唐突だが時は流れ、リイン2号が誕生した。
 ちょうど今日は、二人で留守番。力の1号、技の2号というフレーズがあるのを思いだし、さっ
そくそのスキルを試してみようと思う。主にネタ的な方面で。

「おいちみっ子。何か出せる? 空裂眼刺驚とか」
「リイン、吸血鬼じゃないです。出せるといったら、エターナルでフォースな猛吹雪なら……」
「相手は?」
「死にます!」
「ハハハこやつめ。ハハハ」
「ハハハ」

 この子とはウマが合いそうだ、と直感的に察する。

「不思議と、このリイン2号とは初めて会った気がしないオリーシュであった」
「んー……リインも、けーとさんとは以前、何処かで会った気がします。生前からの宿縁的な何か
 があったのかもしれません!」
「生まれる前から」
「好きでしたー!」

 オリーシュには、いつの間にやらリイン2号フラグが立っていたらしい。

「……はっ! あ、あわわっ、い、今のは無しです! 無効です! つい口が動いたんです!」

 リインは恥ずかしそうにしながら弁解した。

「そうだね。今のは違うんだね」
「……はっ! その生温かな視線から察するに、リインがわんこ扱いされています!」
「そうだね。わんこっぽいね」
「肯定されました! 愛玩動物リインの誕生です! そのうちCMとかに出演しちゃったりして、
 どうするー? タミフルー? とか言っちゃうに違いありません!」
「言いません」
「そうですかー……」

 リインはしょんぼり寂しそうにした。

「ところで昨日寝てる間は何処にいたの? 見てなかったけど。はやてのふとんの中?」
「昨日はリインハウスで寝てましたよ?」
「貴様の城は電子ジャーがお似合いだ」
「リインの肌は緑じゃないですよ?」

 何故このネタを知っているのか。

「口から卵は?」
「生めませんっ」
「融合するのに」
「……まいりました!」

 強引に押し通すとリインは、一本取られた、という時の清々しい顔をした。

「あなたと合体したい……」
「告白されました! さっきがリインの本心とすると、相思相愛です! ラブラブです!」
「てか、融合ってどんなん? やっぱ気持ちよくて叫んじゃったりするのか」
「えと、気持ちいい訳ではないです。髪の色とかが変化はしますけど」
「……あれ。リインの口調が普通になってる」
「いつもはこんな感じですよ。普段のリインは真面目さんなんです」
「今は?」
「らんらん気分だからです! けーとさんと話してると、なんだか楽しくて!」

 リインはにこにこと笑った。満開の桜のようだった。
 意外にも普段は至って普通とのこと。羽目の外し方がすこぶる上手らしい。

「じゃあ皆帰ってくるまで暇だから、翠屋のシュークリーム買ってこよう。留守番いい?」
「はいっ。任せてください!」
「でもってそのシュークリームのクリームを抜いて、それがリインの晩御飯」
「お菓子の家……ちょっと楽しみ、です!」
「こやつめ。ハハハ」
「ハハハ」

 八神家は今日も平和です。



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