話がついたらしく、はやてたちが帰ってきた。こちらの話は終わっていたので、会はなだらかに
再開していた。はやてに気付いたなのはがとてとてやって来るのを皮切りに、またゲーム大会をし
ようという流れになり、再び賑やかになっていく。
 ちらと見たおっちゃんの表情が、前よりやわらかくなったような気がしないでもなかったので、
きっとうまく収まったんだろうと思う。
 その後少しして、リンディさんとおっちゃん、ぬこ姉妹は帰っていった。はやては残念がってい
たが、また明日来るそうな。それを言うときぬこ姉妹が何やら不敵な笑みを浮かべていたが、さて
一体どうしてでしょう。

「明日コーヒーの豆買いに行くぞ」

 質問してみるとヴィータがわくわくした様子で答え、リインがこくりと頷く。だいたい察した。

「ぬこたちともちょっと仲良くなったみたいで」
「お陰様でな。お前の話で盛り上がったりした」
「何を話したのかとても気になるところですが」

 教えねー! と笑われた。今日この後の麻雀では、山越ししてでも狙い撃つことを決める。

「で。おっちゃんの本音は聞けましたか」

 しかしこいつは重要なので、念のために聞いてみた。

「ん」

 はやてが答えてくれた。ならまぁいいか、と安心する。

「はやてちゃん、何のお話してたの?」

 ビンゴの景品の大きなくまさんをもふもふしながら、パジャマ姿のなのはが尋ねてきた。おっち
ゃん関係の話はクロノも興味があるらしく、視線がこっちを向いている。

「なのちゃんはへなちょこという、オリーシュ情報の検討やな」

 もうへなちょこでいいもん、となのはが拗ねた。シャマル先生がよしよししてあげていた。

「麻雀すると腕力つくよ? 拳圧で卓が飛ぶくらいに」
「親指の握力で牌が削れてまうように」
「振り込ませるだけでダメージ与えたりもできるぞ」

 出鱈目を振ってみたところ、はやてとヴィータが便乗する。

「…………」

 シャマル先生にしがみついて怖がるなのはだった。あんまりにも可哀想になったので、嘘だよ冗
談だよと慌ててなだめる俺たちだった。





「布団を敷こう。な!」

 とはやてが言いはじめたので、とりあえず寝床の準備はしておくことにした。どうせずっとテレ
ビの前にいることが確定しているので、そこに敷けるだけ敷こうということに。

「ところでけーとくん、普段はどこのお部屋で寝てるの?」
「精神と時の部屋」
「寝苦しそーだな。時間の節約にはなるけど」
「八神家が天界になっとる件」

 とか話しながら、布団を次々と運び入れる。昼間に干しておいたふとんはふかふかで、もうそれ
だけでぐっすり眠れそうだった。遊ぶだけ遊んだらぽかぽかの布団に潜り込む。これを贅沢と言わ
ずして何と言う。

「西という」
「北という」

 はやてとヴィータは麻雀したいらしかった。

「おおお! ユーノとなのはがマスターヨーダに」

 ヴォルケン主導で進んでいた運搬作業だが、子供は子供で手伝いに参加していた。していたのだ
がふと気付けば、二人は魔法で布団を浮かせてふわふわと運んでいる。ずるい。

「なのは、いつの間に?」
「最近覚えたの。一人で練習してたんだ」
「ずるい。ずっこい。なのはのくせに」
「ずるくないもーん」

 なのははしてやったりの表情をして、そのまま布団を下ろした。三つ折りを広げてぱんぱんと叩
き、そのままうつ伏せに体を預けてみせる。

「あう……だめだよ、これ……眠くなっちゃう」
「日本人でよかったわぁ」
「これはすごいな。確かに、ぐっすり眠れそうだよ」

 早くも布団の魅力に取りつかれはじめたクロノだった。ゆっくりしたかったらいつでもとはやて
が言うと、いつかまたと返した。まんざらでもないみたい。

「スト2やるやつ! 早いもの順!」
「あっ。やるやる! フェイトちゃんも、一緒にやろ?」
「え? わ、わたし、やり方が……」
「あたしたちがハンデとして足でやればいいだろ」
「無理だよそんな……けーとくんじゃないんだから……」

 いつの間にか俺が曲芸師扱いされていることに軽く驚愕しつつ、今回もまた観戦にまわる。ちょ
うど美味しいコーヒーが入ったところなので、テーブル席についてお砂糖とミルクでいただいた。

「こっ、今回は、今回は自信ありますよ? 本当ですよ?」

 とシャマル先生が必死に勧めるので、お茶菓子のクッキーも恐る恐るいただいてみたが、今回は
これがなかなかいけた。
 という風に伝えてみると、すっごいニコニコしてリインにも持っていったシャマル先生。市販の
クッキーに溶かしたチョコをかけてみたらしい。恐らく桃子さんに、チョコの湯煎をやってみよう
と言われたのだろう。

「チョコをそのまま火にかけていたあの頃が懐かしい」
「あれはトラウマものやろ……見たとき思わず悲鳴が出たわ……」

 その影には哀れな食材と悲惨な歴史があったことを忘れてはならない、とか思いながら、ひたす
ら嬉しそうにお菓子を配るシャマル先生を眺めた。

「終わりましたなぁ」

 ふと、ソファのはやてが口を開いた。

「終わりましたか」
「謎がすべて解けた感じやな」
「じゃあこのまま眠りの小五郎いってみようか」
「残念。麻酔針は間違ってはぐりんに刺さりました」

 机の上ではぐりんが嫌そうな顔をした。どくばりにはいい思い出がないのかもしれない。

「とりあえずお疲れさまでした」
「とりあえずお疲れさん」
「さてこれから十年間、まずは何をしましょうか」

 第三期まで長いので、何をして過ごすかは割と悩ましいところである。とりあえずなのはを高校
までは連れていくべく活動する予定だが、始動はもうちょい先になるし。

「足治して温泉とか夏休みには海とか!」

 でもってあれもこれもと言いはじめる。やりたいことが沢山あるらしい。

「ていうか、管理外世界にも温泉とかあるんじゃね。クロノ、ユーノ知らない?」
「? 温泉とはなんだ?」「えーと、火山がないとできないみたいだから……」


 とか話しながら、やりたいことをぽんぽんと話していく俺たちだった。

「ポン」
「ポン」

 はやてとヴィータは麻雀したいらしかった。




前へ 目次へ 次へ