モンスター図鑑を評価してくれる、オーキド博士みたいなポジションの人が欲しい!
 という旨をクロノに相談すると、自然保護にあたっている部署に頼んでくれることになった。

「あと図鑑の改善点と、要望がいくつか。とりあえずこれなんだけど」
「ん? ああ、索引機能か……なるほど。たしかに、条件検索ができると面白いな」
「……思ったけど、この図鑑って管理局の方は使ってないのだろうか。超便利なのに」
「使ってるが、全生物を把握してはいないから。その点君なら、新種も見つけられると思って」
「誉めるなよ照れる」
「うわ気持ち悪い」
「うっさいアルフ。なのはぶつけんぞ」
「……お前の中で、あの子はどういう扱いになってるのか聞きたいよ」

 ハラオウン家に赴き、そんな感じに話を進める。ちょうどクロノとアルフがおりました。
 アルフがいるのはもちろんのこと、クロノもちょっと休みを取れたとかで、最近は地球にもけっ
こう顔を出すようになった。やっぱりフェイトがこっちで生活してるのが大きいのかな。

「あとついでに、この機能の有無って切り替えできませんか」
「……自動探知・登録機能? なにか不都合があったか。便利だと思うんだけど」
「人外の可能性がある友達がいるんで、自動で登録されると困るんです」

 クロノもアルフも、怪訝そうな顔をしてこちらを見た。
 言わずもがな、すずかのことである。一応名前は伏せたけど。

「地球に? ……もしかして、あたしも知ってる中で?」
「特定されるからノーコメント。図鑑見たいって言ってるんだけど、起動したら登録されるからマズい」
「……なるほど、わかった。誰かは聞かないでおくよ」
「あっと。危ない感じの人ではないので」
「わかってる。もしそうだったら、君も友人扱いしたりはしないさ」
「……それ、本当にそう?」
「……取消す。よく考えるとあり得る」
「はぁ」

 多分人間じゃない、と思われるすずか。なのはたちと一緒に家に呼ばれたりもしたが、春が過ぎ
夏になった今も、疑問に決着はついていなかった。
 でも最近は、「言いたくないなら別にいっか」などと考えていたりする。向こうがこのままの状
況を所望なら、この秘密は墓の下まで持ってくってことで。

「人外確定って訳でもないし。念のためっちゃ念のためなのですが」
「わかった、やっておくよ。図鑑は改良に3日間預かる」
「よしきた、じゃあ今までのをイラストに起こすか。フェイトに絡みつくはぐりんたちから」
「小学校の提出物と聞いたが……?」
「へー。描いてるところ、あたしにも見せておくれよ」

 さすが戦闘者、ふたりとも視線が怖すぎたので平伏する。それにしてもこのところ、俺の平謝り
スキルがうなぎ登りしている気がするのはいかがだろうか。

「さて用は済んだ。お茶いれようぜ」
「ああ。茶なら……どうして君が茶葉の場所を知っているんだ」
「今さら。なのはの家なんか、普通に宅急便受け取ったりするけど。俺もはやても」

 と。がたり、とドア方面から音がした。

「侵入者! 動くな! 動くと俺の命がないぞ!」
「何かおかしくないか」
「クロノを人質に取るとアルフが妨害し、さらにクロノが止めを刺すところまで確定してる」
「フェイト、おかえりっ」
「ただいま。アルフ、お兄ちゃん」

 帰宅したフェイトでした。完璧にスルーのアルフより、拾ってくれるクロノの優しさに感動。
 兄さんとかやっぱり懐かしい響きだなぁ、とちょっと昔を思い出したりしていると、そのフェイ
トがなにやら含みのある視線で見ているのに気づいた。何ぞ?

「フェイトって目からビーム出せたっけ。狙われた?」
「ち、違うよ。そうじゃなくて、その……な、なんでもないっ」

 何でもないそうです。





 ちなみにその翌日。なのはからはやて経由で聞いた話によると、なのは部屋にフェイトが朝っぱ
らから居座ったとか。玄関のチャイムが鳴ると出ようとしたとか。印鑑の置き場所がわからず涙目
になってたとかあったらしいです。

「……うーっ……」

 3日後図鑑を取りに行くと、やたら羨ましそうに見られた。面白そうなので適当ぶっこむ。

「実はなのはの臍は拡張でき、そこに色んなものが収容できるのだ。印鑑もそこに」
「えっ……う、嘘っ」

 だいぶ迷ったようだが翌日試したらしく、なのはもフェイトもメールで抗議してきた。今さら再
認識したけど、魔法少女っておもしれぇ。



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