「そこに三人の魔法少女がいるだろう」

 クロノに連れられて管理局の建物に入ると、そんなことを言われた。見てみるとそこには、たし
かになのは・フェイト・はやての姿が。

「約一名、阿呆少女が混じっているようですが」

 そう言ってさした指を、ぷんすか怒ったなのはにかじられた。フェイトが抑え、はやてが笑う。
歯形をつけられてから話を進める。

「で、何? 魔導士図鑑とか作るの? 各地のトレーナーから金品巻き上げるの?」
「図鑑は図鑑だが魔導士ではない。誰か一人を連れて、野生動物をだな」
「じゃあこの全員で勘弁してやろうか」
「話を聞いてくれ」
「ぬぬ。しかしこの場合、ポケモンというよりむしろ、ドラクエの方が近いんじゃ」
「話を聞いてくれ」

 大事なことのようなので、ちゃんと話を聞くことにする。

「ふむぅ。はやては育成に時間が……なのはとフェイトは、既にニビジムで死亡フラグだし」

 どれを取っても一長一短、良いところと悪いところがあって悩ましい。
 そうして思案に暮れた結果、ついに俺は、完璧なる選択肢を見出した!

「クロノでよくね?」
「話を聞いてくれ」

 最初にもどる。





 という夢を見た。

「見所は回を重ねるごとにげんなりしていくクロノでした」
「なのはちゃんがあくタイプの技を習得している件について」

 べつに現実でも良かったのになぁと思いながら、ゲームボーイをぴこぴこいじる。
 もちろん中身はポケモンである。この冬でだいたいやりきった感はあるのだが、その完璧なデー
タどうしで対戦したいとはやてが言うのだ。やり尽くしていないシャマル先生やヴィータをギャラ
リーに、技や入れ替えの駆け引きや運ゲー具合(命中率的な意味で)を楽しむ。

「負けた。まさかあのタイミングで、だいもんじが外れるとは」
「ふっふー。ほな、今日のお好み焼き、お願いな!」

 実は夕食当番決めも兼ねていたりする。

「じゃあだいもんじ焼き作る」
「焼け目が大の字になるのか」
「しかしザフィーラだけ、点を加えて犬の文字に焼くことにしよう」
「できるのか」
「器用だな」

 シグナムに加え、ザフィーラ本人からも感心された。本当にやってみようかと思いはじめる。焼
き目でつくるのは難しい気がするので、生地にのせる海苔の配置で文字を書こうと思う。

「ところで垂らして広がった生地と、はぐりんたちのシルエットがすっごい似とる件」
「銀色のお好み焼きと申したか」
「んー、さすがにそれはなぁ……金のチャーハンなら食べるんやけど」

 それは漫画クラスのハイパー料理人に頼まないと厳しいかもしれない。

「あなたが落としたのは金のチャーハン? それとも銀のチャーハン?」
「金のチャーハン」
「嘘つきなあなたには全部ぶっかけまそぉい!」
「普通のチャーハン」
「正直なあなたには全部あげまっそぉい!」
「言うと思った」
「ただ投げつけたいだけだろそれ」

 などとアホらしい会話をしていると、次はおやつ決定権をかけてシャマル先生とヴィータが対戦
をはじめていた。

「……ん? 何でしょうか」

 それを横から見物していると、後ろからリインがやってきていた。

「……わ、私も」
「ああそうだ。『自分もやりたい』って、本の中から言ってたよね」
「本の? ……ああ、決戦前のことか。そうやったんか……なら、確かこのへんにカセットが」
「勝った! ……お。リインもはじめるのか?」
「う、うん。だから教えて、ヴィータも、シャマルも……お願い」

 シャマル先生とヴィータの勝負もついたらしいので、初心者様一名にポケモン講義を始める。

「最初に選ぶのはヒトカゲ以外がいいですよ。はじめのジムで詰まっちゃいますから……」
「その発言はリザードン使いのあたしに対する挑戦とみた」
「あとこのゲームの目的は、あくまでポケモン図鑑を完成させることだということを忘れないでください」
「強いポケモン作ることやと思っとったけど」
「オープニングイベント百回見直してきなさい」

 などと、ポケモンの知識についていろいろと語る。 

「ああ。それ、主人公の名前」
「あ……私の名前、でも……」
「ええと思うけど……ん? リイン、何嬉しそうにしとるん?」
「な、なんでもないっ」

 はやてだけは微妙に気付かなかったようだけど、自分の名前を入れられるのが嬉しかったんだと
思う。その後も楽しそうにプレイするリインの周りで、一つの画面に視線を集めて見守ってました。

「ライバルはレッドさんなので、ここは改名して『あかさん』にすることを推奨」
「その赤さんから毎回毎回お金を巻き上げる主人公の方が外道やろ」
「シャマル、この『なきごえ』って……」
「相手の攻撃力が下がります。最初に使っておくといいですよっ」
「あっ。きずぐすりない!」
「ちょっ……アカン。あと二回ひっかかれてしもーたら……おおおおおおお! 神回避きた!」

 プレイしてる本人も真剣かつ楽しそうだったが、それ以上に熱くなる俺たちだった。



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