パーティー3次会開始と同時にディナータイムが始まったわけだが、それもどうにか無事に終了。
ぬこたちとヴィータやリインの間に流れる雰囲気はお世辞にも良いものとは言えなかったものの、な
んとかバトル開始は防がれた。兵糧攻めが効いたらしい。

「久しぶりですね。そういえば」
「君と会うのも、そうか。久しぶりになるんだな」

 大人組には食後のワインやらシャンパンがふるまわれ、子供たちはジュースを飲みながら談笑中で
ある。そんな中グレアムのおっちゃんが一団から外れていたので、隣の椅子に腰かける。

「さっきのプレゼント、ありがとうございました」
「ああ。つまらないものだが、まぁ受け取ってくれ」
「ありがたく。後でこちらからも、皆のぶんのプレゼントが」
「ほう」

  とか言ってると、何やらアリサがいぶかしげというか、「こいつ変なものでも食ったんじゃない
か」と言わんばかりの目で俺を見る。

「……何者よアンタ」
「何者って何ぞ。みんなの味方のオリーシュですが」
「あんな丁寧な話し方、アンタにできるわけないじゃない」
「アリサお嬢様。まことに残念ながら、今ご覧に入れておりますのが私めの実力にございます」

 すらすらすらと言うと、アリサは何やら精神攻撃を受けたような苦悶の表情を浮かべた。頭を抱え
て後退りしてから、逃げるように退散する。

「局員にもそうやって、付き人の振りをして誤魔化していたな。相変わらずだ」
「この面子だとこの口調のことが多かった。癖になってたかも」
「こいつがどこでこんなの身に付けたか不思議でならないんだけど」
「アリア、うるさい」
「ロッテだよ……」

 クロノと話していたロッテリア、ならぬ猫姉妹たちまでもが近くに来ていた。向かいの椅子を足で
押してやる。

「行儀悪ぅ」
「うるさし。魚の形のクッキーあるけど」

 冷蔵庫から出してやると、さくさくさくとおいしそうに食べはじめた。夕食も結構な量があったの
だが、この様子を見るとまだ食べられるみたいだ。その様子を見ながら俺も席に戻る。

「それよりふたりとも、気持ちの整理はついたのか」
「……つくわけないでしょ、バカ。空気乱しすぎないように合わせてるだけよ」
「ロッテリアの呼称が出てから、一気に場に馴染んでったからいたいいたいいたい」

 嫌なことを思い出させたらしく、テーブルの下で両足をどすどす踏みつけられた。

「まぁリインたちも、後できちんと謝りたいって言ってたから。話は聞いてあげてください」
「わかったわよ……」
「ああ、そうだ。はやての件はいつごろ?」
「……折を見て切り出すよ。そのために来たのだからな」
「その時はぜひ本音でお願いします」
「ああ……わかったよ。本音でな」

 俺の言葉に対し、グレアムのおっちゃんは静かに答えた。ついと傾けたグラスの中には、もう残り
がわずかだった。

「また何か、秘密の会議でもしているのか。君は」

 と、そこにクロノが現れた。俺とグレアムのおっちゃんはそうでもないんだけど、ぬこ姉妹があた
ふたと慌てる。

「おっ、お、思い出話だよ。うん」
「そうそうそう。たとえば昼寝から起きると、寝ぼけてお互いのしっぽをエサと勘違いしt」

 二人して顔を赤らめて口をふさぎ、やめろやめろクロスケにそんな話するんじゃないと怒られる。

(あとで詳しく)

 姉妹の向こうではクロノが不敵な種類の笑顔を浮かべて、そんな風に目で言っていた。俺はちらり
と視線を投げかけてから、こっそり親指を立てて答えるのだった。





「今のうちになのはに麻雀教えといた方がよくないか」

 パーティーも盛況なので、今のうちに夜のプランをはやてと一緒に考えることにする。コーヒーを
淹れて少しずつ飲みながら、ソファに座るはやてに相談する。
 せやな、なるほどー。とはやては言ったが、でもまぁ今日参加するのは無理かもしれんけどな、と
付けくわえた。麻雀はシャマル先生にもやってもらってるんだけど、これが何ともよわっちいので物
足りないのだ。俺とかはやてとかヴィータとかが主に。

「はやてちゃん、まーじゃんってなあに?」

 聞きつけたなのはがソファの背中からひょっこり顔を出して、はやてに向かって尋ねてきた。

「んー? えーと。鳴いて点数を競うゲーム、やな」

 略しまくりのはやてだった。

「にゃーにゃーとか、きゅーきゅーとか?」
「そうそう。そうなんよー」

 何やら勘違いするなのはだった。はやてがすっごいニヤけてた。

「……それ、けーとくんもやってるんだから、絶対そういうゲームじゃないよね?」

 しかし即刻バレた。ずいずい詰め寄られて問いつめられて、はやてはしどろもどろに弁解した。
 とかやっているうちに、足が疲れたのではやての右側に座る。つられたようになのはも動き、逆側
の左側に腰かけた。
 そうしてそのまま、今日の夜どうしよう的な話題に移る。普段の就寝は何時だとか、ねぇねぇさっ
きのマージャンって何とか。最初は寝なきゃだめだよとか言ってたなのはだけど、聞いてみると「も
ういいや。今日は遊ぶことにしたもん!」とのこと。八神家に最も出入りしてる人の筆頭なので、そ
の方がこちらも遊びやすくて嬉しかったりする。

「今日こそあのはかいこうせん軍団をボッコにしてやる」

 何やら意気込むヴィータだった。最近はわりと頻繁にシャマル先生と通信してたから、ゴローニャ
あたりでも作っていたのかもしれない。フーディンだったらご愁傷様。

「あ。そういえば、今日って誰が泊まるの? フェイトちゃんとアルフさんは?」
「リンディさんは帰るみたい。フェイトちゃんと、私らの目付役にクロノくんは泊まりやな」
「あとはユーノがご宿泊。アリサとすずかはやっぱり抜けるそうな」
「……あ! なぁなぁ、おじさん泊まるってゆーとった!?」
「言ってません。でもホテル取ってあるから、そっちに戻るって」

 と言う感じに、今日の今後を話す。徹夜突貫して遊び尽くすか、それとも適当なタイミングで切り
上げてパジャマパーティーに移行するか、が悩ましいところだった。遊ぶならトーナメントとかやる
と楽しそうだし、メンバー沢山だからただ駄弁ってるだけでもいいと思うし。

「バトルロイヤルでトーナメントと聞いて」
「魔導師入場! 全魔導師入場です!!!」

 俺がふと思いついて振ってみたところ、隣のはやてが一瞬で答えてくれました。
 でもってそのまま「筋力ないけど頑張ります! 高町なのはだ――ッッ!!」とかやろうとしたん
だけど、なのはがやめてよーやめてよーと懇願するので中断した。すずかとアリサがまだ帰ってない
のである。

「残念やなー。そのまま全オリ主入場に続く予定やったのに」
「リザーバーで勘弁してください」

 魔境に俺を放り込もうとするはやてだった。なのはは首をかしげてたけど。

「……あ、けーとくん。そろそろお外に行く?」
「おぉぉ。そうだった空中散歩だ。ちょっくら天上行ってくる」
「無茶しやがって……」

 立ち上がる俺たちを見上げて、完璧な敬礼で見送るはやてだった。



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