午前中は騒いだりせず、昨夜よりもまったりと遊ぶことになった。でもってお昼になるとお腹が
減るので、あったかい蕎麦やらうどんやらをみんなですする。うまうま言って幸せな気分になる。
 体も温まったところで、なのはが雪だるまを作ろうと提案してきた。フェイトと一緒に作りたい
らしい。寒いので後から行くと言うと、フェイトとユーノの手を引いて行ってしまった。後で雪玉
持って殴り込みに行ってやろうと決める。

「ん? もう戻って来たのか……おろ」

 しかし五分と経たぬうちに、玄関でチャイムが鳴った。
 なのはたちかと思ったけど、それなら別にチャイムを押す必要がない。じゃあ誰だろうと思って
いると、応対したシャマル先生が連れて来る。
 グレアムのじっちゃんとリンディさんでした。チーズケーキならぬモスバーガー、じゃなくて、
えっと、ぬこ姉妹もいるぞ。

「えっと……マックと、ドナルドだっけ」

 あの道化師って本名はロナルドなんよ、とはやてがトリビア的な知識をヴィータに教えていた。
でもってぬこたちは顔を赤くして、何やら悔しそうな表情になる。
 しかしちょっと見ていると、よゆうの表情(笑)を浮かべてこちらを見てきた。

「ふっ、ふん。そうやってられるのも今のうちよ。こっちにはアンタの天敵がいるんだから」
「別に病気にはなっていませんが」
「ほんのちょっぴりだが、栄養補給させてもらったぜッ!」
「え……え? え、栄養?」

 俺の振りとはやての追撃を受け、早くも困惑気味の猫姉妹だった。俺とはやての間に生じる圧倒
的な破壊空間はまさに歯車的ネタ嵐の小宇宙。

「じっちゃんもリンディさんも。おはようございます」
「ええ、おはよう。昨日はちゃんと寝たのかしら?」
「お、おはようございますっ」
「あ、ああ。おはよう」

 俺とリンディさんの隣で挨拶するおっちゃんとはやては昨日の一件があったからか、なんだかち
ょっとぎこちない感じだ。しかしここまできたら、時間が解決してくれるだろう。と言う感じに思
い直して、とりあえず来客用のコーヒーを用意しておく。

「あ、お前。わたしたちから、プレゼントがあるんだけど。もちろん受けとるよね?」
「…………」
「あれ……え、え!?」
「なっ、なぁ! な、な、何してるのっ!?」

 目の前にあるふさふさの二本の尻尾が俺を魅了して仕方がないので、両方を糸で縛ってハートを
つくるという形で尻尾愛を表現してみた。ぬこ姉妹が慌てた。

「なのはにも生えてこないかな」
「なのちゃんに大猿フラグはNO THANK YOUや」
「ほっ、ほどけっ、ほどきなさいこの馬鹿!」
「あ、ごめん。かた結びしちゃった。ほどき方とか超わかんない」
「にゃっ、にゃぁぁ! ほどいて、ほどいてよーっ!!」

 相当嫌みたいで、にゃーにゃー抗議する姉妹だった。鳴き声が割と可愛いので、今度録音してな
のはに真似させてみようと思った。





「ああ、まずいなあ。腸が腹から飛び出そうだなあ。よりによってチーズケーキとはなあ」
「お……お、お前ぇっ……!」
「これは死ぬ。死ぬほどまずい。ここに食後の三矢サイダーがあったら、即死する、かも」
「かっ……かも、じゃない。かもじゃないっ!」

 その後姉妹からチーズケーキが振る舞われたので、外にいたなのはたちも呼び戻して皆で食す。
 俺はチーズケーキが嫌いなことになっているので、ぬこ姉妹のために不味そうにぱくぱく食べて
みた。しかし完璧な演技にも穴はあるらしく、どうしてか情報の間違いに気付かれたらしかった。

「うまかった」
「……美味しかった」

 とても満足そうに、ヴィータとリインがニコニコしていた。怨めしそうに見つめる猫二匹。

「……もうこいつらなんて、ぜったい信じるもんか」
「先にこっちから泣かせてやる……!」

 ターゲットが俺からヴィータたちに移ったらしい。喜ばしく思います。

「ヴィータはガトーショコラが大嫌いだよ?」
「そうそう。プリンもアレだな。ダメだ」
「いちごショート、苦手」

 うるさいうるさい言う姉妹でした。
 とか話していると、はやてにグレアムのおっちゃんが何やら話しかけているのが見える。
 おっちゃんは何やら紙袋を取り出して、はやてに渡して見せているらしかった。席からだと中身
がうかがえないので、後から直接訊いてみた。

「魔法の教本ですか」

 グレアムのおっちゃんが頷いた。昨日、はやてが頼んでいたのだとか。

「お節介かもしれないが……選択肢のひとつだと、私は思うよ」
「将来どうするかはわからんけど、昨日なのちゃんがお布団運んどったの見て、便利やなーって」

 あとは第三期対策やな、と小声でこっそり付け加える。

「魔法はわからんのでお好みでどうぞ」
「今ので思いついたんやけど、今日の夕飯、お好み焼きでええ?」
「あ、まぜる! あたし、生地まぜる!」
「青のりがありませんでしたね。後で買いに行きましょっか」
「決まりやな。えっと、豚肉はあるし……ああ、紅しょうがなかったわ」

 いつの間にか話が冷蔵庫の中身になっているのは驚愕すべきかせざるべきか。と思いつつ、温か
いお茶を一口。

「もっとぐいぐい勧誘するかと思ってました」
「はやての意志に任せることにしたよ。管理局の力になって欲しいのは本音だがね」
「本人は料理に使うのを楽しみにしてそうな気が。リインだと火力が強すぎるし」

 最近料理のお手伝いをしたがるようになったリインであるが、コンロが足りないときに加熱をお
願いすると、張り切ってがんばりすぎてしまい、食材が発火する始末。今は地道にはやてのを見て
習得を試みているところである。

「そういやはやて、リインと融合したらメタルはやてになれるんじゃない?」
「ついに私にもスマブラへの出演依頼が……!」
「あっ、あの……た、多分、ジャケットがメタルになるだけ、だと思います」

 ちょっと悔しそうなはやてだった。

「イオナズン使えればもう十分だと思うけど」
「基本からやるのー。私も空飛んでみたいやん」
「空中からイオナズン爆撃か。強そうだ」

 強いどころか、チートなんじゃなかろうか。
 と思ったけど、似たようなのになのはがいた。しかしこっちは何と言うか、どうも強くなさそう
なんだよなぁ。

「だってなあ。なのはだしなあ。戦ってるよりケーキ食ってる方が似合ってる」
「誉めてるのか誉めてないのか、どっちなんだろ……」
「どっちかっつーとナメてるよーな」

 抗議の視線を向けるなのはだった。

「ほっぺたにケーキついてるよ?」

 真っ赤になってわたわた慌てるなのはをニヤニヤしながら観察したところ、俺だけ後で文句言わ
れた。贔屓だ。




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