合格した喜びからか、はやてが暇さえあると制服姿やら何やらを見せにぴょこぴょこやって来る
ので、こちらも負けじと何か着てみることにした。

「ナイスジャージ」
「ナイスジャージ」

 あまりにトレンディなジャージ(名前入り)の着こなしの見事さに、お互い熱くガッツポーズを
交える。

「裸エプロンや制服エプロンはもう古い。最近の流行はジャージ。ジャージエプロン。これ最強」
「エプロンの後ろからジャージが見えるんか……なんという生活感。だがそれがいい」
「いったい何を熱く語っているんですか……?」

 新ジャンル「ジャージにエプロン」について忌憚なく論を交えていたところに、シャマル先生が
怪しいものを見る目つきで登場する。

「あ。見せっこですか? ……そういう場合、制服を着るものだと思いますけど」
「シャマルはジャージは制服に勝てへんと申すか」
「やれやれ。これだからバリアジャケット厨は」
「そんなものになった覚えは毛頭ありませんよ……制服ですらないじゃないですか……」
「いやー、何度も何度も制服着るとシワんなる思てな。で、どうどう? 似合っとる?」

 ジャージでくるくる回られても反応に迷うのか、シャマル先生は言葉を探して誉めながらも曖昧
な笑みを浮かべるばかり。

「アメリカにはニュージャージーという州まで存在するのに」
「ジャージャー麺の美味しさをあまりなめない方がいい」
「どちらもジャージとは毛ほども関係ありませんよ……あと、後でアイロンかけますから、脱いでおいて下さいね?」
「半脱ぎジャージがグッと来ると申すか……俺を越えたな……」
「ひとっことも申してません!」
「もうもううるさいなぁ」
「理不尽極まりないですよぉ……」

 遊ぶのはこの辺にして、そろそろ大人しく退室する。
 でもってちょちょいと着替えてきて手渡すと、さっそくとばかりにアイロンをかけ始めた。その
うち楽しくなってきたのか、鼻歌なんか歌ったりして。

「音外れてるよ」

 はっとして顔を赤くしながらも素知らぬふりをして続けるあたり、この人もなかなか剛の者であると言えよう。

「中途半端に耐性つけやがって。……あれ。そういやはやては?」
「いつから一緒に生活してると思ってるんですか……はやてちゃんなら、さっきコンビニに」
「マジか」
「マジです」
「ジャージで?」
「普段着です。はやてちゃんのも、ここにありますし」
「これ以外に予備が五着くらいあるかと思って」
「どれだけジャージが好きなんですか!?」
「冗談だ。でもあの人『このジャージにみずのいし使って、水の羽衣にして家宝にならんかな』って言ってたし」

 すごい発想なのか意味不明なのか、よくわからないとシャマル先生は困惑した。

「……みずのいしそのものを家宝にすればいいと思いました」

 そして案外もっともなことを言う。

「みずのいしで思い出したが、シャマル先生ブースター派だっけ」
「そうですけど……何かあったんですか?」
「この前似たのを見つけた」
「ほっ、ほほほ本当ですか!?」
「火は吐かなかったから違う子だったけど。毛皮狙われて絶滅したと思われてたらしい」
「さらりと凄いことやってるんですね……で、でも、見たいです。とても!」
「ならブースターと引き換えで」

 シャマル先生は泣きそうな顔をした。

「冗談。冗談です。クロノが自然公園で預かってるから」
「……冗談にしていいことと、いけないことがあると思います」
「すみませんでした。確かに『お前のシャワーズは預かった』って言われたらさすがの俺もブチ切れるしな」
「苦労して育ててましたもんね……」
「レポート書かずに電池切れた時はさすがに泣きそうになったわ」

 いまだにポケモンマスターを目指している俺たちだった。



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