賑やかな中を、相変わらずハラオウン兄妹と同席のテーブルでまったりと過ごす。
 シグナムはどういうわけか席を外して、何やら慌てたような様子でリンディさんやシャマル先生と
話していた。ということで3人だけのテーブルだが、まぁこれはこれで静かでいいかも。
 近々はぐりんたちが管理局のお仕事(主に暴れてる動物やら犯罪者やらの鎮圧)をお手伝いしに行
くことになっているので、主な内容はその打ち合わせ。物理攻撃を十回やら十五回やらもらっちゃう
と駄目なんじゃなかったか、と心配されたので、全員にやくそういっぱいといのりの指輪を持たせる
ということに落ち着いた。

「やくそう一枚で完全回復とはすごいな……」
「あとあいつら、指輪どこにつけるのか未だにわからんのですよ」
「王冠みたいに頭に乗せたりしてな」
「やばい割と似合うんじゃなかろうか」

 クロノもモンスターについてはいろいろ調べていたらしく、またフェイトも資料を見ていたのか知
っていた。ということなのでしばし、はぐりん談義で盛り上がる。最近の重量はどうだとか、どうや
ら新技のジゴスパーク身に付けたみたいだよとか。あとはあいつら、薄くしたら気円斬になるんじゃ
ないかとか。
 と、そんな風にまったり話をしていると、すずかが近くに寄って来た。
 管理局やら魔法関係は聞かれるとちょっとまずいので、クロノと協力して話を違和感のない程度に
他の方向へ持って行く。そうしてちょっと待っていると、すぐ横にやって来て口を開いた。

「ここ、いいですか?」
「すずかが再び男をマイノリティにしようと画策する。恐るべし腹黒、何という計略」
「普段の君の方が女子よりよほど喧しいじゃないか」
「ごもっともです」

 クロノからの指摘を受け、反論できなくて困惑する。

「そういえば、『ごもっとも』って言うときの漢字ってあれだよね。犬みたいなやつ」
「え……あ、そうなんだよね。パソコンで変換して、初めて知ったんだけど……」
「あれってけっこう間違えるよね。『最も』ってよく書くでしょ」
「そ、それ、もしかしてなのはに書かせるつもり……?」

 フェイトの恐るべき推理能力に驚嘆する。

「どうして分かった」
「すぐわかったぞ」

 クロノのコメントに、そういうものなのかと安心する。

「あはは……ね、ねぇ。フェイトちゃん、聖祥に編入するってホント?」
「あ、うん。試験に通ったら、だけど」
「今の調子だと通るでしょ。覚えるの早いし」
「そうなんだ。フェイトちゃん、一緒のクラスになれるといいねっ」

 穏やかに笑うすずかと、お返しにほほ笑むフェイトだった。
 なんだか二人の話題に入ってしまったため、取り残されてしまった形の俺とクロノ。取りあえずコ
ーヒーに口をつけながら、男女の間って壁があるなぁと二人で話す。

「そう言えば、君はどうなんだ? 同じ学校、興味はないのか」
「中学から考える。毎日毎日なのはいじりすんのも疲れる」
「聞こえてる、ぜんぶ聞こえてるよう!?」

 なのはが向こうの方でじたんじたんした。

「なのはは疲れるなぁ。クロノも面倒見てて大変だったでしょ。すぐ無茶しそうだし」
「……」
「ひ、否定してよクロノくん! クロノくんってばぁ!」

 なのはが向こうの方でばたんばたんした。





「あ、雪! 雪降って来た!」

 シャンパン・ジュースを片手にふらりふらりと歩いていると、どこかの席からそう聞こえてくる。
 近くの席について窓の外を見ると、いつの間にやらひらひらと雪が降っていた。街灯が点きはじめ
た薄暗い街路に、大輪の花のような大粒の雪が、静かにゆっくりと降り積もっていく。

「こたつに入りたいですなぁ」
「温泉行きたくなってきたわ」
「みかん食いてー」

 上から俺、はやて、でもってヴィータ。八神家のちっちゃいの三人はだいたい冬はそんな感じ。

「みかん……」

 リインがひそかにリベンジを誓っていた。

「クリームついてるよ」

 微妙に赤くなって口元をぬぐうリインだった。すましてる振りしてるけど、なんだかちょっとそわ
そわしてた。

「てか、温泉いいな。換金したお金まだ余ってるし、冬の間に皆で行こうか」
「いや一体お前いくら稼いできたんだよ」
「お城の人って、金銭感覚とかおかしそうやしなぁ」

 実際その通りなんですが。

「こっちが遠慮しても金貨倍プッシュしてくるから。あれは困った」
「倍シュプールだ…!」
「倍倍倍倍倍倍倍倍倍倍倍倍プッシュや…!」
「シュプップッシュシュプッシュプー…!」
「……何してるの?」

 皆で倍プ倍プ言っていると、心底怪訝そうな顔をしたなのはが立っていた。そろそろやめよう。

「今気付いたが、次の俺の空中散歩。もしかしてすごい絶景が見れるんじゃなかろうか」
「うん……あ、でもね。私も、その、はじめてなの。雪の空は、飛んだことがないから」
「まぁ風はそんなになさそうだけどな。寒いから凍死して帰ってくんなよ」
「マフラーどこにしまったっけ。玄関近くで見た覚えがあるんだが」

 防寒グッズどこだっけ、とはやてと二人で話し合う。しかしまぁ家に帰ってから探せばいいか、と
いうことに落ち着いた。二回目の空中散歩も三次会の途中ということに。

「とりあえず一年お疲れ様でした」
「激動の一年だったよ……」
「今年がこんな感じになるとは夢にも思ってなかったわぁ」

 しみじみと言うなのはとはやてだった。本当にいろいろあったからなぁ。

「なのはは今日泊まり? 夜まで皆で遊んでるつもりだけど」
「え……そうだけど。い、いけないんだよっ。夜はちゃんと寝ないと……」
「眠れない夜と申したか」
「キミのせいだよー」
「自分のせいだよっ!」

 コーヒー飲みながらゆっくりしてました。



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