ちっこいなのはの大群があらわれた。知らない広い部屋に、それはもう凄まじい数がわらわらと。
 いつかなのはさんハウスとか言ったことはあるけど、まったくもって訳わからん。ちょっと可愛い
ような気もするけど、基本的に意味不明。冗談だろこれ。

「なんというバッドカンパニー……このままいくと、ティアナがマジで蜂の巣にされるんじゃ」
「はっち?」
「はっち」
「はっちー」

 てってこてってこ歩き回りながら、無数のなのはたちが口々に言う。本体は頑張って向上させてい
るみたいだが、こいつらの言語能力には多少不安があるらしい。

「……逃げよう」

 と分析したところで、日頃なのはをさんざっぱらおもちゃにし続けたことを思い出した。
 ティアナより先に、まず俺が蜂の巣にされそうだと気付く。こんなのどうせ夢だけど、磔にされて
砲撃とか現実だろうが夢だろうが絶対嫌だ。急いで逃避を試みる。

「どこ? どこいくの?」
「いっちゃうの? いっちゃうの?」
「あそんでよう。かまってよう……」

 逃避を試みたのだが周囲をかこまれており、しかも既に袖やら裾やらを掴まれていた。脱出とか不
可能であり、要するにあきらめざるを得ない。

「……じゃあ、お手」

 言う通りにしないと大変なことになりそうなので、恐る恐る遊んでみる。

「おて!」
「はい!」
「うん!」
「うわあああああああああああああああああ」

 ニッコニコの笑顔のなのは軍団が押し寄せてきて、潰されて死にかけた。





 そんなアホすぎる夢を見た。夢で良かったとしか言いようがない。

「わたし、そこまでアホの子じゃないよう……」

 フェイトと一緒に遊びに来たなのはに正直に話してみると、そんな反応が返ってきた。自分がそう
なってるところはさすがに想像したくないみたいだ。はやてとかヴィータは横で机バンバン叩いて笑
ってるけど。

「逃げればよかったんじゃないか。いずれにせよ悪夢であることにかわりはないが」
「無理。さすがにあの大軍で囲まれたら無理だって」

 マジ怖かった。夢と知りつつも死を確信したのである。隕石直撃した時は即死だったのでわからな
かったから、感じた中では人生初の命の危機だったかも知れない。夢だけど。

「ちっちゃいなのはが、たくさん……」

 フェイトさんが非常に見たそうにしている。

「でも全員レイジングハート持ってたよ」
「……!」

 ちょっと怖がるフェイトさんだった。最近クロノに聞いたけど、バインドされて砲撃食らったこと
があるのだとか。そりゃ怖いって。

「あれだけの大群にかまってかまって言われると流石に気が遠くなるぞぇ……」
「……コアを捨てると言い出した時は大した肝だと思ったが」
「いやいやいや。実際見てみればいいんだ。あれは絶対絶望するって」
「わたしって……けーとくんの中のわたしって……」

 しょぼーんな感じのなのはだった。





 とかやりながら、今日は今日で遊ぶことにする。クリスマスパーティーまでまだ何日か日があるの
で、皆でお菓子作りの練習をしたりもした。はやてもなのはもクッキー焼いたりしたことが何度もあ
るため、結構充実した時間でした。
 あと今日は折角フェイトさんが遊びにきたので、地球の習慣とかを教えることにもなった。
 現在お箸の使い方をシャマル先生に教わって、リインと豆移し競争の真っ最中だ。もともと力加減
は上手な方らしく、後から始めたのになかなか上手みたいだった。

「勝った方にはなのはの手作りクッキーが贈呈されます」

 両者ものすごくスピードが上がった。二人とも食べたいからなんだろうけど、微妙にニュアンスが
違うような気がする。

「負けた方にはシャマル先生特製の当たりプリンが進呈されます」

 リインのスピードが超上がり、フェイトは訳が分からなそうに戸惑って、シャマル先生が隅っこの
方でいじけた。シャマル先生がいじいじすること自体はいつものことなんだけど、今日は犬型ザフィー
ラに慰められている。なんだか妙にシュールだった。

「やっぱり嘘です」
「…………!」

 リインから何とも言えない視線を向けられた。責められているのか礼を言われているのか、よく分
からない感じだった。

「……」
「しゃ、シャマルさんっ。その……よかったら、クッキー、一緒に焼きませんか?」
「黒こげジェット」
「黒こげジェット」

 はやてと二人で囃し立てていると、シャマル先生がさらに凹んだ。最初に誘いかけたなのはに、二
人して超叱られた。

「なのはちゃんこえぇ」
「夢の中だとちょっと可愛いような気もしたがそんなことはなかったぜ!」
「え……か、可愛かったの?」

 なのははちょっと期待した眼差しで見つめている。

「うん。主に、舌が足りなくて頭の弱そうなところが」
「もっ、もう! しらない! しらないっ!」

 ぷんぷん怒ってキッチンにずんずか歩いていくなのはだった。



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