そうだ、管理局行こう。

「なんだ。結局全員で来たのか」
「はやてもこいつも行くって言ったからな。あたしとザフィーラだけ居残りってのもアレだし」

 呼ばれたのはリインにシグナムとシャマル先生、あとはぐりんたちだけだったのだが、「来たい
なら何人でも来ていい」と言われていたので、結局八神家全員でお邪魔することにした。

「多すぎかね」
「そうでもない。君が来たのはちょうどよかった、コアの調査の途中結果があるんだ」
「ほほう」

 ということなので、はやてたちと別れる。リンディさんやフェイトは待合室で待っているとのこと
だが、コアの調査報告書は別の部屋に保管してあるらしい。

「電子化してあるものだと思ってたけど」
「デバイスに保管してもいいけど、それだと君が扱えないから」

 そんなわけで、男二人で別行動。

「ああそうそう。はいこれ、よかったら」

 連れ立って歩いているところで、ふと気がついた。荷物の中から大きなタッパーを取り出して、
そのままクロノに渡してみる。

「何だ? 料理?」
「お汁粉。クロノが知らなかったみたいなので、ためしに作ってみた。食べてみてよ」
「ああ。ありがとう……確認するようだが、甘いものか?」
「甘いものです。鍋に入れて、温めて食べる」

 みんなで食べてねと言ったところ、母に注意しなくてはと返してきた。

「相変わらずのようで」
「ああ。相変わらずだよ……」
「コーヒーに入れる砂糖をダイエットシュガーにするだけで大分違うと思うけど。どう?」
「普通の砂糖5杯がカロリーハーフの砂糖10杯になるだけだと思う」
「どっちもダメだわそれは」

 などと話しているうちに、目的の部屋にたどり着く。

「あれ、クロノ君? 待合室に行ったものと思ってたけど……」

 でもってドアを開くと意外なことに、エイミィさんが顔を見せた。

「おろ。エイミィさんこんにちは」
「あ、こんにちは。ずいぶん久し振りだね、いつからかな?」
「闇の書最終決戦後の、検査やら事情聴取やらかと……何?」
「いや。君がまともにあいさつしているのが新鮮だったから」

 エイミィさんに普通にあいさつしていただけなのに、クロノから理不尽ないわれを受けて憤慨する。

「これだから執務官は……」
「いや、意味がわからない」
「そうなのよ。クロノ君って、昔からちょっとキツいのよねー」
「エイミィ、話の繋がりがわからない」

 この三人の組み合わせというのも珍しいと言えば珍しいのだが、揃ったら揃ったでこんなふうに
よくわかんない感じになる。

「君は一体何をしにここまで来たのか」
「雑談でござる」
「正直だね」
「褒めるなよエイミィさん」
「君は照れるなよ」

 部屋の中を本棚に向かって歩き、目的の書類を見つける。当たり前だが俺は読めないので、クロ
ノとエイミィさんが概要を報告してくれることになった。

「つまりわけわからんってことですか」
「魔力を吸うとこと、特定条件で吐き出すことはわかったんだけど。あとは、構成物の組成だね」

 エイミィさんが読み上げるによると、途中経過ということ。概要はそんな感じらしかった。研究
材料としてはとても興味深い素材だと各方面から喜ばれているらしいが、まだ実験を繰り返してい
る段階で、成果もそこまで出ていないようだ。

「組成が隕石に似てる、っていうことはわかったんだけど……」
「さすがの君も、宇宙空間では生存できないからな。これは偶然だと思う」
「……あ、ごめん。隕石って、超身に覚えあるわ」

 前世で吹っ飛ばしてくれたアレのことを思い出して、クロノたちの話にとっさに口をはさむ。

「……」

 何だかクロノが頭を抱えはじめた。

「……君って、本当に地球人?」

 エイミィさんがそう言ったけど、異世界人には言われたくないやい。

「参考になるなら話しましょうか」
「……なら、後で頼む。今聞いても、僕が混乱すると思う」
「頭が固いからこうなる!」
「どう考えても君の所為だ」

 というのを最後に、報告会は終了となった。隕石云々はまた次回話し合うことにして、エイミィ
さんが持ってきてくれたお茶で休憩することになる。

「じゃあ、この報告書はしまっておくからね」
「さぁさぁ、管理局の機密書類はどんどんしまっちゃおうねぇ」

 エイミィさんが立つのに合わせて、ついつい懐かしいキャラの台詞を口走った。

「無駄にいい声を出すんじゃない」
「すごい声だね。誰かの真似?」
「しまっちゃうおじさん。ありとあらゆるものをしまっちゃう能力を持つ。脱出はできない」

 今度DVDを見せて、フェイトに紹介してあげようと思っている人である。昔は子供心に怖がっ
たものなので、魔法が使える人でも怖がるものなのか見てみたいのだ。

「と思ったけど、もうなのはで確認済みだったわ」
「おおよそ結果の察しはついてるよ」

 ずずず、と茶を飲みながら言うクロノだった。

「あの映像見たときは、びっくりしたなー……あーあ、私もナマで見たかった!」
「しまっちゃうおじさん?」
「そうじゃなくて、なのはちゃんの変装! あんなに可愛いなんて思わなくって」

 ヴィータが撮っていた映像、どうやらリンディさん経由で横流しされているらしかった。

「じゃあフェイトの編入がうまくいったら、ハラオウン家でまたパーティーしようぜ。料理持ち寄って」
「いいな。それだと、数カ月後になるか」
「やけに自信満々でござるなぁ」
「身近で見ているからな。熱心に勉強しているよ」

 兄ちゃんの顔になるクロノの表情を見て、どこか懐かしい気分になる俺だった。

「今度は参加したいなぁ……」
「参加しない子はしまっちゃおうねぇ」

 移動するまでゆっくりしてました。



前へ 目次へ 次へ