元旦は当たり前のように朝寝坊をして、朝ごはんだか昼ごはんだかわからん時間になった。
 とりあえず明けましておめでとうをしてから、お雑煮とおせち料理をいただく。これがなかなか
美味しいのである。昨日から頑張ったかいがあるというものだ。

「醤油味の雑煮もなかなか悪くないが、わざわざ中の餅を出して醤油つけるのはどうかと」
「美味しいんやもん。やる?」
「お断りします」
「さよか」

 とか、食べ方についても話しながらうまうまする。雑炊はもちも野菜も入ってるので、これ一つ
で結構お腹いっぱいになるのだ。

「リインはちゃんとお餅を食べられるだろうか」
「ば……かに、しないで。食べ、られる」

 口調からわかる通り、早くも箸にくっついた餅に悪戦苦闘するリインである。

「黒豆に田作りに栗きんとんですか」
「……う、うるせーな。いいだろ別に」

 でもって向かいのヴィータは甘いもの尽くしだったけど、それだけじゃなく美味しいものはあれ
これと。
 紅白の蒲鉾とか煮しめとか。伊達巻もあるし数の子もあるぞ。

「数の子と申したか」

 はやてが何やら反応した。

「はやてちゃん? 数の子が何か……お、おいしくなかったですか?」
「ああ、そうやなくてその。第三期の登場人物がやな」
「例のナンバーズのことでござるよ」
「ああ。敵になるやつだっけ」

 数多すぎて覚えらんないやつだよな、とヴィータが言った。これからのことで俺が知ってること
は色々と話してあるのだ。覚えにくいというのは確かに否定できないけど、その扱いはどうなんだ
ろう。

「ウインディさん、でしたっけ」
「シャマル先生ちがう。それポケモン混ざってる」
「あ。ガーディがようやくかえんほうしゃ覚えたんだった。後で進化させよ」
「おっとっと、というのもいた気がするな。食べたくなってきて困る」

 既にもてあそばれている数の子たちだったが、これで戦い挑まれたらどうなるのだろうかと心配
になる。会うのはみんな楽しみみたいだけど。

「チンなんとかってのもいたよね」

 乗っかってネタを振ってみたところ、まだ何も核心を突いてないのにはやてとヴィータにべっこ
んぼっこんにされた。顔がちょっと人には見せられない状態になった。ネタにしても捻りがなさす
ぎたかと反省する。

「あとクアットロってスカット□に似てるよね。製作者が製作者だけに」
「これはひどい」
「お前それはひどいって」
「親が親なら子も子ということか」
「なんといってもスカの名前がアレやからな」

 今度は親子要素をも盛り込んでみたところ、ボッコにされることはなかった。これからはネタを
振る時も吟味しようと決める。

「スカット□……?」

 首をかしげる純粋無垢なリインだった。やっぱり許さんと言われていろんな人にぶっ飛ばされた。
理不尽極まりないと思った。





「年賀状来てた」

 おいしい料理でお腹いっぱいになった後、ヴィータが郵便受けを見に行って、手紙の束を手に戻
ってくる。

「ちゃんと年賀状くれる石田先生の優しさに涙が出そうだ」
「あ、これ……学校の先生から? 私、学校行けてへんのに……嬉しいなぁ」
「なのはからだ。すずかは……『干支に猫年があったらいいのに』だと」
「何で猫年だけあらへんのやろな。言われてみると不思議やわ」

 辰なんて現存しないのに。巳や酉なんて哺乳類ちゃうやん。などと、はやてと十二支の不思議を
語り合う。

「あたしは卯年だな」
「自分で決めるものじゃねーです」
「わかんない場合はいいじゃんそれで」
「それもそうか。まぁいいや」

 横から来たヴィータにあったかいお茶を注いでやる。

「冷たい水がいい」

 注ぎ終わってから言うあたりに悪意が感じられた。

「栗きんとん全部はぐりんたちに食べさせてやることにしよう」

 やめろよやめろよと超必死に訴えられた。気に入ったのか、明日も食べると言っていたのである。

「……」
「どうしたん? 何かゆーとる?」
「スライム年はないの? だって」

 再び席に戻ると、はぐりんたちが質問してきた。ないって返すと、三匹揃ってしょんぼりしょん
ぼりな感じになる。

「『ドラゴン年はあるのにずるい』ってスタスタが」
「お前それ絶対嘘だろ」
「いや本当だって。ほらゆうぼうが頷いてるし。首縦に振ってるし」
「えぇぇ……いや、でも、うーん……」

 なんだか納得がいかなそうなヴィータだった。

「そういえば、例の数の子も十二人!」
「スカット□は4番だから……卯ですか。イメージに合わん」
「もうすっかり変態性癖持ちって印象ついちまったしな」

 軽く引いてみせるヴィータだった。



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