あれから二年後、中学入学を控えた頃。

「はやての射撃能力がえらいことに」
「さしもの合体ガジェットも、多重集束魔法の乱れ撃ちには敵わないか……お、ついにスクルトか」
「ああああ、みんなわらわらとガジェットに。ピクミン思い出すわ」
「死なない突撃部隊ほど恐ろしいものはないな」
「か、数の暴力すぎて笑えません! 家に群がるシロアリのようにしか!」

 そこには、今日も元気に局員の皆にスクルトをかけ続けるはやての姿が!

「スクルトの使いすぎでヤクルトファンになりそうや」
「百烈張り手されるスト2の乗用車思い出したわ」
「人生ボーナスステージだぜ、坊主!」

 とんとんとはやての肩を叩いてやる目の前で、ウオオオン! と勝どきの声をあげる魔導師の皆
さま。バリアジャケットがまだスクルトで強化されていて、なんだかゴツゴツしてて怖い。アメフ
トみたい。

「局員の皆さん、頼もしいですねー」
「合体ガジェット恐るるに足らずといった感じですね」
「一昨日いきなり三機が変形合体した時はどうなることかと思ったがな……」
「なのはが呆気に取られるあまり、前を飛んでたリインに追突したんだよね」
「……ちょっと痛かった」
「落ちたなのはは打撲のうえ頭にコブ作って、いたいよーいたいよーさすってよーって呻いてたよ」
「心配」

 というわけで、ガジェットとの戦いはまだ続いていたりする。あちらさまもなかなか考えている
みたいで、攻撃、装甲、妨害型といろいろ試作しては実戦投入を繰り返しているようだ。
 この度、ついにそれらが変形して合体する新型が登場。
 AMF強度も装甲も弾数もサイズも何もかも三倍になった高性能にヒヤヒヤしたものの、こちら
もリインが修得していた「禊」(俺が見たい見たいと言った)で各個撃破に成功。
 しかしリインだけでは手が足らん、ということになり、今回はやてによるスクルト積み→魔導師
ファランクス殺法、が試されたという次第である。これがうまくいった。

「今後のガジェット対策は、リインとはやての二本立てになりますか」
「リインに追い付いてないのはええんやけど、最近のガジェットはえらい硬くなってきとるんよなぁ……」
「心配いらんさ、俺らが指一本触れさせはしない」
「俺たちの熱いソウルは誘導弾ごときに燃え尽きたりはしない! そうだろう野郎共!」

 歓声が上がった。はやてがついてると一人も欠けずに任務が終わることもあり、なんだか局員の
間ではけっこうな噂と人気があるらしかった。

「宴やー!!」
「勝利の宴会ですー!」
「おっしゃあ坊主! お前なんか踊れ!」
「よく言った……モンスター直伝、『ふしぎなおどり』の奥義を見せてやろう」
「止めろ。おい、止めろと言っている」
「知らないのか。オリ主は踊りを踊るんだぜ?」

 こんな感じに、局員の皆さまとは仲良くやっています。





 一方、こちらは高町家。

「あ。タンコブ姫のなのはさんじゃないですか。こんちわ」
「……あ、けーとくんだ……いたた。い、いたいよう……」
「ごめんなさいね。昨日よりは良くなったんだけど……」
「うう……おかーさんかけーとくん、あざとコブ、ひとついらない?」
「帰る」
「あら、もう?」
「あっあっ、行かないで、行かないでよう……」

 そこには追突事故の結果、ひんひん言って寝込んでいるなのはの姿が!

「リンゴ持ってきてやったよ。ほーら、3つ重ねて合体ガジェットだよ」
「け、けーとくんって、ホントいい性格してるよねっ」
「そんなこと言われると照れるぜ」
「これっぽっちも誉めてないのに……けーとくん、想像以上の剛の者だよ……」
「剛毛を目指してるから仕方ないんだ。まあとりあえず、食え」

 丸ごと差し出してみるも、何故か食べようとしないなのは。

「き、切って。切って、せめてっ」
「なのはならそのままでも、ぞぶっと噛んでショム……モニュ……ってうまそうに食べれるはず」
「グラップラー!? わ、わたし魔法少女、魔法少女!」
「そんなこともできない魔法少女なんて俺は認めない」
「けーとくんの魔法少女の定義が知りたいよ……」

 できないできないと言うので仕方なく皮をむき、切り分けて食わせてやる。

「……い、いたい。……いたいよう」
「まったく」

 布団から目だけを出して視線で訴えるので、仕方なくコブをさすってやる。

「これ以上バカになっても知らんぞ」
「あっ……ば、バカじゃないもん。ちょ、ちょっと、楽になったけど」
「ゴッドハンドだから治っちゃうんだ」
「けーとくんは誰を生け贄に捧げるんだろう?」

 下の毛だな、という台詞をかろうじて飲み込む。

「さすりすぎるとなのはの額が削れるのが欠点か」

 布団の中に引っ込んだ。

「なのはの髪が擦りきれても、桃子さんがちゃんと手入れしてくれるのに」
「さすがに、なくなったらお手入れはできないですよ?」
「……けーとくんが、ついにおかーさんまで巻き込もうとする」
「台風の目だから仕方ないんだ。とりあえず心配してるはやてたちに、現状をメールしてきます」

 そう言い残し、ぱたんと扉を閉じた。

「あっ……お、おかーさんっ」
「どうしたの?」
「り、リンゴ、食べたいですっ」
「はいはい」

 真っ赤になって桃子さんに甘えるなのはと、心配そうながらどこか嬉しそうな桃子さんの会話が
ドア越しに聞こえた。怪我してるところ悪いが、ちょっと和んだ。

「桃子さん後で見たがるだろうし、ヴィータ呼んでみるか」
「呼ばれる前に、もう来てるぜ」
「準備が良くて感心です」
「崇めてもいいぞ。その前に、さっさとメールしてきな」
「御意」

 カメラ片手になのは部屋に入るヴィータだった。



(続く)

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二年後のはやて・なのは編。
次は同じ時期のフェイトと誰かで。



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