「男は俺だけひとりぼっちか」

 パーティーが終わったので、あれだけ賑やかだった八神家にも落ち着きが戻ってきた。なのはが
残ってるけどもうすぐ帰るらしいし、もともとザッフィー以外に男はいない。ひとりぼっち。

「サノバビッチ」
「ダブルダッチ」

 いつも通りのはやてとヴィータだった。ストイコビッチとか返そうと思ったけど、字数が合わな
いのでやめといた。

「しっかし暇だ。暇すぎるあまり、隣でうとうとしてるシャマル先生に落書きしたくなってきた」

 ソファでくつろいでいるのだが、隣にはシャマル先生が座っていて、目を閉じてすぅすぅと寝息
を立てていた。

「目玉増やして天津飯にしようぜ」
「額に肉が定番やろ」
「肉じゃがならぬ肉シャマと申したか」
「どー考えても不味そうだな」

 好き放題言ってみたのだが、一向に起きる気配がないシャマル先生。料理に家事に大活躍だった
ので、やっぱりお疲れみたいである。

「しゃ、シャマル先生をいじめちゃダメ、ダメーっ!」

 同族をかばう生態があったらしく、必死の様相を呈するなのはが後ろから襟をぐいぐい引っ張っ
てきた。相変わらずへなちょこなんだけど、今回は首がしまるので思いのほか苦しい。

「あれ。なのはがシャマル先生って呼んでる」

 ヴィータがふと気付いて言う。

「え? あれ。どうしてだろう? 今までは、シャマルさんって……」
「そういえば、いつからだったっけ。先生ってついたの」
「せやなぁ。考えてみると、なんでやろ。先生って言っても違和感あらへんのは」
「俺が言いはじめたんだと思いますが」

 またお前か、という感じに見られるのはもう慣れた。

「なんで先生。教員免許でもとってたのか?」
「そんなこたぁない。でも将来、そんなフレーズで呼ばれるはずなんですよ」
「シャマル専制」
「八神家が独裁されてる件」
「3年A組」
「革ジャン先生!」

 はやてが懐かしいネタを振ってきたので、そこからファンタのCMの話題で盛り上がった。

「しかしとりあえず、額に目玉は書いておこう。超リアルに」
「ハガレンのお父様みたいにしようぜ」

 想像してしまったのか、なのはが涙目で怖がった。超必死に止めてくるので、手元が狂って実行
できなかった。





 なのはが帰った後、夕飯のお好み焼きをうまうましてからふと気付いて、食器棚の上から紙袋を
取り出す。

「何だよそれ」
「クリスマスプレゼント」
「へ? 絵じゃなかったん?」

 はやてたちにはクリスマスに絵を贈ったのだが、絵以外にもプレゼントがあったのをすっかり忘
れていたのである。

「はぐりんたちにもあるから。ほら、欲しがってたビー玉」

 用意していたのを渡してあげると、超嬉しそうにころころ転がして遊びはじめた。シグナムやザ
ッフィーもなんだなんだと見にきたので、ちょうどいいから渡しはじめる。

「おおー。新しい枕! ありがとな!」
「わぁ、新しいミトン……はやてちゃんっ、似合ってますか?」
「あたしのが腹巻きってのはどういうことだコラ」
「待て腹巻き違う。それ枕カバー! ほら、はやてとおそろいの枕!」

 ザッフィーには毛繕い用のブラシとか。
 リインには綺麗な髪どめのゴムとか。

「なのは用に知恵の輪もあったのに渡せなかった」
「……それはそうと、これは本当に私宛てなのか」

 必死こいて解かせようとしたのに、と思っていると、カービィのぬいぐるみを手にしたシグナムが問
いかけてきた。

「前好きそうな感じだったので選んでみたんですが。どうでしょうか」
「いや、構わないのだが……し、将としては、相応しくないと言うか」
「今さら将って(笑)」

 腕を極められて痛かった。

「いいじゃないですか、リーダー。似合ってますよ?」
「シャマル。髪の色を見て言うんじゃない」

 よくよく見てみると、割と色彩的にお似合いだった。

「じゃああたしがもらってやる」
「い、いらないとは言っていない!」

 ヴィータが言うとかばってみせた。気に入ったみたいだと思ったけど、口にすると否定されそうな
ので言わない。

「ていうか忘れてたんだけど。あたしたちからもプレゼントあった」
「おおおお。何という僥倖……何これ。重いんですけど」
「中華鍋だ。フライパンばかりだった気がしたのでな」

 よりチャーハン作りの腕に磨きがかかりそうな俺だった。

「次の標的はなのはで」
「了解した」

 ヴィータには割とサドっ気があるんじゃないかと思った。




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