はやてに連れられて、なのはの家に泊まりに行った。フェイトも呼んで夕飯をいただいたら、満
腹からか寝てしまった。目が覚めたら22:00とか何の冗談?

「もう寝れないだろこれ」
「あ、起きた……も、もしかしてご飯食べたあと、いつもすぐ寝てるの?」
「実はそうなんだ。飯の後は常に押入れ直行だぜ」
「お宅はたまに押し入れで寝とるよな」
「けーとくんの生態がわからなくなってきたよ」

 なのはによく分からない生物扱いされて悲しいがそれはさておく。
 見回すと、勝手知ったるなのは部屋だ。ベッドを借りてしまっていたらしい。三人とも小さなこ
たつに入り、雑誌をめくったり本を読んだりしていたようだ。

「お前たち! 退屈だったようだな!」

 ベッドから飛びたち、華麗に降り立つ。

「わ。足、すごい上がるんだね」

 荒ぶるオリ主のポーズで立ち上がる俺を見てフェイトが感心した。
 残りの二人が変な生き物を見る目をしているのとはまるで対照的です。

「毎日柔軟体操してるから。体術の奥義をサマソ会得すべくサマソ休まずサマ続けサマサマソッ」
「本音隠す気あらへんな」
「根は正直者なんだ。自慢じゃないが、イヤなことをやった経験はあまりないぜ」
「……けーとくんは、自分に素直だからね。いろんな意味で」

 どういう意味だ。と思ってなのはを見るも、この子はなんかニコニコするばかり。ひょっとして
単に褒められただけ?

「いかん。褒められると心身に異常をきたし、身体中の穴という穴から紫色の毒汁を出して死ぬ」
「ひ、ひとの部屋でそんな死に方しないでよ……」
「大丈夫だ。すぐに蒸発し、周囲の生命体に感染して全部道連れにするから寂しくない」
「め、迷惑なんじゃ……」
「人にあるまじき死に方やな」
「エルフの女王には亜人扱いされるぞ。あれは冗談か本気かわかんないけど」

 そのおかげでいのりの指輪を買えたわけだが、自分本来のアイデンティティを誤認されていると
いうのはなかなか切ないものである。
 すずかももし本当に人間じゃないなら、こんな気持ちになることがあるのだろうか?

「だがしかし問題はない。オリーシュはただ、オリーシュであればいいのだ!」
「キリッ」

 効果音ひとつで台無しにするはやてが大変むかちゅく。

「もういいや。ふて寝しよう」
「けーとくん、今まで寝てたんじゃないの?」

 そうだった。どうしよう?

「とりあえず風呂いただいてくるわ」
「紫色の汁を撒き散らさんよーにな。翌日の風呂掃除が大変やから」
「大丈夫だ。浴槽くらいなら軽々と溶ける」
「わ、わたし、まだ入ってない……」
「よっしゃ。紫の汁は無理にしても、絵の具溶かせば再現できるな! ちょっくらやってくる!」

 部屋を出るより早く、はやてにバインドかけられた。

「さて、窓際に吊るそか。バインド追加してエビフライみたいにしとこ」
「えびふりゃー上級者の俺をもうならせる、この手際。はやても成長したものだな!」
「ぴ、ぴちぴち跳ねてて気持ち悪い! けーとくん軟体動物みたい!」
「際どいですが、哺乳類です」
「際どいんだ……」
「まぁギリギリやな」

 いつの間にやら、哺乳類崖っぷち認定が確定してしまい驚愕の嵐。

「こうなったらなんとか証明を……あれ? よく考えたら俺、この星の哺乳類じゃなくね?」
「ああっ! そ、そういえばそうだ、そうだったよっ!」

 この星の無数の塵のひとつですらない俺だった。



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