夏は海、秋は山。というわけで木の葉が色づく頃、魔物探しを兼ねてとある管理世界の山の麓に
紅葉狩りにやってきましたこんにちは。

「まず言っておくが、紅葉狩りは山の木という木から葉を刈るイベントではない。鎌をしまえ」
「えー……紛らわしいな。じゃあ一体なにを狩ればいいんだ?」
「どうしても狩りたい、いや刈りたいのなら、なのはのツインテールを片方どうぞ」
「女の子の髪に対して扱いがひどすぎるよ!?」
「いま気付いた! これやったらなのはがサイドテールになるんじゃね!」
「サイドテールはそういう作り方じゃないわよ」
「いびつな髪型になりそうだね……」
「うん……」

 なのはStSバージョンの作り方を発見してテンション上がっていたのだが、アリサに否定され
て残念だった。フェイトとすずかは苦笑いしてた。
 というわけで、今回はかなりの大所帯です。家の面子に加えてなのはにフェイト、アリサもすず
かも参加してきた。
 アリすずはnot魔法組なのだが、図鑑のページが増えるところを見てみたいらしい。夏休みの
課題用にイラストに起こした分は好評だったのだが、図鑑はまだ777ページ埋めきったわけでは
ない。まだちょくちょく出掛けては集めてるのだ。

「ほい図鑑。夏休みに見せたときから、100種くらいは増えてる」
「そんなに! ……ほ、本当だ。すごいハイペースだね」
「いいや、まだまだ。過去に試した、24時間で150種の記録に比べたら」
「ポケモン的な意味やな? ……あー、そういえばタイムアタックしとったなぁ」
「達成した直後にメールしてたわね」
「付き合わされたこっちの身にもなれよな。楽しかったからいいけど」

 でもこんな感じで賑やかなので、あまりモンスターは寄ってこないと思うなぁ。なのでそっちは
期待せず、素直に紅葉を楽しむとしよう。

「バギマバギマバギマバギマバギマ」

 幸いはやてが魔法で演出をしてくれて、赤や黄色の葉っぱが舞い上がって綺麗ではあるので。

「……この世がこんなファンタジーな世界だったなんて、一年前は想像もしなかったわ」

 舞い上がっては落ちてくる木の葉を眺めつつ、アリサがしみじみといった様子で呟く。

「まぁ人生なんてそんなもんだ。世の中はいつもこんなはずじゃなかったことばかりだ」
「アンタが言うと説得力があるんだかないんだか……」
「ありまくりだろ」
「胡散臭いって言ってるのよ!」
「おっさん臭いとは失礼ナリ! こう見えてもあの日、黒いのと白いのに会うまではだな!」
「……聞き間違いはともかく、まだまだいろんな秘密があるみたいね」

 ふと気がつけば、大変いぶかしげな目で見られていた。こっちの世界ではどうでもいいところで
隠し事がよくバレる気がする。

「もうどうにかしてこの人本当鋭い」
「今のは自滅しただけだと思うんだけど……」
「すずかの目が節穴すぎる。節穴さんと呼んでやる」
「フシアナさん?」
「フシ・アナさん」
「わ。アナウンサーさんみたいになったね」
「すずかのことですが」
「ま、まだその流れなの?」

 ティアナさんも同類です。そういえばティアナとスバルって、もう生まれてるんだったよなぁ。

「スバルには待ちガイル式訓練法を是非プレゼントしてみたいところだ」
「前もゆーとったけど、何やのその訓練法?」
「訓練システム上にガイルを実体化、対象をどこまでも待ちガイルする訓練法。倒すまで居残りで」
「鬼畜」

 スバルの未来を憂えたらしく、はやては心底気の毒そうにした。

「ソニック撃てたら俺が生身でやるんだがなぁ。サマソは十年あれば……無理か」
「サマソ失敗のジャンプキックは上手くなっとったのにな」
「練習したから」
「れ、練習して上手くなるものだったの?」

 フェイトに驚かれた。紅葉狩りなのに話の花が咲くとはこれ如何に。





 でもってしばらくしてからモンスターを探しに、秋の色づいた山を散策しはじめる。

「おーこんなところに洞窟があるぞ入ってみよう」
「この棒読み、最初から思考する気ゼロじゃない! 待ちなさいよっ!」
「仕方ないさ。穴があったら入りたい年頃なんだ」
「聞き方によっては尋常でなくいやらしい響きが! ……あっ、ま、待ってくださいーっ」
「ま……待って、まだ様子を……」
「け、けーとくん、あぶないよっ!?」

 なんか護衛のリイン姉妹に加えて、アリサやすずかをはじめとする見学組、さらにはフェイトや
なのはまでもがついて来て賑やかです。

「わっ、真っ暗……けーとさーん、どこですかーっ?」
「あの子のスカートの中」

 複数の布地の音がした。スカートを押さえたらしいけど暗くてよくわかんない。

「ざ、残念ですがリインのスカートは、けーとさんが入れるサイズでは!」

 そして一人だけ反応がなんかおかしい。

「俺たちの身長まで巨大化すればいいんじゃね。今ここで。さぁ」
「そこまでしてスカートの中に入ろうとする執念に戦慄しました……!」
「ふはははは。……うん?」

 後ろからちっこいリインの声がして、話しているとお姉さんの方に背後から抱き上げられた。大
丈夫かと問われる。

「勝手に行かないで。見失う」
「すまん。しかし洞窟が俺を呼んでいたのだ」
「この前は『そこに森があるから』って言っていたような気が……」
「そこにスカートがあるから」
「や、やはりわたしが今ここで、けーとさんサイズになるべきなのでしょうか!」

 ちっこいのと馬鹿やってただけなのに、俺だけアリサに蹴られた。理不尽。
 とかしているうちに、おっきなリインが松明に火をつけて、辺りを明るくしてくれた。入り口
はかなり狭かったのだが、中は思ったよりも広い。

「巣穴っぽいけどハズレだな。今は使われてなさそう」
「すごいね、わかるんだ?」
「この辺の獣は賢いから。冬になる前に落ち葉のベッド作ったりするらしい」
「さっきのはやてちゃんみたいに?」
「そうそう。あの木の葉の山は見事だったわ」

 バギマで地面から集めた、紅葉のベッドを思い出す。あれはふかふかで気持ちよかったわ。帰る
前に全部燃やして芋焼くけど。

「てか、帰るまでになんか魔物見つかるのかこれ。期待できないわ」
「いいじゃないですかー。秋の山を満喫できましたし!」
「リイン2は春のイメージだけど。秋の山は好きですか」
「はいっ。根拠はないですけど、なんだか懐かしい気持ちになるんですっ」
「秋山さんと呼んでやろう」

 ついに3つめの襲名が! とちっこいリインが大興奮。

「それにしても、何の気配もないわね。この人数だから、動物が寄りつかないのは分かるけど」
「まったくだ。さっき入り口に鹿らしき影がいたのも逃げちまったし」
「ええっ!? そ、それって、追いかけなくていいの!?」
「変わったところはなかったから問題ない。強いて言えば、角が銀色だったけど……」

 慌てて洞窟を飛び出すなのはたちだった。「鹿さん、しかさーん! ああっ、いた! 本当に銀
色だ!」とか叫んでた。

「……ヴィータがいたずらしてるだけなのに。ああ、話を最後まで聞かないやつらだなぁ」
「け、けーとさんの顔が邪悪です! 計画通り、という台詞がぴったりです!」

 後でヴィータと二人怒られたけど、面白かったからまぁいいか。



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