学校が始まって時も過ぎ、そろそろフェイトの試験の日が近くなってきた。

「問題ないレベルに達してるから心配いらないけど。試験は一発勝負だから、それさえ意識すれば」
「お前にしては実感のこもった言葉じゃないか」
「大学の本試験で危うく解答欄間違えそうになったことがありまして」

 よく合格したな、と言われた。感心してるのやら呆れてるのやら。

「うまくいくといいですねっ!」
「そういや今日は、なのはの家に泊まってるんだって?」

 試験前はリラックスが大事! ということで、現在なのはの家に滞在中なフェイトさん。
 メールが届くのを読むと、アリサやすずかも集まって、軽く激励会なんかをしているらしい。俺
やはやては行けなかったけど。

「いたたたたた」
「死にそうなはやてがいる。何か飲む?」
「お願い。あーあ、私も行きたかったのに!」
「仕方ないでござる。次会う時は行けるといいね」

 主にはやてのリハビリと、その付き添いのため病院に行っていたのである。ようやく始まったは
いいのだが、これがなかなか単調かつキツいのですっごい疲れるそうだ。フェイトの件はメールで
の応援で我慢することにして、今はこちらはこちらで奮闘中。

「そっか。もう2月かぁ」
「春休みが待ち遠しいけど、この分だとあっという間に来てしまいそうです」

 というわけで、一月たっても変わらない八神家です。
 たまにクロノからお仕事が舞い込む以外は変わったこともなく、基本的にのんびり生活してます。
それでも時間って流れていくんだなぁと最近思ったりしなくもない。

「つーか聖祥って、中学から男女別なんだな。共学だと思ってたけど」

 ふと、ヴィータが思い出したように口にした。そうなんだよねという話になる。

「……途中で女子校になる、って思ってた」
「それだと男の子たちが追い出されちゃいますよ」
「それなら、男子が全員爆発するとかすれば解決」
「新手のスタンド使いだろそれ」
「海鳴で恐怖の連続殺人と申したか」

 しかしそれだと海鳴でトニオさんに会える気がするので、喜んでいいのかよくないのか。

「……ん? そういや数の子の中に、そんな人がいたような」

 そんな時、爆弾使いと聞いてふと頭をよぎるキャラクターがいて、とりあえず口に出してみる。

「キラークイーンの顔した敵が出てくるってことか?」
「意味が違う」
「怖すぎるぞ」

 さすがの俺もそれはドン引きする、というかそんなのがいたら記憶にはっきりとどめてるんじゃ
ないかと思う。

「そいつの名前は?」
「えっと……あれ。ちょっと前、話に出なかったっけ」
「そうやったっけ。思い出せんけど」
「三文字で、真ん中に『ン』の文字が入ってた気がする」

 もうなんか全然思い出せなくなってきた。また観なおしたいとは思っているんだが、あたりまえ
だけどこっちには置いてないし。

「それで爆弾を使うのか」
「頭文字とラストが思い出せん。以前は覚えてたんだけど」
「ああ。それって」
「リンクとちゃう?」

 ヴィータとはやてから結論出た。

「ああそう! そんな感じ! 語感がそれだった!」
「なんでスマブラキャラが出て来てんだよ……」
「あれじゃね。スカさんが使い手だったりとか」
「ちょっとスカ山の印象が良くなってしもーたわ」

 主に俺の言動によってどん底まで行っていたスカさんの評価でしたが、微妙に改善の傾向がみら
れるようだった。

「この調子でピカチュウとかカービィとか作ってくれるんじゃなかろうか」
「な……ほ、本当か?」
「いや、あの人面白いことが好きそうだし。どうしたのそんな急に」
「なっ、何でもないっ! 余計なお世話だっ!」

 なぜかシグナムは顕著みたいだった。





 魔法の勉強を入門編からかじっていたはやてだが、いつの間にかメラを覚えていたらしい。

「今のはメラゾーマではない……メラや」
「ふーっ」
「あっ! こ、こらそこ! 息吹き掛けんなぁ!」

 立てた指先に小さな火をともしたはやてが、大魔王を詐称しはじめた。身の程を思い知らせるた
めに、よこからふーふー息を吹きかけて消し飛ばしにかかる。

「オリーシュは バギをとなえた!」
「それただの息……あーあ、消えてしもた。せっかく点けたのに何するんよ」
「こんな若いバーン様が居てたまるかと思って」
「本編中でも若返っとったやん」

 確かにその通りだけどじいちゃんの方が好きだ。奇遇やな私も大好きや。という会話から、見解
の一致がうかがえる。

「ところで何でメラ? リイン的な意味では、ギラやイオの方が早そうなのに」
「メラがいちばん楽なん。今デバイスなしやから、カンタンなのにしよ思て」
「じゃあ後はヒャドか」
「間違っても対人戦で使えへん呪文を考えとるやろ」
「なら指先ぜんぶに火の玉を」
「寿命が縮む件」

 それはいやだなぁ。

「しかし見てみたい。リインはできる?」
「……練習してみる」

 話しかけると、うなずいてみせるリインだった。しかしこの子の場合はコントロールして火の玉
 5個作るより、大量に魔力注ぎ込んでベギラゴン使った方が強いような気がしなくもない。

「そういえば、そういう小回りの利く魔法の使い手っていないよね。なのははあんなだし」
「せやな。リイン2号には、そこを担当してもらお!」
「はやてのデバイス作るのが先じゃね。その時は是非俺のコアをどこかに」
「『靴紐がすぐほどける呪い』にかかりそうだから却下や」
「……『タンスに小指をぶつけやすくなる呪い』にかかりそう」

 こんな感じに、ネタで呪いのアイテム扱いされるオリーシュコアである。あと思いの外リインの
発想がとてもえげつないです。

「ああ、そういえば。オリーシュコアで不思議な現象が」
「ん? どーしたん?」
「いやさ、この間クロノから連絡が来たんだけど。オリーシュコア盗もうとした人がいたらしくて」

 そうなん!? と驚くはやて。リインも興味あるみたいで、しきりに続きを促してきた。

「『一日中くしゃみが出そうで出ない』って泣きついてきたのを逮捕したらしい。これって呪い?」
「呪いすぎるわ」

 戦慄走るはやてたちだった。



(続く)

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ちょっと作中の時間の流れが早くなるかもしれません。
ぽつぽつ番外では出てますが、そろそろリイン2の出番を用意したいところですね。



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