= 拍手お礼不定期連載 =

キャロと愉快な仲間たち 5



ふくろの中から、なんとザッフィーが現れた。
聞いてみると実は、出かける前(つまり一週間くらい前)から潜
り込んでいたのだとか。わんこが一匹丸々入ってたとかどう考え
ても無理だと言いたい。むしろ叫びたい。シンジラレナーイ!

「念のための護衛、兼連絡役というわけだ」
「連絡役ておま」

たしかにこのふくろはどんなに荷物入れても持ち運べるけど、そ
れにしても補正のかかり方が恐ろしいどころの話じゃない。これ
はもうロストロギア認定してもいいレベルなんじゃあないか。

「とりあえず焼き魚を食えばいいんじゃあないか……」
「馳走になるぞ。あとキャロは起こさなくていいのか?」
「……フリードの尻尾美味しいです」
「だっ、ダメっ! 食べちゃだめぇっ!」

耳元で言うと、半べそかきながら起きだした。器用というかなん
というか、やはりリアクションの面白い子供である。

「きゅる!」
「フリードっ! ……あ、あれ。食べられてない……」

訂正。単に寝ぼけてただけみたい。
なので取りあえず覚醒を待って、目が覚めたところでザッフィー
の自己紹介。

「ザフィーラだ。よろしく頼む」
「あっ……は、はい。キャロです、こっちがフリードリヒ……」

キャロが珍獣を見る目でザッフィーを見る。実際青毛のわんこな
んて珍しいどころの話じゃないし、登場シーンが登場シーンだっ
たので仕方なし。

「あの、さっきはどうして、ふくろの中から……?」
「何を隠そう、ザッフィーは日の光に弱いという隠し設定がある
 のだ。つまり吸血鬼ならぬ吸血犬、略してキケン」
「誰が危険だ」

これ以上やるとキャロが混乱するので、実は本拠地からついてき
た護衛さんだと教えてあげる。

「その割には守ってくれないような。恐竜の時とか」
「あれは懐いて追いかけてきているだけだろう。いつものことだ」
「いつものことって……」

内心ドン引きのキャロだった。動物に好かれるのはいいことだけ
ど、ここまで来るとちょっとご遠慮願いたい。

「あ。ザッフィー、背中にキャロ乗っけてって。運動不足でしょ」
「いいぞ。出発はもう少し先か?」
「え……いっ、いいんですか!?」

キャロには願ってもない言葉だった。野山暮らしが長いため体力
はそこそこある(運動神経はともかく)キャロ、このまま山道を
歩くのには問題ない。それ以上に、目の前の前の青い毛並みが魅
力的だったのである。簡単に言ってしまうとつまり、ふかふかで
ものすごく気持よさそうなのだ。

「ああ。ちょうど退屈をしていたところだしな」
「ていうか、ふくろの中ってどうなってるの?」
「だだっ広い空間が広がっているだけだ。寝心地は悪くない」

本当にこのふくろって何なんだろう、と思う少年少女であった。

「ねぇねぇザッフィー、タンデムしていい?」
「無茶振りにもほどがあるぞ」

そんな訳で、まものつかい一行にザフィーラが加わったのでした。



(続く)



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