学校がはじまった。はやても初日から通うので、通学路をはやてと連れだって歩く。

「不思議な気分すぎるのですが」
「わたしの方は新鮮やなぁ。超歩いとるし」
「常々思うのだが、松葉杖を持つとガンダムになった気分になるよね」
「返せ」

 念のため松葉杖を運んでいたのだが、遊ぼうとすると取り上げられる。

「そんな理不尽な。やるだろう傘でアバンストラッシュの練習とか!」
「残念でしたー。傘つかう機会なんてあらへんかったもん」
「もやし娘とな」
「髪の毛もやしの人に言われたくないわー!」

 とか遊びながら、でもどこかくすぐったいような気分のまま、てくてくと歩く。はやての表情が
緩み加減なのは、春の陽気だけのせいじゃない気がした。

「おっと」
「わぷっ」

 と、十字路。はやての横から飛び出る人影が。
 なんと、俺のクラスメイトだった! トーストをくわえ直して謝ってから、「遅刻遅刻!」と言
って先を走っていく!

「あれ、もしかしてうちの学校の?」
「相違ない。同級生」
「ほー。これまたギャルゲみたいな……どうして笑いをこらえとるん?」
「……はやて、左」
「ん? あたっ」

 再び十字路。はやての横から、トーストをくわえた人影が次々と!

「いたっ」
「ご、ごめん急いでるから!」
「あてっ」
「あっ、悪い! 遅刻ギリギリだから、じゃあ!」
「にゃー」
「ごめんっ、朝礼が!」





「ぜんぶお宅の差し金か」

 帰宅後、当たり前のように問い詰められました。
 クラスメイトに裏で手を引いていたのが、完全にバレていた。認めると耳を引っ張られる。

「やめれ。痛い」
「痛くしとるから当然。ったく、どうして毎回こうもくだらんことを」
「登場したはやてを見て、連中の『あっ、あのときの!』が重なったときのあの爽快感がね」
「爽快感ってより完全に大爆笑やったろ。クラス全員で計画しよってもー」

 でもクラスには早く慣れたでしょう。それとこれとは話が別や。となってしばらく引っ張られ続
ける。離された後てじんじんするのを、ちっこいリインに冷やしてもらう。

「お、帰ってる。はやて、学校どうだった? またこいつが何かしたのか?」
「通学路でトーストくわえたクラスメイト10人くらいとぶつかったんやけど」
「……お前おいしいこと考えすぎだろ。言ったらカメラ持ってったのに」
「先生が写真とってた。3UPくらいしてそうだよね。敵キャラ踏みまくったマリオみたく」

 このぶんだと楽しそうだな、とヴィータ。記録できなかったのが微妙に残念そう。

「で、全員仮面はかぶってたんだろーな?」
「いやいや。あれは正装ということにしたから、最近は滅多なことでは」
「でも図工室に仮面のストックはたくさんあったわ」
「黒いのがか。そういえば、今日は学校の中を回った感じだったっけ」

 と、はやてによる今日の活動報告。ヴィータそのうち親戚役として遊びに行ったりしようかと考
えてるらしく、ふんふんと相槌を打っている。
 こうなると周りから、わらわらとみんなが集まってきた。そして微笑ましそうな表情で、はやて
の話に耳を傾けるのだ。ぬこ姉妹も日本の学校に興味津々みたいだし、グレアムじいちゃんは言わ
ずもがなだ。はぐりんたちはよく分かってなさそうだけど。

「ちなみに席はガン離れでした」
「あ行とや行なら当然だな……ん?」
「あっ、そうですね。名前順なら、最初と最後……えっ?」

 なんか忘れてる気がするけどまぁいいや。

「お茶いれてくる」
「麦茶が」
「緑茶を」
「ウーロン茶!」

 めんどくさいので緑茶。淹れて戻り、みんなで飲む。リクエスト通ったシグナムが機嫌よさそう
で、却下のはやてとヴィータがぶーたれてた。ぬこ姉妹も熱い熱いとにゃーにゃー文句を言ってい
たが、熱い茶ならこんなもんだ。慣れろ。

「で、放課後は休憩をはさんで魔法の訓練か。週3くらいで」
「ん。なのはちゃんももう少しで来るって……んー、何か充実してきた! テンション上がる!」
「希望通り、最初からびしびしいくからね。覚悟しなさいっ」

 でもって学校がはじまると同時に、ちょっと特殊な習い事も。生活が一気に変わってきて、はや
てもなんだかすごい気合い十分かつ嬉しそうだった。

「なーなー、見とってな! わたし、勉強も魔法も頑張るから!」
「ならまず、通学路で転校生五十人とぶつかる魔法を」
「クラスの人数超えとるやろ」
「それ男も混ざってるよな」

 ぬこ姉妹にも問いただしてみたが、「そんな魔法ない」とのこと。残念。

「安心しろ。ばっちり看取ってやる」
「ニュアンスが不穏なんやけど……ったく。いつもそーなんやから」

 とか言いながらも、にこにこと満足そうなはやてだった。こちらまで幸せな気分になりながら、
魔法使い二人のためにクッキーでも焼こうかと思う俺だった。





「けーとくんけーとくん! こ、このサクランボって、もしかしてレイジングハート?」
「クッキーに切れ目入れて魔導書とか。チョコで十字も書いてあるし見事すぎるんやけど」

 存外に気に入られた。横でシャマル先生が、触発されて気合いを入れていた。

「あっ、おいしい。おいしいーっ!」
「そいつはよかった。動物の形のはこっちに……シグナムはどうして食べないの」
「……い、言われなくても、わかっている。いま食べるところだっ」

 けっこう可愛い感じのが作れたと思ったが、シグナムはなぜか食べるのを躊躇していた。可愛す
ぎて食べれない、とかだったりして。



(続く)

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ノリノリのクラスメイトたち。
そして可愛すぎて食べれないシグナム。

ここから時間の流れは早くなるかもしれません。



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