「はぁ……アニメなぁ」
翠屋で手伝いしていた子がアニメの世界の住人だってことを、はやてに正直に話してみた。
「しかもあの子主人公で、魔法使うんですよ」
「魔法! 魔法少女!?」
「うん。ピンクのビームみたいのをこう、どばばーっと」
「魔法……少女……?」
はやては戸惑っているようだった。
「どうも信憑性薄いなぁ……」
「あ、何かはやても出てたよ。白いのをずばーんと撃ってた気がする」
「……マジやの?」
マジです。
「覚えてるのはそのくらいなんですけどね。興味持って一度観たきりなんで」
「……とりあえずハッピーエンドかバッドかだけ聞いとく」
「『ちょっと寂しいけど、ハッピーエンド』だったような。雪が降ってた気もする」
「あてにならんなぁ」
ですよね。
とか言ってるはやて。内心半信半疑もいいところのようで、率直に言えば俄には信じられないよ
うだった。
当然だ。「あなたはアニメの住人です」と言われて鵜呑みにするアホはそう居ない。
しかしそれをまるっきり「馬鹿げた冗談」で切って捨てないのは、俺を信用してくれているから
なのかどうなのか。
「で、その……なのはちゃん? ってどんな子なの?」
とか聞いてくる。そうすると、うろ覚えながら頑張って答えたくなるのもやむを得ない話。
「それがなぁ。三部作だと、確か……」
確か。
無印 …これが私の全力全壊なの!
↓
A’s…私、悪魔なの ←今ここ
↓
StS…ぶるあああああああ!!
だった気がする。たぶん。
何か友達が言ってたし!
目がギュピーンって光ってる画像も見たことあるぞ!
「将来が心配な子だね」
「どうしてそないなことになるんや……」
何でそんな悲惨な未来を。
お母さんはあんなに優しい、いいお母さんなのに。
「それで、ですね。はやてには味方ができるんですよ」
「ほほう。どないなの?」
「えっと、守護の騎士だかヴォル何たらだかで。面子は」
おっぱい剣士、ロリハンマー、ドジっ子僧侶。
あと犬が一匹。
「カオスすぐる」
「犬って何やの。騎士で犬って」
しかも僧侶でドジっ子は笑えないぞ。
ザオリクと間違えてザラキかけられたらどうすんだ! 大丈夫なのか?
「じゅもんが ちがいます」
「かんちがい しています」
とか話しながら、夕飯を一緒にパクつくのだった。
ちなみに今日は皿うどん。二人してぱりぱりと麺を噛む。あんかけうめぇ。
「まーいいや。詳しく覚えてる訳でもなし。まったりまったり行きましょうか」
「わー。てきとーやな」
「人間、死にさえしなけりゃ何とかなるものです。一度死んでみたら実感できると思うけど」
「そういえば、死因って何やったの? ありがちな交通事故とか?」
「や。何かの手違いで、隕石が間違ったとこに落ちたらしい。直撃して、こう」
頭がパーン☆
「聞いた私が悪かったから止めて。食事中にする話とちゃう」
「ごめん」
気分が悪そうに顔をしかめるはやてだった。
「……はっ! なーなー、ってことはもしかして、もしかしてなぁ!」
「何でしょう」
「その守護騎士さんたちって、うちに住むんとちゃう!?」
「そうですよ。かなり親しくしてたような……おぉ」
今気付いた。
家族増えるじゃん。
「このまま行けばね」
「なら! なら! 明日おっきな鍋買いに行こ! フライパンも新しいお皿も!」
「賑やかになりそうだ。家族が増えるっていいね」
「やろ!」
とりあえず先のことは先のことと割りきって、翌日の計画を立てるのだった。
展開とか結末とかは思い出せないけど、その通りになるとは限らないし。
「しかもわんこ居るし! うち夢やったんや、賑やかな家庭にわんこが一匹!」
はやても楽しそうだし。まあいいやね。