという理由で、結局なのは部屋に集合
の約束になったので集まる。

「いきなりで悪いが、もう帰りたいです」
「いきなりすぎるよ……」

 男女比1:5の空間に尋常ならざる居心地の悪さを感じて困る。まあ話が話なので、帰る気とか
さらさらないけど。

「いいから誰か一人性転換して来いさ……」
「アンタがしてくればいい話よね?」

 その発想はなかった。
 とかやっているうちにすずかが切り出したので、原作で暴露話ってあったっけかなぁ覚えてない
わもう、などと思いつつ話を聞くことにした。
 種族名は「夜の一族」。
 身体能力は高く、あとたまに血が欲しくなる体質だそうです。
 図鑑の履歴を見てみたところ、ハンキョウコウモリ(人間に聞こえる高音域でコミュニケーショ
ンするコウモリ。繁殖期に洞窟で聞くと何かのコンサートみたいで面白い。別名:歌うコウモリ)
や、ミントモスキート(刺されたところがひんやりする蚊。気持ちいいからといって刺されまくっ
ているともれなく風邪をひく。かなり希少)などの吸血種を異常に閲覧していたので、予想通りと
いうか。まあ納得である。

「朝の一族と昼の一族はいないんですか。いないんですかいないんですか」
「い、いないと思うけど……」

 ふと気になったので迫ってみたが、実在しないらしい。がっかりする。

「今のは居る流れだろ……常識的に考えて……」
「いたら何するつもりやったん」
「いや、特には。三人揃えるとなんか勝てそうってだけで」
「……あ、相変わらず、すごい発想だね」
「言ったでしょ。こいつだけは何があろうといつも通りだって」
「いつも通りすぎて涙が出てくるよ……」
「あ、あはは……」

 誉めているのか貶しているのかわからないアリサに、曖昧に笑うなのはとすずか。
 しかしまあ、はやてもフェイトも特段何かが変わった様子もないので安心した。良かったねの意
をこめてすずかを見ると、やっぱりほっとした様子で微笑んだ。

「……今ので、ちょっと安心したんだけどね。アンタに聞きたいことがあるんだけど」

 と思っていたらその後、解散した後になって、アリサに何やら呼び止められた。

「忙しいから後で。『バイソン?突進力の変わらないただひとりのボクサー?』のCMを考えt」
「いいから聞け」

 大変怖いので、首がちぎれんばかりに頷く。

「……アンタ、前から知ってたわね。あの図鑑、周囲にいる種族を自動で判定するんでしょう?」

 直球来た。
 しかしながら、どうやら責めてる感じではなさそうだ。それなら全員がいる目の前で追及するだ
ろうし。

「いや、図鑑で判定はしてない。でも言動にポロッと出てたから。最近向こうも気づいて、相談されたりしてた」

 そういう訳なので半ば安心しつつ、正直に答えることにした。その方が良さそうだし。

「いつ頃気づいたのよ……」
「一年前のこの季節。話すことも、まあ考えないではなかったけど。悪かったね」
「……いいのよ。これだけ近くにいて、気づかなかったのが複雑なだけだから」
「アリサとなのはに打ち明けるのは勇気要る、って言ってたからなあ。普段は特に注意してたんだろ」
「あー……そうね。それは……そうかも」

 ほんのちょっと嬉しそうな気配がしたのは、すずかにとって自分が、そういう「特別な友達」だ
ったことがわかったからなのだろうか。

「今だから言うけど……てっきり、アンタが余計なことをしたかと思ってたのよ。図鑑のデータ、すずかも含めて公開しちゃってたりとか」

 そう前置きしてから、疑っちゃって悪かったわねと謝られた。
 誰もいなくなるのを待っていたのは、他の人にあんまり聞かれたくなかったからなのかもしれない。

「言わなきゃ俺は何も知らないんだから、黙っててもよかったのに」
「イヤよそんなの。ずっとモヤモヤしたままになるじゃない」
「いや、まあ、いちいち全部伝えんでも……まあいいや何でも」
「いつも思うけど、アンタってすぐ『まあいいや』って言うわね……」

 と言いつつも、こちらも割とスッキリした表情のアリサだった。

「あ。アリサちゃんにけーとくん、まだ居たんだ。コーヒー入ったよ?」
「言っておくが、しばらくコーヒーは飲まんぞ」
「あれ? 好物じゃなかったの、コーヒー?」
「胃が痛くなったんだ。すずかん家で、すずかに付き合って飲みすぎた」
「一体何杯飲んだのよ」
「痛くなる前に自制しようよ……」

 割と正論だった。



(続く)

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会話頭文字アイアイ縛り
あとなんで朝の一族いないん?



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