はやてが風邪ひいた。
 熱が出て咳も出た。

「おおお落ち着け落ち着いて119番あわわあわあわわわわ」
「ゆっ、湯たんぽ! 私、湯たんぽ作ってきますっ!」
「シャマル先生やめて。前、湯たんぽの中に煮えたぎる汁入れたでしょ。たぶん死ぬから」

 とりあえず慌てたいのはこちらなのだが、テンパりすぎなヴィータとシャマル先生を見てて大分
落ち着いた。冷静なシグナムとザッフィーを見習って欲しいなーと思う。

「あかん……こたつのせいや……」
「昼間っから頭突っ込んで寝てれば風邪もひくわな。おかゆ食べる? ごはんですよ付けて」
「あー……ん。たべるー」
「ん。じゃ、ちょっと行って……」
「いや、私がやる」

 と言って遮ったのは、意外なことにシグナムでした。

「ん? どして?」
「人間の風邪はお前の方が経験者だ。主はやての傍にいてくれ。ザフィーラも、この場を頼む」
「心得た」
「さすがシグナム。出来る女はいざという時違う。……ねぇ?」
「……うぅ」
「……うるせー」

 ちょっとしょんぼりなシャマル先生とヴィータだった。少し反省してください。

「とりあえず、石田先生には連絡しといた。後で病院行こうね」
「はは……はー。ドジやな」
「あえなく天敵、風邪の餌食になったこたつむり。とりあえず体をあたたたたためますか?」
「あたたたたたたけほけほっ」

 まだまだはやてのノリが良いのは安心だが、咳が出た。ヴィータにものすごく殴られた。

「すまんかった。温めますか?」
「ん。温める」
「ん。しかしエロゲとかなら、たぶん今のでセクロスフラグな件」
「……そのフラグ、明らかに死亡ルートやと思うけど」
「同意。てか、アホだよね。どう考えても悪化するよね」

 頭はまだまだ働いているのに安心しつつ、シャマル先生に毛布を、ヴィータに汗拭きタオルを取
りに行かせたり。ザッフィーに冷蔵庫からポカリ持ってきてもらったりとか。

「みんな、すまんなぁ」
「普段のお返し。存分に甘えて下さい。何がいい? どんと来い」
「んー。なら、着替え」
「貧相なはやての裸体なんぞ見とうない。StSまで行ってから出直して来やがれ」
「……おっぱい星人、恐るべし。10年後覚えとり」

 そういや10年後って精神年齢29か。
 はやてが小娘に見えるかな、むしろ小狸か。とか思いつつ、着替えのためザッフィーと一緒に部
屋を出るのでした。





「風邪です」

 疾風迅雷、病院に一目散にすっ飛んでって、石田先生の診断はそんな感じ。
 水分きちんと取る。スポーツドリンク飲んでね。
 あと、身体をあったかくして寝るべし。とか。夜更かし厳禁で。とかとか。

「ということで、本は没収」
「ああぁ……今日読了する予定やったのにぃぃ……」

 夜になって、ちょっと持ち直したみたい。こんな感じに言葉から余裕が窺えた。ちなみにタイト
ルは天知人。来年の大河の予習らしい。

「はやて、大丈夫か……?」
「ん、何とか平気やよ。堪忍なぁ、こんなんなってしもて」
「じゃ、雑炊作っとくから……あ、シャマル先生。張り切んないでいいから。俺がやるから」
「そっ、そんなぁ……」

 がっくり項垂れるのを見ると悪い気もするけど、患者に危険物が25%くらいの確率で運ばれて
しまうため却下です。一時は150%だったんだからすごい進歩だけど。
 ちなみに150%とは、料理を口に含んだ瞬間目眩がして、介抱されてる時に水でなく、オリジ
ナルのシャマルドリンクを飲まされる確率が50%の意味。

「一度で済むんだし、あたしも夕飯それにする」
「ヴィータの心意気に男気を感じた。蟹缶使ってちょっと賑やかな雑炊にしよう」
「おー。美味しそうやな」
「てか皆、それでいい?」
「いいですよっ」
「私も構わん」
「私もだ。ただし、劇物でないならな」
「病人に食わせんだから劇物なわけあらんがな常考」

 軽口叩きながらも、こいつらやっぱ良い奴らだなぁと思う。

「早く治さないと、シャマルルーレットの刑」
「オリーシュが家主に反逆しはじめた件」
「まさに反逆のオリーシュ。そのうちギアスとか使えるようになるかも」
「それはない」
「天地が引っくり返ってもそれはない」
「残念だ……ん? ギアスで『風邪治せ』って命令したら効くんかな」
「どうやろなー。でもそれやと、『不老不死になれ』って命令したらえらいことに」

 まぁいいや早く治してね。すぐ元気になるでなー。てな感じで、今日の夕飯の雑炊うまうま。



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