= 拍手お礼不定期連載 =

キャロと愉快な仲間たち 10



翌朝。宿で出してくれた朝食を終えてからキャロにはやての話を
つらつらとしてあげていると、ふと頭にひらめくものがあった。

「はやてへのお土産なんだけど」
「思いついたか?」

ちょうどいいモデルが目の前にいる。と言って手招きをすると、
気が付いたフリードリヒがきゅるきゅる鳴きながら飛んできた。
もうすっかり俺には懐いていて、肩に乗ったり頭にとまったりは
しょっちゅうである。

「木彫りのドラゴンにしようと今思ったんですが」
「ドラゴンを熊扱いか」

ぱたぱた飛んでいるフリードを見ながら、しかし悪くはないので
はないか。とザフィーラは言う。

「ふくろに彫刻刀やらノミやらノコギリやら入れててよかった」
「自作するんですか?」
「最近は縫い物から銀細工までやってのけるからなこいつは」
「粗めの造りになると思うけど、フリードがモデルなら何とか」

普通のドラゴンは表面に鱗があるためやりづらいというか時間が
かかるけど、フリードリヒならそうでもないので大丈夫そうだ。
身体の構造も割と分かりやすいし、早速取りかかることにする。

「フェイトが来るまでまだ日もあるし。キャロも何か作る?」

ごそりごそりとふくろの中身をいじりながら、じーっと見つめる
キャロに尋ねてみる。何でも入るうえどういう訳か軽くなってる
この袋、あまりにも便利なのでいろいろ突っ込んであるのだ。

「……ひょっとしてその中、まだまだ入ってるんですか」
「何でも入ってる。裁縫するならミシンとかあるよ」
「この袋は本当に、一体どういう構造をしているんだ?」

少なくともそれは入ってたヤツに許される台詞じゃない。

「先に他の皆に、フリードのぬいぐるみでも縫ってやるか」
「高町あたりは喜びそうだな」
「あ。マトリョーシカの最後がジェイソンっていう悪戯やって、
 今少し警戒されてんだ。渡すのはほとぼり冷めてからにしよ」
「……魔王魔王って言う割には、積極的に遊んでません?」

実は魔王って大したことないのかな、キャロは思った。それとも
本当は、この人の方がすごかったりするんだろうか。

「ちょうどいい布があった。型紙できた」
「頭が大きめだな」
「その方がかわいいっしょ」
「えっ、え、え!? いつの間に切ったんですか!?」

訳の分からないスピードにびっくりするキャロだった。

「あのー……ぬいぐるみって、どうやって作るんですか?」
「布に綿を挟んで周りを縫う。猫の型紙ならあるけど、やる?」
「あ……はい! 布って、この厚めのを使うんですねっ」
「もしくはそこのザフィーラから毛皮を」
「やれるものならやってみろ」

見物するザフィーラの前でちくちく縫い物をする俺たちだった。



(続く)

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