休日はよくヴィータといろんなお店のコーヒーを飲んでまわったりする。ヴィータに限らずはや
てやリインともそうだけど、何故か相手はヴィータが多い。
でもってそれはいいのだけれど、今日は日曜日。どこもかしこも行く先々、カップルだらけなので
なんともはや。

「仲睦まじい男女、これを昔の言葉でちんちんかもかもと言います。この店に集まったカップルの
 みなさんに、心ゆくまでちんちんかもかもなひとときを演出せねば!」

 と気分に任せて言いながらお店のドアを開けようとしたところ、隣に立っていたヴィータから当
然のようにガッシ!ボカッ!と拳骨をもらった。痛い頭を抱えたまま、ずるずると翠屋まで引きず
られる。

「ま、また引きずられてる……はたかれるってわかってるのに、どうして毎回するの、めぐみさん?」
「乳繰りあっている若者たちを見ると、そういう気分になるから仕方ないんです」
「なるほど。ってことは、はたかれたい気分になったのか」
「違うにきまってる」
「でもお前ほぼ毎回こうだろ」

 それを言われると否定できない。あわてて注文に移る。

「毎回引きずらされる身になってみろ。おごれ」
「仕方ないなぁ。じゃあ、カフェモカ50店内で」
「え、営業終了まで居座る気だよこの人たち!」
「冗談です。2つだけでお願いします」
「も、もー。いつもそうやって……めぐみさんは、すぐ嘘をつく癖を直した方がいいと思いますっ」
「じゃあ本当になのはのスマイル5年分くらい注文します。ずっと表情固定してね」
「す、少しくらいなら嘘も大切だと思います!」

 とかやってたけど、次のお客さんが来たのでやめよう。微笑ましそうに見る桃子さんに挨拶して、
とりあえず席へ。

「ところで『スマイル20年分ください』って言うとプロポーズみたいだよね」
「『テイクアウトで』って言ったらなおさらだな」
「しかし20年ということは、熟年離婚が確定するという恐ろしい事実が」
「イヤなプロポーズすぎるだろ。で、なんでプロポーズの話になるんだ?」
「意味はないのです」
「ないのかよ」

 あきれられる。

「そういやお前のそーいう話って聞かないな。浮いた話ってなかったのか?」
「ん? んー、そういう話はあんまり」
「そっか。まぁあっても困るけどな」
「でも『この人になら掘られてもいい』」と思ったことなら」
「掘るって言わねーよ」

 そうでした間違えた。あとそろそろ営業妨害になるかもしれないからやめよう。

「あと後ろで私を驚かそうとしているなのはは、とりあえず大人しく諦めるべき」

 小さな店員があきらめた感じに、しぶしぶ商品を持ってきた。

「うう、すぐ気付かれるし……めぐみさんは、驚かない」
「『ダイヤモンドは砕けない』ぽくてカッコいいね。照れる」
「……私も一回くらい、めぐみさんをあっと言わせてみたい」
「あっ」

 違うらしく、ぷんすか怒られた。



(続かない)

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Q.なのははどうしてさん付けなの?
A.「めぐみちゃん」って呼ぶとチャーハンサイコクラッシャーが飛んでくるから。



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