「『そこに三人の魔法少女がおるじゃろ』」

 ヴィータがポケモンをまた最初からやりはじめた(主にイーブイ目的)ため、最初の場面でふと
思い付いたことを口にしてみた。

「好きなのをやろう。さあ、選ぶのじゃ!」
「『3つのインテリジェントデバイス』の方が語呂がいい気がする」

 確かにそうだが、デバイスから人が出てくる怪奇現象が発生するので却下。

「もちろんボールの中身はなのはとフェイトとはやてで」
「モンスターボールからなのはが出てくるとか。まるで違和感ないって」
「その代わりジムリーダーは全部俺」
「違和感ありまくりやな」

 横からはやてが加わってきた。

「まず最初のジムは岩タイプなので、とりあえずばくだんいわを繰り出すとしよう」
「勝てる気がせんわ」
「挑戦したくない」

 とかなんとかうだうだと話す。要するに退屈で、なんだか刺激に飢えている感じ。

「クロノんとこ行くのが本当待ち遠しくなってきた」
「だからといってクロノトリガーを最初からはじめるのは何か間違えていないか」

 言っているうちに懐かしくなって、思わずニューゲームではじめてしまった。ザッフィーに横か
ら言われたけど聞こえないふりをする。

「ああああっ!」

 とかやっているとキッチンの方から、シャマル先生の悲鳴が上がった。なんだなんだと集まる。

「たっ、た、大変です! カレー粉が、カレー粉がっ」
「カレーパンになっちゃった!」
「それは驚きますよ……」
「さすがに魔法だろそれ」

 思わずネタが口から出てきた。しかしシャマル先生の様子からして、マギー審司っている場合で
はなさそうだ。話を聞く。

「いっ、今気付いた! マギとシンジって両方エヴァネタじゃね!?」
「話聞けよ」

 話を聞く。

「買い忘れましたか」
「はい。カレー粉切らしてるの、すっかり忘れてました……」
「カレーからカレー粉抜いてみるのも、それはそれで乙かもしれへんなぁ」
「せめてデミグラスソース入れてハヤシライスにしようぜ」

 しかし本日のカレーは、はぐりんたちのリクエスト。それにみんな楽しみにしていたので、今さ
ら変更するのは気が引ける。

「行ってきま」
「行ってらっさい」

 とりあえずおつかいに行ってきます。

「私も行こう。少し体を動かしたい」
「そう? ここんとこ屋内続きだったしねぇ」

 雪降ってなくてよかった、などと話しながら外に出た。
 でもって時間がないからということで、ザッフィーが背中に乗せてくれる運びになる。

「おっしゃあアマ公! その『翠屋』ってところまで、大神様の脚でひとっ走りでェ!」

 例によって街中では真っ白な毛並みに変装しているので、思わず前々からやりたかったキャラク
ターを真似てみた。誰がアマ公だ、と一蹴された。

「それにしても、よくそのしゃべり方ができるものだ。原作そっくりではないか」
「むしろこのフニャフニャ喋りを解読できるザッフィーの方が驚きです」
「何となくだ。あと行き先は、翠屋ではなくスーパーだ」
「御意」

 無駄口をやめ、とりあえず人気のない裏道を急いで走りはじめた。四つの脚で力強く疾走する感
覚は、やはり何度乗ってもいいものである。風は冷たいけど。

「何をきょろきょろしているんだ」

 大通りに入ってから下ろしてもらい、目立たないように歩いていると、道路を見て車を探してい
たのがザフィーラに見つかった。

「ちょっとアリサ車を探してて。いないならまた今度かな」
「……また下らない事でも企んでいるとみたが」
「いや、これだけ貼ってみたかった」

 「ツンデレが乗っています」と目立つように書かれた、黄色いステッカー(マグネット式)をひ
ょいと見せる。

「活字みたく文字を塗るのが大変でした」
「無駄に精巧だな」

 無駄に、の部分を強調しているあたりから、下らないことをしているのがよくわかると思います。

「しかしこれでは、後ろの運転手がまともに運転できなくなりそうだぞ」
「なぬ。それはマズい」

 交通事故になっては大変なので、残念だが計画は取り消しにする。

「フェイトって将来ミッドの免許取るんだよね。『脱ぎ魔(♀)が乗っています』」
「野次馬の車に囲まれて動けなくなるな」

 しかし車の中では脱がないだろうと言われ、それもそうかと納得する俺だった。

「しかし思うのは、黒塗りの高級車の場合、普通に若葉マーク貼った方が面白いかもしれない」
「悔しいが否定できん」

 少し歩くと人の姿がちらちらと見えはじめたので、話をやめててってけてってけ歩くのでした。



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