翌日。翠屋。超盛況。

「シュークリーム祭りやー!」
「チョコシューうめー! マジうめぇ!」

 朝起きてからもしばらく皆でテレビ観たりしてくつろぎ、お昼を食べてから子供全員で(何故か
ヴィータが混ざってた)昼寝。2時を過ぎ3時になって、おやつが欲しくなる頃合いで翠屋へ特攻。
 フェレットユーノはなのはの姉さんらしき人に連れていかれ、なのはも一端それに続き、自分の
部屋に着替えに戻った。クロノたちはもうちょいしたら来るらしいので、久しぶりにシュークリーム

頂く。めちゃうま。

「うめぇと書くとらめぇに見える俺の頭は大丈夫だろうか」
「大丈夫じゃない気がします」
「中にクリームが入っているんじゃないか?」

 最近ザフィーラが本気で容赦なくないか。

「ん? あれ。これ、頼んでないような」

 結構いろいろ注目したのでお皿は多いけど、ケーキは頼んでなかったはず。
 皆でにぎやかに食べていて、俺だけが気付いた疑問には、桃子さんが答えてくれました。

「サービスです。玉坂くんには、お礼をしなくちゃと思っていたから」

 誰の名前だ?
 ああ、俺か。

「思い当たる節は特に何も。何かしましたっけ」
「最近なのはが、苦手の国語を一生懸命勉強してるの。何かと思って聞いてみたら、負けたくない
 子がいる、って言うからびっくりし……」
「わっ、わわ! わわわっ! おかあさんっ!!」

 いつの間にかやって来たなのはが真っ赤っ赤になって止めていたけど、一応ほとんど聞き取れま
した。内緒の秘密だったみたいだけど。
 知らぬ間にライバル視されていたらしい。
 トリッパーに対抗意識を燃やし、勝負を挑む原作キャラ。
 これは……フルボッコフラグ!

「どうした。神妙な顔をして」
「ちょっとクロノが可哀想になって」

 よく分からない顔をする騎士たちだった。

「呼んだか?」

 噂をすれば影とはよく言ったもので、ちょうどクロノが現れた。フェイトを連れたリンディさん
も入ってくる。わんこはきっとアルフだな。

「あ、来た来た。はいこれ。手作りお菓子のポテトチップス」
「本当に作ってきてくれたのか。ありがとう」
「ただし塩と砂糖を入れ間違えた」
「残念だが受け取れない」

 冗談です。と言うと受け取ってくれた。リンディさんの甘いもの離れに貢献できれ
ばいいんだけど。

「シュークリーム、六つお願いします」

 早速注文してるのを見ると、やっぱり無理そうな気がするのでした。

「あ、はじめまして。八神はやていいます」
「クロノ・ハラオウンだ。よろしく」
「で、こっちがフェイトちゃん? 意外やわぁ、もう少し露しゅもあっ!」

 はやてが危ういことを口走りそうになったため、シュークリーム突っ込んで黙らせる。はやての
口の回りがクリームだらけになって怒られたけど、背に腹はかえられない。

「その子が?」

 クロノが聞いてくる。目がまっすぐ真剣だった。ヴォルケンリッターがにわかに警戒心を高める。

「いやまぁ、今日言うつもりだったしバレていいけど。いつわかったかね」
「昨晩考えた結論だ。消去法でな」
「なんの話?」
「はやての話」
「せやから、なんの話」
「こまけぇこたぁ気にすんな!」

 のけ者にされたことをお怒りのようで、はやてにほっぺたむぎむぎされた。





「……という訳でして」

 ヴォルケンリッターとクロノに確認を取って、今までの色々なことをはやてに説明した。
 闇の書がちょいバグってて、このまま放置するとはやてにも良くないこと。書の持ち主容疑かけ
られて、管理局と追いかけっこしてたこと。今は取りあえず休戦して、闇の書なんとかしようぜ。
となっていること。それにそもそも、実は蒐集やってたってこととか。

「蒐集しとったん。どして?」
「やらないとひどい目に合うことがわかったので」

 主に胃袋的な意味で。こればっかりは首を傾げる一同であったが、騎士たちはうんうんと頷くば
かりだ。食は時として生死に直結するのである。

「あっちの世界に行ってたのって、このためやったん」
「ん。はぐれメタルで経験値稼ぎ。ちゃんと回復まで面倒みたけど」
「申し訳ありませんでした」
「全員後でシャマル水イッキ飲みの刑」

 騎士たちは絶望した。

「で、本題なんだけど。闇の書を直そうなお話」
「へ? 闇の書、壊れとるん?」

 シャマルの味覚とか最初おかしかったけど、というはやてに、しゅんとなるシャマル先生だった。
ナチュラルにシャマル弄りをしていることには戦慄を禁じ得ない。

「はやての足もそのせいらしい。最近闇の書子さんのおかげで、足への影響は小さくできたけど」

 そうやったんか! と驚くはやて。なのはも目を丸くして聞き入っていた。クロノや後からやっ
てきたフェレットユーノは想像がついていたらしく、リンディさん同様静かに聞いていたけど。

「そこまではわかった。問題はこの先、書を起動し、バグを取り除く……どうやる気だ?」

 そのうち、間を置いてクロノが尋ねる。

「蒐集はこいつで」

 靴を脱いで持ち上げる。

「? その靴、どこかで……向こうの世界のものか?」
『あっ、見たことある! しあわせのくつ、だったよね?』

 フェレットユーノが念話を飛ばしたらしい。一応他のお客さんもいるのに配慮したのである。

「……?」
「ああ、聞こえてないか。ユーノからの念話だ。しあわせのくつ、というのか?」
「うん。ああそうか、前見せたか」

 一瞬首を傾げる騎士たちだったが、すぐ納得した顔になった。会話の違和感にすぐ気付くあたり、
聡いなぁと思う。

「何と、歩けば経験値がたまるという優れ物」
「それで一体何をするんだ」
「経験値は闇の書のページに転換されます」
「あ……ありのまま、昨晩起こったことを話すぜ!」
「しばらく確認してなかったら、ページが残りあと20でした」
「何を言っているのか分からないと思うが、私たちも何が起きたかわからなかった」
「……何でもありだな」

 呆れたようにクロノが言った。

「しかし、君のレベルと、闇の書のページが何故つながる?」
「それは……まぁ、最後にわかると思います」
「言う気はない、か」
「はやてと騎士たちには関係ない、としか」

 うーん、と考えるリンディさん。クロノも思考の中に入っていくようだった。

「は……」

 とここで、なのはから声がする。
 何だろう、と思っていると、こんな言葉が飛び出した。

「は、は、はやてちゃん、闇の書の主さんなの!?」
「そぉい!」
「そぉい!」

 今ようやく現実に回帰したらしいなのはの口に、はやてと二人してミニシュークリームを突っ込んだ。

「……な、なにするのっ、二人ともいきなり……」
「おそぉい!」
「うるそぉい!」

 食べきってからさらにやってみた。その後なのはに二人して怒られたけど、口のまわりがクリー
ムだらけだったのでちっとも怖くなかった。

「まずは口を拭くがいいでござる」
「はい鏡」

 真っ赤になって口をぬぐった。それから二人まとめてぽこぽこ叩かれたけど、残念ながら全然痛
くなかった。



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