「かき揚げうめぇ」
「エビ天がええってゆーとったくせに」

 夕飯の時間。大掃除も何もかも終わったので、みんなでゆっくり蕎麦をすすって一年の終わりを
待つことに。ずるずるずる。

「……将来、無事第3期に突入したら、『絶対に笑ってはいけない機動六課』をやりたい」

 大晦日にやってるテレビの番組を思い出して言ってみた。

「笑ったらフェイトが鬼殺しザンバーケツバットで」
「何だその番組は。観たすぎるぞ」
「新任のジュウシマツ部隊長を紹介せな!」
「あたし耐えきる自信ない」

 割と盛り上がった。

「おかわり自由やっけ。おー、おいもの天ぷら、美味しいなぁ」
「天ぷらだけで食ってるやつがいる。ずるい」
「あ、いえ。たくさんありますから大丈夫です。どんどん食べてくださいねっ」

 天ぷら担当のシャマル先生だったのだが、ニッコニコの笑顔で上機嫌そうだった。評判がいいの
が嬉しいんだと思う。

「シャマル先生もメシマズの汚名挽回ですなぁ」
「汚名返上ですよぅ……」

 なのはなら一発で引っ掛かりそうなものだが、こういうトラップには対応力の高いシャマル先生
だった。
 とか思っていると、ふと視線に気が付いた。なんだろうと目を向けると、シグナムがこちらを見
ている。

「何でござる?」
「あ。いや……大したことではないのだが」

 少々戸惑ってから、こほんと咳払いをして、

「気になってな。ゆで加減はどうだ? うまくいったとは思うのだが」

 実は蕎麦の茹で上げ担当はシグナムが買って出たのである。自分も家事に加わりたいとのことだ
った。急にどうしてかと聞くと、なぜかお前のせいだと言われるのだが。

「超うめぇ。ていうか、駄目だったらもうヴィータにぶっかけて嘘です冗談です」

 不穏な気配をしたヴィータがガタリと席を立ったので、必死に謝る。

「美味しいよー。上手くできとる!」
「そ、そうですか……いや、聞くまでもありませんでした。将たるもの、この程度はできて当然」

 うんうんと頷くシグナムだったが、口調とは裏腹にどこかほっとしたというか、嬉しそうな様子
だった。

「……」
「自分も作ってみたそうなリインだったので、今度チャーハンの作り方と投げ方を仕込もう」
「やめろ」

 机の下でザフィーラの足に引っ掛かれた。爪がけっこう痛かった。





 日付替わった。

「あけまして」
「明けまして」

 こたつの向かいに座るはやてと、ぺこりと一礼。

「一年終わりましたなぁ」
「変な一年やったなぁ」
「まさか死んで生き返って臓器吹っ飛ばすことになるとは」
「一人暮らしだったのがあっと言う間に二桁なんやけど。はぐりんズ入れると」

 とかやっていると、携帯が鳴った。俺のもはやてのも。

「勝手に着メロを笑点のテーマにするなと何度も……はやてのあけおめメールですか」
「あー、そっちからも……同じこと考えとったんか」
「ちょっと待て。立て続けにメール来た」
「あ。こっちも、アリサちゃんとなのはちゃんから。すずかちゃんからも来とる!」
「何故アリサたちがアドレスを……あ、なのは経由だって」

 明けましておめでとうラッシュきた。ちょうどこっちも送ろうと思っていたので、しばし返信に
時間を使う。今度遊びに来てねと言うすずかとか、アドレス教えときなさいよと言うアリサとかに。

「親指がつる」
「こっちもや」

 一仕事終えて、ふぅと一息。

「これをあと十回か……StSまで先が長い」
「わたしたちはまだ登り始めたばかりやからな。このはてしなく長い空白期をよ……」
「リリカルなのはに打ち切りフラグが立ったようです」
「プリンセスハオと申したか」

 とか話していたところ、明日のために今日は寝る! な流れになった。

「こたつで寝たい」
「風邪引いてまうよ?」
「毛布持ってきた」
「もろた」

 一枚はやてに取られた。二枚もってきてよかった。

「?」

 置いといたもう一枚をいつのまにか使ってるリインが無邪気に首を傾げていた。ちくしょう。

「ちょっと入れて。さむい」
「半分だけ入ることを許可するッ!」

 それだと風邪を引くというより、むしろ何かのウイルスにやられそうだ。あとけっこう寒いので、
頼み込んで全身入れてもらった。

「あ。私もはいりたい」
「はやてちゃん、私もいいですか? 毛布持ってきましたしっ」
「……私も、やっぱりそちらに」
「ええよー。みんな一緒に寝よ!」

 全員寄ってきた。てんとう虫の越冬みたいな八神家だった。

「ザフィーラの枕が超あったかいんやけど」
「はぐりんが乗っかってきて寝苦しいんですが」

 平和な大晦日の夜でした。



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