こたつでごろごろしながら、ヴィータを相手に雑談する。

「バリアジャケットってあるよね」
「おー。それが?」
「あれってパピヨンスーツにできるんだろうか」
「やろうと思えばできるけどやめれ」

 「愛を込めて!」とか言ってる自分を想像したのだろうか、ヴィータはかなり嫌そうな顔をした。

「第3期の悪の親玉、スカトリエロッティの手下たちがいるんだが、そいつらに着せようと思って」
「その親玉にやらせろよ。写真撮って全次元世界にばらまいてやる」
「万が一それがウケて、愛され怪人になったらどうなさる」
「平面になるまでぶったたく」

 さる事情、主に俺からの情報により、今現在ヴォルケンリッターから異様に毛嫌いされているスカ
山博士だった。俺はあの人割と好きなんだけどなぁ。

「なーなーなーなー」

 うつ伏せになってごろりごろりとしていると、背中に何か乗ってきた。ほっぺたをぺしぺしと叩か
れたので見てみると、またがっていたのははやてだった。
 寝てる人の上に乗ったり枕にしたりするのはやめれと言っているのだが、あんまりやめようとしな
いので最近は諦めつつある。

「何ですか」
「なー、酢豚。酢豚食べたい」
「あ、いいな。久しぶりで」

 夕飯のリクエストだった。そういえば今日は俺がすることにしたんだ、と思い出す。じゃんけんし
て決めたんだった。

「何で酢豚」
「や、何か、すっぱいのが食べたくなったん」
「素豚なら冷蔵庫にあるじゃない」
「わたしを食中毒で死なすつもりか」

 生肉は直接食べないように。危ないから加熱調理しましょう。

「すーぶーたぁー!」

 はやてがじたじたした。

「はーやーくーつくれー!」

 ヴィータがばたばたした。

「……」

 リインが期待の眼差しで見つめてくる。

「あのぅ……」

 エプロンつけたシャマル先生がお手伝いしたそうにはりきっていた。





「最近いろんな方面で大人気ですねオリーシュ」
「大人気……?」
「便利と言った方がいい気がするのだが」
「一家に一台の時代が来たようです」
「日本の家庭が崩壊するぞ。主に人格面から」

 パソコンいじりながらザフィーラ・シグナム組とぽつぽつ話す。
 はやてとヴィータは風呂。シャマル先生はリインにお箸の使い方をレクチャー中。
 リインは和食も気に入ってるみたいなので、本人にとってはこれが意外と必要だったりするのであ
る。シャマル先生なんだか楽しそう。

「私の将棋の相手も居なくて困っていたところだしな」
「だから今こうやってネット対戦ページ探してる所でしょうが」
「便利な世の中になったものだ」
「魔法使いどもが何を言うか。舞空術だの瞬間移動だの使ってからに」

 魔法普及したら楽チンだろうに。転送とか飛行魔法とか地球で商品化したらノーベル賞、というか
お金がっぽがっぽうっははーじゃないのか。

「あれは意外と事故があるんだぞ?」
「え。そうなんか」
「転送も、座標を間違えると大惨事になるからな。特に、転送先に障害物があったりした場合……」

 リアルで「かべのなかにいる」状態になったところを想像したが、あまりにもグロすぎてさすがの
俺もドン引きする。

「……」
「……」
「……」
「わっ、わたし、しませんよっ!? 絶対絶対ぜったいしませんようっ!?」

 三人して疑いの視線を投げかけてみたが、シャマル先生は必死に否定した。心なし半泣きに見えて
きたので、少しだけで勘弁してあげることにする。

「おお、あった。ここなら一日じゅう対戦できるよ」

 そのうち探していたサイトが見つかったので、シグナムに操作をバトンタッチしてあげる。

「そのページの下の方までスクロールすると、ダウンロードのリンク張ってあるよ」
「……?」
「あ、ごめん。スクロールはそこ。下向きの矢印の書いてある……そうそう、そのボタン」
「そっ、そうか。すまない」

 シグナムがお礼を言ってくれるのも珍しく、少し新鮮な感じがしたのは内緒。

「おお、入れた。よかったでござる」
「これでいいのか? もう対戦できるのか」
「うん。相手がこれで、上手い下手がここで見れる……ってか、魔法はこういうのできないの?」
「我々の知る限りはな。今のミッドチルダにはあるかもしれないが」

 なるほどなるほど、と思いながら画面を眺める。シグナムは対戦相手選択中のようで、アクセス者
のリストを上に下に動かしていた。
 と思ったら、こんなことを言う。

「ところで、その……これは、全国の相手と対戦できるのか」
「そうだけど」
「だ、大丈夫なのか? ウイルスというのがあるそうじゃないか」
「んあ。大手サイトだし、ノートン先生が割と厳しいから。変なことしない限り大丈夫」 
「ノートン?」

 シグナムは首を傾げた。

「こんな感じに、パソコンの中を掃除したりチェックしたりしてる」

 色鉛筆を手に取って、敵キャラ追いかけたり吸ったり空飛んだりしてるカービィの絵を描いてあげ
た。

「……」

 シグナムは気に入ったのか、ちょっとうれしそうにその絵を眺めていた。

『時間切れです。あなたの負けです』

 その後もちらちらと絵を見ていたためか、初対戦が敗北に終わってしまい、何故か俺にくどくどと
恨み言を言うシグナムだった。理不尽だと思います。



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