はやての足がいい具合に回復してきて、今日病院に付き添いに行ってみたところ、ついに自力で
立てるようになった。まだ大変そうではあるけれども。

「ジョニィ・ジョースター……足が動くのか。このまま爪弾いってみようぜ」
「昨日切ってしもーたわ」

 同じく付き添いに来ていて感極まったシャマル先生や、熱心に手を尽くしてくれた石田先生に祝
われてから、とりあえず帰宅。その日の夜は「はやてが立った記念」ということで、家の中で盛大
に祝うことになった。はやてが酒まで出してきた。シャマルつぶれた。

「酔うの早くね?」
「よ、酔……ってないです。そんなことないです。ないですよ?」
「シャマル先生、指なん本立ててるか分かる?」
「ん……さ、3……いえ、2本です。甘いですね、騙されませんよっ」

 俺のグーの手を見て、頬を紅潮させながら自信満々に答えるシャマル先生。
 埒があかないのでもうザフィーラと協力して運び出し、とりあえず布団の中に放りこんだ。うだ
うだ言ってた。すやすや寝た。

「どーやった?」
「ぷーぷー文句言ってたけど寝た。布団で巻いて海老フライにしたかったけど止めたわ」
「正解やな。せやけど、なんでやろ。もうちょい強かったよーな気がするんやけど」
「気が緩んでたんでしょ。病院じゃあすごい喜んでたし」

 とか言いながらも席に戻る。テーブルにはシャマル先生渾身の料理がずらりと並んでいた。美味
しい美味しいと皆が言うたびに、シャマル先生もすっごい幸せそうにニコニコしていたものだ。し
かしそのせいでお酒も進みすぎたみたいだった。

「俺はもうあと十年近く待たなければならん」
「災難やなー。親知らずもあと何回も抜かなあかんし」
「予防接種もダブルで受けることになるな」
「受験も全て受け直しですねっ。知識が残ってるのがせめてもの救い、だと思います!」

 転生のデメリットが目立ちすぎる。素直に寿命だけのばすだけじゃ何故ダメだったのかと、生き
返らせてくれた黒いのと白いのから話を訊いてみようと思う。もう生き返ったりはしないと思うけ
ど、死に際に話くらいはできる気がする。

「……頑張って」

 何をどう頑張るのかはよくわからないが、おっきなリインは声援を送ってくれるようだ。まぁ好
きに生きてみよう。

「まぁそれはいいけど。はやては4月の新学期に間に合うのだろうか」
「ん? まぁ、なんとかなりそーやな。松葉杖は必須やけど……んー、楽しみや!」
「6年の組体操でマイケルジャクソンのスリラーPVやりたいから、根回し手伝って欲しい」
「誰がメイクを担当するんだ」
「ああ、そか。ならハルヒをパロって、『恋のピクル伝説』でもいい。もちろんバキ的な意味で」
「とんでもない想像させんなばかやろう」
「常々思うのだが、お前の頭のどこからそういう発想が次々に出てくるのか」

 誉められているのか呆れられているのか。たぶん後者。

「先学期のテスト、開始直後に『この問題進研ゼミでやった!』って言って爆笑されたりしたわ」
「なぜ私が行くまでそのネタ取っとかんかった……!」

 そして怒られ+悔しがられる。

「まぁいずれにせよ、順調に治ってよかったわさ」
「……ああ! な、治ったらピクニックって約束、やくそく!」
「あ。そーいや、そんな約束あったな!」
「完治じゃないけど、まぁいいか。お疲れさん、よく頑張ったね」
「…………な、何や。そんなん言われると気持ちわるいなぁ!」
「何故耳を引っ張るか」

 祝い続ける俺たちだった。





「これは……何だ? すごい発泡だな」
「バブルスライムみたいになってら。触ったらヤバそうな」

 ビールを飲んだはぐりんたちが、バブルスライムばりにしゅわしゅわ泡を出して寝ていた。大丈
夫かなと思ったけど、翌日はちゃんと動いてました。ちなみにシャマル先生は遅くまで寝てました。

「活きのいい鉄火巻きやな。シャマルは緑のイメージやから、むしろかっぱ巻き?」
「ヴィータのバインドがナイス過ぎるわ」
「へへ、ナイスだろ。もっと誉めろ」
「どっ、どうして巻かれて……! と、解いてっ、このバインド解いてくださぁいい……」

 なかなか起きないので、布団で巻いてかっぱ巻きにした。助けを求めるのをゆっくり観察した。



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