冬もう間近に迫り、またこたつ様にご登場願おうか、という話になった頃。
 ぬこ姉妹がやって来て言うには、はやてたちの基礎訓練が終わったのだとか。だから労をねぎら
いなさいだとか。夕飯は魚がいいだとか。

「強制的に成長したんだ……ボクを倒せる年齢まで!」
「?」

 せっかくコミックス派に喧嘩を売ってみたのに、姉妹には通じなくて悲しい。

「よっしゃ。なら俺が洞窟で見つけてきた、古い金貨やら綺麗な石やらを」
「きゃっ……ち、近づけないでよ、そんなチカチカしたの。目に痛いでしょ」
「駄目か。なら『浦島オリ太郎』に続き、『長靴にハマった猫』の主役をプレゼントしよう」
「えっ? そのタイトル……こっ、こっち来るな! その長ぐつ置きなさいよっ!」
「大丈夫だ。電子レンジに入れたら怒られるけど、この程度なら許されるはず!」

 ばりばり引っ掛かれたので、たぶん許されなかったんだろう。

「レンジは駄目、長ぐつも却下……フェイト、俺はどこに猫をしまえばいいんだ?」
「べつに、しまう必要はないと思うんだけど……」
「しまっとかないとアルフに喰われる」
「あ、アルフはそんなことしないよ!」
「誰がするかっ!」

 戸惑うフェイトを見るのは大変面白いが、アルフが怖いのでこの辺にしておく。

「して、はやて。ぬこたちがそこまで言うからには、カイザーフェニックスくらいは覚えたのか」
「まだ火の鳥にはなってへんよ……あ、でも、三個くらいなら同時発射できる気が」
「寿命縮むからやめれ」
「ん、まぁ、やらへんけど……おー、心配された」
「当然だ。はやての趣味がマトリフ師匠と重なるため、最近は顔まで同じに見えてきて老い先が」

 間違ってないのに鼻を引っ張られたので、多分はやての機嫌を損ねたのだろう。マトリフ師匠の
趣味にも、おっぱいの項目はあるはずなのだがおかしいなぁ。

「あれはただのスケベ。こっちは、えと……愛。そう、愛やな。おっぱい愛。アンダースタン?」
「その愛は山より高い乳も、海より深い乳をもあまねく愛でるか?」
「人間と呼べる範囲でお願いします」

 はやての愛は超乳奇乳には届かないらしかった。

「で、今日はフェイトたちはうちで夕飯食べるんだったか。そして当然泊まる、と」
「え……ええっ、い、いいよ悪いよ、お泊まりだなんてそんな……」
「泊まらないと二人だけ、夕食を明日使う予定のとびっきりの肉にしろとはやてから指令が」
「とっ、泊まる、泊まります! ……うー……」

 フェイトの場合はこう言った方が早いのだ。期待したような表情を見せつつも、はやてと俺に視
線で抗議してきた。やばいこの子面白い。とか思いながら、ぬこたちの希望通り夕飯は魚に決める。
明日はとびっきりの刺身でも買ってきてやることにして、今日は鮭を焼く。
 じゅうじゅうしゅうしゅうと音が鳴り、よだれが出そうな匂いが漂い始めるころ、背後にぬこた
ちの気配がした。振り返ったらホントにいたので、とりあえずねぎらう。

「お疲れさまでした。あいつら強くなりましたか」
「なったわよ。もともと才能に手足が生えたような感じだったんだし」
「なのはとフェイトについてはそうかもしれんが、はやてにその評価は違和感がある」
「どういう表現なら納得するんだか……上級魔法もあっという間にマスターしたのに」
「上乳魔法?」

 手でひっぱたくのも面倒なのか、尻尾でべしべし叩かれる。料理してるんだからやめれ。

「はぁ……ちっとも変わらないし。フェイトもいるんだから、程々にしなさい」
「程々ならいいと認可された!」
「全然してないッ!」
「囀ずるな。唾が飛ぶ」
「お、お前がそんなんだからでしょうがっ!」
「ははは。しかし、ぬこたちは変わったなぁ。最近はヴィータやリインとの睨み合いもしないし」
「……あ、相手にするのが馬鹿らしくなっただけよ。変な風にとらえないで!」
「いいぞいいぞ。仲が良いのはいいことだ。私は一向に構わんッッ」

 以前に比べてかなり歩み寄ったと思うのに、姉妹は後ろでにゃーにゃー騒ぐばかり。

「いや。ふたりとも、変わったよ。私も含めて、だがね」
「とっ、父様まで!」

 テーブルでコーヒーを飲んでいたグレアムじいちゃんまで、柔らかい笑みを浮かべて口にした。

「味方ゼロわろた」
「う、うううるさあい! も、元はと言えばあんたが、あんたがっ……!」
「アンタガ? FFっぽいね」
「黙っててよもぉーっ!」

 やたらうるさかった。



(続く)

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ゴンさんじゅうにさいのAA貼ろうと思ったけどやめた。
超不定期で申し訳ないです。

「方法は分からないけど強制的に進行したんだ。第三期の年齢まで――!」
↑これやりたい



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