夏も中頃を過ぎ、しかし宿題が終わらなくてげんなりする。

「しかしそれにしても、はやては何故もうほとんど終わっているのか」
「予定表のとおりに進めとったからかなー」
「計画表って、初日に作って一週間で破棄するものだと思ってました」
「少し反省した方がええと思うよ?」

 というわけで冷たいジュースを飲みながら、かりかりと鉛筆を動かす。ドリルの量もたまってる。

「どうせできるし、答えを移そう」
「あかーん。ちゃんとやる!」
「いや、芸術の世界には模写という分野があってだな」
「同じように、試験の世界にはカンニングという不正があるんや」
「カンニングって、英語だと意味違うんだってね。Cheatingが正解らしい」
「まんまチートやん」
「その通り」

 てな風に話題をそらせようとしたのだが、無理だった。素直にやるしかない。めんどくさいどこ
ろの話ではない。
 しかし、はやても隣で頑張ってるので勉強せざるを得ない。それにこうしていると、たまにシャ
マル先生がお菓子を持ってきてくれるのでちょっと嬉しい。

「ふたりとも、差し入れですよっ」

 こんな感じに。

「買ってきたパウンドケーキに、バニラアイスとホイップクリーム……こ、こんな感じですよね?」

 不安そうに訪ねてくるシャマル先生。
 何を隠そう、実は目の前のお菓子はシャマル先生が作ったのである。
 市販のケーキに甘いものとか冷たいものとかを乗せただけではあるが。

「んー! つめた! でも美味しい!」
「うめぇ」
「ほ、ホントですかっ!?」
「今回は、クリームと牛乳間違えて泡立てなかったみたいで。よかった、よかった」
「あっ、ああああれはそのっ」

 あれはひどかった。だって泡だらけもん。

「ホントにうめーのか?」
「美味しいよー! みんなの分もある?」
「あ、はい! すぐ作りますっ!」

 シャマル先生は嬉しそうに台所に駆けていった。

「そうか。要するに味付けする必要がなく、混ぜたり乗せたりするだけなら大丈夫なのだな」
「なるほど……私は身体がこれだから口にしたことはないが、そこまで酷いのか?」

 どんなにシャマル先生に温情をかけても、ザッフィーの言葉には頷くしかない。
 昨日なんかあれだもん。ね。
 味噌汁がさ。甘酸っぱいの。

「とりあえず、ホットケーキとかやな。あれは味付けいらんし、混ぜて練るだけやからなー」
「暫くシャマル先生のおやつを、ねるねるねるねにしてみようと思う」
「そいつは効くかもな。粉と水だけだし」

 高町なのは補完計画と同時に、守護騎士の皆と一緒にシャマル先生のお料理訓練も進行中です。





 で、自由研究。
 はやては何やらペーパークラフトみたいなのを作るらしく日々作業していたのだが、こちらはま
だ何も決まっていない。どうしよう。

「やっぱ絵かなぁ」

 取り柄はそのくらいしかない。あとは、原作知識(笑)とか。

「鉛筆で何描こう。セミとか捕まえるの面倒だし」
「普段見るものとか人とかでもええんちゃう?」
「なら、はやてのヌードデッサンとか」
「やん」

 すぐさま追っかけてきた守護騎士たちは、はやてのノリのよさを見習ってほしいと常々思う。

「ぬぬ、ヴィータめシグナムめ。本当は脱ぎたくて脱ぎたくて仕方ないくせに」
「誰がだ誰が」
「や、世の中にはそういう人もいるの。脱げば脱ぐほど速くなる魔導師も広い世界には」
「あ、知っとる! 前聞いたわ、金髪ツインの子やっけ?」
「だが残念ながら、守護騎士にその趣味は無い」
「ですよね」

 けちょんけちょんにされた。

「すまんかった。似顔絵描くから許して」
「お? 確か、はやてのあの絵描いたのお前だったよな」
「あー! ずるい! 私もやろ!」
「面白そうだ。私も頼もう」

 結局今日も作業は進まなかった。これは夏の神様の陰謀なのだろうか。



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